閑話:王達の会議
ウェルク王国の中心にある王都ロードウェルク
その王城の玉座の間にてそれぞれ国のトップが集められていた。
将軍ゾルガ・ヴォルフ
宰相グリモア・アークス
教皇ライブス・ハインリッヒ
そして国王フリック・フォン・ウェルク
この国を動かす者達が集まっていた。
「それでは陛下、今回の召集はどの様な意図が?」
ゾルガが口火を切って問いかけ、それにフリック王はうなずいて答える。
「フォルトナールで起きた
「知っていますとも、1000もの大規模なものでしたが冒険者達と街の兵達の尽力によって鎮圧したと伺っております」
ライブスが穏やかな声で答えると王は眉間に皺を寄せる、やがて意を決した様に口にした。
「集めた情報によると“奇跡”を名乗る者がその場にいたらしい」
「「「っ!?」」」
その言葉に将軍や宰相、穏やかな雰囲気をした教皇でさえ空気が張り詰めたものに変わった。
「…間違いではないのですか?冒険者の中には徳の高い聖人や神官がいます、奇跡を祈祷したのが歪曲して伝わったのでは?」
「冒険者の一人がその者に接触され、そう名乗ったそうだ、しかも人を魔物に変えて
「一人だけですか?パニックになって誤った記憶を話してしまったという事は?」
「その者は白銀級冒険者だ、ギルドマスターに問い合わせたが証言の際にも混乱を起こしていたりしていなかった…」
「奴等の残党が?“バニス教団”が現れたというのですか?奴等は40年前の“人魔大戦”で壊滅した筈なのに!?」
人魔大戦、それはかつてこの世界で起きた魔王による災害だ、世界の主要国で
魔王は当時最強と謳われた5人の英雄によって倒され世界は救われた、というのが真実を隠す為に人々に伝わる話だ。
40年前の戦争の真実、それはバニス教団という異端なる宗派が人為的に魔王を生み出して起こった、つまり人災であるという事だ。
教団の中でも重要な立場にいた者は自らを聖人でも聖者でもなく“奇跡”と名乗り、魔術とは違う特異な能力を有していた。
彼等によってもたらされた被害は数知れず、そのあまりの犠牲とおぞましさに各国は協力し、バニス教団という存在を世界から抹消した
筈だった…。
「…事の次第は分かったであろう、まだ詳細は掴めんが“奇跡”を名乗る者が現れた以上、万が一がある」
ウェルク王はそう言って3人に命じる。
「グリモア、我が国にいる黄金級に召集を掛けろ、白銀級は上位の者のみに絞れ。
まだ多くに知られたくはない」
「ただちに」
「ゾルガ、お前はフォルトナールの復興を軍の一部を派遣して進めよ、それと“奇跡”と接触した冒険者からより詳細を、その後の判断は一任する」
「御意」
「ライブス教皇、貴殿には他国にこの事を秘密裏に伝えてもらいたい、貴殿ならば勘づかれる可能性を低く出来るだろう」
「ええ、信頼できる者をすぐに遣わせましょう」
ウェルク王の言葉に従って3人は席を立つ、その後ろ姿を見送りながらウェルク王は深い息をついて玉座に背を預ける。
思い起こすのは自分がまだ無鉄砲な少年の時代、かつての戦の惨状と人々の死、そして友との…。
「…二度とあの戦争は起こさせん、あの過ちを繰り返させる事だけはならんのだ…」
確かな決意を固めて王は呟く。
少しずつ世界を動かす歯車が動き出していた…。
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