22:抵抗(王城side)
時はレイル達がキュクロプスと戦っている頃…。
王城の門の前に黒ずくめの男がゆっくりと歩きながら近づいていた。
「貴様、な…」
門番をしていた兵士が誰何を問う前に首を落とされる、行く手を阻む鋼造りの門に線が走ると一部が斬り落とされて人一人通れる程のスペースが生まれた。
「さぁて…ご対面と洒落込むか」
悠々と門を潜り抜けた男、制裁の奇跡は王城を見上げた。
―――――
「状況はどうなってます?」
「キュクロプスが現れた区画の避難は続行しています、それと物見に周囲を確認させましたが他の魔物は見当たらないとの事です」
「そうですか」
部下の報告を受けてエリファスは顎に手を添える、現在はウェルク王と宰相を伴って隠し通路がある謁見の間へと避難していた。
「他に敵影がないという事はやはり今回の件は陽動の可能性が高いか?しかし…」
思考していると物音が聞こえてきた、それは争う様な音であり尋常じゃない速度で近づいていた。
「へ、陛下!お逃げ下さ…!」
エリファスが騎士剣を抜くと同時に謁見の間のドアが開け放たれて袈裟斬りに斬られた兵士が転がって入ってきた。
その後を追う様にして黒ずくめの仮面の剣士が悠然とした歩調で姿を現した。
「…陛下への謁見は事前に申請が必要なんですがねぇ」
「はっ、賊が法を守るかよ」
エリファスの軽口を流した制裁は魔力を剣に流し込むと斬撃をウェルク王に向けて放つ、エリファスは即座に割り込んで斬撃を受け止めた。
「くっ!?」
斬撃の予想外の重さに一瞬押されるも柄を握る手に力を込めて弾き返す、だがその一瞬の間に制裁は距離を詰め…。
「寝てろや」
放たれた蹴りが脇腹に叩き込まれてエリファスは吹き飛び、壁に叩きつけられて崩れた壁と共に土煙の中に消える。
「やめときな、使ったらてめえ等が術使う前に斬る」
「「…っ!」」
魔術を発動させようとしていたグリモア宰相と兵士に一声と殺気を放って黙らせる、一瞬で場を制圧した制裁はウェルク王に向き直った。
「はっ、随分とジジイになったじゃねえか王様よぉ?」
「…お主は」
「昔話する間柄でもねぇ、死んで…っ!?」
制裁が後ろに跳ぶと同時に柱の様な小型の竜巻が昇る、竜巻は天井を貫いて昇っていき避けていなければ制裁を貫いていた事は明白だった。
「あらら、避けられちゃいましたか…」
崩れた瓦礫の中から出てきたエリファスがぼやきながら立ち上がる、砕けた水晶の飾りを捨てながら騎士剣を拾い上げた。
「身代わりの魔導具に今の魔術…てめえ剣は
「剣より魔術が得意なだけですよ」
魔力を練り上げながらエリファスと制裁が対峙する、顔に笑みを貼りつけてはいるが背中には冷や汗が流れていた。
(気付いてくれると良いんですがね…)
自分では時間は稼げても逃げる隙を作れるかは分からない故に…。
―――――
「“
エリファスの詠唱と共に周囲に幾つもの礫が浮かび上がると制裁に向けて射出される。
「風と土の二属性か!」
制裁は剣を縦横無尽に振るって石礫を叩き落とすとエリファスに迫る、その前に土壁が現れて視界を防いだ。
土壁を斬り裂くとエリファスの姿はなく、真横に飛んで手を翳している姿が映った。
「“
再び放たれた石礫の雨が制裁に襲い掛かる、礫はその場に踏ん張った制裁の服を幾箇所か裂きはしたがその下の肉体には傷ひとつなかった。
「効かねぇ…なぁ!」
黒い魔力を纏った剣が振り下ろされる、エリファスは騎士剣で迎え打つがぶつかり合った瞬間に半ばから断たれてしまった。
エリファスは自らに風の魔術を発動して自身を吹き飛ばして距離を取る、制裁がそれを追おうと踏み込んだ瞬間…。
床が泥となり制裁の足が沈んだ。
「ちっ!?」
「“
足を取られた制裁に向けて三度目の石礫が放たれる、制裁は再び受け止めようと身構えると同時に石礫が襲い掛かり…。
「ぐっ!?」
腹に不可視の風の砲弾が叩きつけられた制裁は反対側へと吹き飛ばされる。
「言いそびれましたが私は風、土、水の三属性持ちでしてね」
エリファスは魔力を練り上げて魔術を構築していく、詠唱を破棄して魔力のほとんどを注ぎ込んでそれを発動した。
「“
放たれたのは水風土の複合魔術、膨大な水と土の質量が合わさった激流は風によって指向性を与えられて制裁へと襲い掛かって制裁を呑み込もうとした瞬間…。
「魔剣術“
腕が消えたと思う程の速度で剣が振るわれて生み出された斬撃の壁が激流を迎え打った。
泥の激流と斬撃の壁がぶつかり合い泥が周囲に飛び散る、やがて激流が止むと穴が空いた様に周囲に泥のない床を蹴った制裁がエリファスに迫って拳を溝尾に叩き込むと全身に衝撃が走る。
「がふっ!?」
「やるじゃねぇか、俺に貯めてた魔力を使わせるなんてよ」
崩れ落ちたエリファスに制裁は剣を振り上げる、もはやエリファスに打つ手はなかった。
「じゃあな」
剣が振り下ろされる寸前…。
天井を突き破って人影が落ちてくる。
今まさに振り下ろそうとした剣と落ちてきた人影が振るった剣がぶつかり合い火花が散る、宙を蹴って身を翻した人影は蹴りを制裁の仮面に叩き込んで吹き飛ばした。
「…ぎりぎりだったか」
床に着地したレイルは吹き飛んだ制裁を見据えて剣を構えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます