12:レイル対ゾルガ
「ふっ!」
『
唸りを上げて振るわれたそれをゾルガは
「むっ!?」
迫る一閃を後退して避けるゾルガにレイルは『
その瞬間、ゾルガの動きが加速して後退し、『
(さっきの風の魔術か!)
『
(間に合え!)
『
(剣の速度が上がって!?)
先程よりも鋭い剣撃に防御が間に合わないと判断して『
空中で再び刃がぶつかり合う、宙を蹴って跳ぶレイルと風を纏って飛ぶゾルガの残像すら残らぬ速さで空中に戦場を移して飛び交い、刃が交わる度に火花が飛び散る。
やがてどちらからともなく地面に降りるとレイルは再びゾルガに突進する。
(貴殿の速さ。見切ったぞ!)
ゾルガは突進してくるレイルを迎撃せんと長剣を振るう、タイミングを合わせた完璧な一撃だった。
だがレイルが振るわれた長剣の間合いに入る直前に剣を地面に突き立てるとそれを軸にして側転する様に飛び上がる、その動作によってゾルガの一撃は空を切った。
「何っ!?」
長剣を振るった直後のゾルガに向けて脚を振り下ろす、ゾルガの頭を狙った蹴りは一瞬早く間に差し込まれた籠手が受け止めるが。
「『
蹴りを受け止めた箇所に放出された魔力が籠手ごとゾルガを吹き飛ばす、靴底で地面を削りながら吹き飛ばされるゾルガは右手を開いて閉じてを繰り返すと再び長剣を構えた。
(強い…)
レイルは思わず心の中で称賛を送る、レイルが戦ってきた魔物、セネクやバスチールも言ってしまえば能力に頼った力任せの戦い方をする相手だった。
だがゾルガは違う、国を守る為に戦ってきた経験と純粋に研き上げられた
(これが将軍の剣術か…)
経験と研鑽の果てに得た強さ故に隙のない相手にぞくりとレイルは背筋を震わせた…。
―――――
(これ程とは…)
痺れが残る右腕を見ながらゾルガは冷や汗をかく、レイルの強さは知っていたつもりだったがそれはとんだ思い違いだと認識させられた。
技術ではゾルガの方が上だろう、経験は比べるべくもない、だと言うのにレイルはゾルガと対等に渡り合っている。
(剣を踏み台の様に扱うなど並の人どころか熟練の剣士でもやるまい…)
それに先程の蹴りもそうだ、剣士にしてはレイルの格闘術はかなりのものだとゾルガは認識する。
剣術と格闘術の両方を修める者はいるしゾルガや兵士達も武器がなくなった際の非常手段として格闘術を修めている。
だがレイルのそれは似て非なるものだ、剣術と格闘術を別れて修めてるのではなく一つの技術として成り立った動きなのだ。
だからこそあの一見無茶苦茶な動きが可能となっている、獣の様に荒々しいがひどく合理的な戦い方とも言えるのだ。
(まさしく戦闘術とでも言うべきか…)
目の前の自分の半分も生きてない青年にゾルガは心から畏怖を覚えた…。
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