5:レイル対シャルロッテ
ギルドの一角にある訓練場、その中央に二人が向き合って立っており壁際には三人の観客がいた。
向き合っている二人、レイルとシャルはお互いの武器を抜いて相対する。
「とりあえず勝負のルールはなんでもありにしようか?こういうのは本気でやんなきゃ分からないしね」
「あぁ、了解した」
「…準備は良い?」
セラの確認に二人で頷く、それを見てセラは告げる。
「…では、はじめ」
開始の合図が告げられた瞬間、シャルの姿が消える。
勘の赴くままに剣を右側に構えると突き出された
するとすぐさまシャルはバックステップで下がり左手に針を手にしてこちらに投げてくる、剣で弾くとこちらに向けて刺突の態勢を取るシャルが見えた。
「…らぁっ!!」
足に魔力を集中させて思いきり踏み込む、ズンっという音と共に踏み込んだ地面がクモの巣状にひび割れて地面を揺らす。
振動はシャルの足元まで伝わり、踏み込むタイミングを崩されたシャルは再び距離を取ると互いの視線が交差する。
「…
「私も地団駄で地面を割る人は初めてねぇ」
そしてシャルの姿がレイルの視界から再び消えた…。
―――――
「ははは、マジかよありゃ」
訓練場の壁際に立つレイガスが呆れ半分、感嘆半分といった声で呟く、その目線の先には縦横無尽に動き回りながら
黄金級の暗殺者の攻撃を白銀級とはいえ剣士が防いでるのも大したものだがレイガスの関心はそこにはない。
「…もはや恐ろしさすら感じるな、あそこまで緻密な魔力操作を為せる者など我が軍…いや国にいるかどうか…」
レイガスの隣にいるゾルガが唸る、それほどまでにレイルの魔力操作は逸脱している。
魔力操作は使えば使うほど上達する、それは身体強化にしか使わない戦士系統より魔術士の方がそれは顕著だ。
だがレイルの魔力操作は次元が違う、例えるなら魔力を水とすると並の冒険者が手で水を掬い、熟練の魔術士がひびの入ったコップとするならレイルはノズルの付いたホースくらいの差があるだろう。
「半信半疑だったがありゃ本物だな、一体どんな経験すりゃあんなの身につけんだか」
「シャルロッテ・ヴィーダルとローグ・カイゼルの召集を命じられていたが思わぬ者が見つかったな」
ゾルガの見解にレイガスは同意を示しながら続ける。
「だがまぁ、それだけじゃシャルには…」
「勝つ」
レイガスの言葉を遮ってセラが言い切る、思わぬ発言にゾルガまでセラを見る。
「…シャルは強い、だけどレイルの強さは魔力操作だけじゃない」
どことなく熱の籠った声でセラは紡ぐ。
「持ちうる力を万全に活かしきる思考と精神そのもの、それが彼の強さの本質」
―――――
(思ってた以上ね)
シャルは攻撃を続けながら思案する、自分が想定していた以上にレイルは強かった。
魔力操作もさることながら元々の体術や剣術が凄まじく研ぎ澄まされた刃の様に洗練されている。
(しかも少しずつ私の速度に追いついてきてる)
最初は防戦一方だったが少しずつシャルの攻撃をいなしながら鋭い目線をこちらに向けてくる、好機を見出だした瞬間攻撃を仕掛けてくるだろう。
(ならその瞬間を狙うべきよね)
身体強化で一気にトップスピードまで掛け上がり、手に持てる限りの暗器をレイルに向けて投擲する。
レイルはそれを横に跳びながら身に迫ったもののみ剣で弾いていくがその後ろに
その瞬間、レイルは『
(ここ!)
レイルが上段に構えた瞬間、シャルは動きを
(とった!)
完全に攻撃の隙を取った一撃だった、仕込み刃は防具の隙間を通ってレイルの脇腹に迫り…。
甲高い音と共に体を貫く事なく止められる。
「なっ!?」
まるで岩に突き立てた様な痺れが手に走り動きを止めてしまう、急いで距離を取ろうとした瞬間…。
「竜剣術『
振り下ろされた剣から魔力の塊が放たれ、シャルを打ち据え吹き飛ばした。
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