投げれて楽しいアンナさん
分散した敵を迎撃するため、アーカムと別行動をとることになったアンナ。
頭にちいさな魔力獣を乗せている。これでアーカムとの連絡が可能だ。
「わふ」
「ん。そっちはやったんだ。お疲れ様」
「わふ」
「こっちも来たよ」
ボウガンで武装した兵士たちに出会った。
すかさず陣形を組む兵士たち。
全部で4人、さらに後ろから4人。
どんどん集まってくる。
兵士たちはアンナに照準を合わせた。
トリガーに指を掛ける。
あとは引くだけ。さあ力を込める。
それで決まる。そう思ったその時だ。
何かが高速で飛来し、ボウガンを破壊し、兵士の肩に突き刺さった。
それは一瞬のできごとで、兵士4人の身に同時に起こったことでもあった。
「「「「……ぇ?」」」」
「都市の兵士なら、多少手心を加えてもいいよ。そういう風にわんわんも言ってるって、アーカムが言ってるしね」
「あ、あいつ、ナイフを投げて……!」
兵士4人を同時に襲った飛来物。
それはアンナの投擲したナイフであった。
狩人アンナ・エースカロリ。狩人流を修める彼女は、あらゆる地形、あらゆる状況に対応できる。同時にあらゆる武装の訓練も積んでいる。守備範囲の広さと練度を比較したのなら、かの天才アーカム・アルドレアと比べても遥かに造詣が深く、武の達人と言える領域にいる。
ナイフはアンナのお気に入りのひとつだ。
ちなみにお気に入りランキングの1位はもちろん剣で、2位が槍。3位がナイフだ。
ゆえに、カイロに装備調達してもらう時、遠隔武器として、投げナイフを12本ばかり用意してもらったのだ。
アンナは通路の向こうから走ってくる兵士たちへナイフを投擲する。
その距離、実に20m。クリスト・カトレア兵士の使うボウガンには命中精度に難があり有効射程は15mしかない。どういう訳か、この戦場では、ナイフがボウガンの射程を上回っているらしい。不思議なこともあることだ。
兵士たちは成すすべなく肩を穿たれ、苦痛に沈んだ。
「まあ、寝てなよ。そうすれば斬らずに済むからさ」
アンナは倒れた兵士たちからナイフを一本ずつ抜いては、鎧圧を柄から流して、血糊をぬぐい落とすにして刃を綺麗にした。抵抗する者には容赦なく靴底で一撃を加え、意識と前歯を刈り取った。アンナに容赦はない。
腰のベルトに回収した投げナイフをしまい……ふと、飛来してきたソレを首を振って避けた。
バゴンっと凄い音を鳴らして、背後の壁にソレは激突する。
ふりかえり見ると、壁に深くめり込んだそれが、人の生首であるとわかった。
兵士の生首だ。念力で覆われて、重さを増幅させられ、実に50Kgの質量弾として砲撃のごとく撃ちだされたらしい。
アンナは悪趣味な攻撃をしてきた者へ視線を向ける。
通路の真ん中に白衣を着た老人が、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて仁王立ちしているではないか。奴だ。広場で対峙したあの強力無比な超能力者だ。
「なんだい気が付いてたのかね、伊介天成。よく避けれたね」
「エロじじい、やっぱりこっち来たんだ」
アンナはふんすっと鼻を鳴らし、抜剣する。
ひんやりした輝きを纏う刃が、戦を求めて淡い光源を反射してきらめいた。
「あんたを斬り伏せる」
「はあ……美少女に性転換し、剣をつかってファンタジーごっことは……天才・伊介天成になにがあったのか大変に興味はあるが……まあ、なに、死なないのだから封印して100年後くらいに訊きなおせばいい。我々は神なのだから。無限の時間の統治者なのだから、君も頭を冷やしてくれると嬉しいよ。……それじゃあ、封印するよ。予定が詰まっているんだよ」
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