5:天竜の封窟


「な?言った通り美少女だったろ?」


ザジがしてやったりとした顔をしながら聞いてくる、綺麗だと思ったのは事実なので頷いておく。


「確かに聞いた以上だな」


「はっは、だが近付かねえ方が良いぜ、自分の種が大事だったらな」


笑っているとザジは仲間に呼ばれてまたなと言いながら去っていった。


自分も明日からのダンジョン探索に向けて準備をする為にギルドを出ようとする。


その直前、視線を感じて振り返る。


だがそれはすぐさま消えてしまい、冒険者達はこちらを見る事なく思い思いに行動している。


気が立っているのだろうか…。


早く準備を終えて休むかと思考を巡らせてギルドを後にした。





―――――


それはレイルがギルドを出た後の事


「魔力がないんじゃなく、魔力が一切の無駄なく抑えられてる…」


それはギルドの一角で先程出ていったレイルを見てぽつりと呟いた。


「操作なんて表現じゃ足らない…魔力の制御?掌握とでも言うべき?今のが見間違いじゃないなら…」


アイスブルーの瞳を輝かせて彼女は呟く。


「私よりも強い…」






―――――


フォルトナールに着いた翌日、レイルはダンジョンの入り口に立っていた。


ダンジョン『天竜てんりゅう封窟ほうくつ


かつて国を雷雲で覆い尽くした竜が当時の白金級冒険者によってこの地に封印されたが溢れる竜の魔力がその地をダンジョンに変えてしまい、今も最奥で縛られ続けているらしい。


らしいというのはそもそもこの話が少なくとも500年以上も前の話だという事とそもそも最奥から帰ってきた者が誰もいない事から竜を見たという者が1人もいないのが原因だろう。


それに出てくる魔物もこの辺りでは強いが一部を除いて素材はまずまずの値段でしか売れないのもあって人気があまりない、だからこそレイルには都合が良かったが...。


(それに話が本当なら上位の竜と戦えるかも知れない)


僅かな高揚感に胸を高鳴らせてダンジョンへと入っていった。






―――――


ダンジョンの中は思ったより広い、大の男が五人横に並ぶ事ができるだろう。


暗いが眼に魔力を集中させる事で視界を問題なく確保して奥へと進んでいると前からのそりと魔物が現れる。


白骨蜥蜴スカルリザードか」


それは全身を白い鱗と甲殻に包まれた大蜥蜴だった、硬い上に素材となる鱗や殻は重いので軽量化の魔術が施されたアイテムポーチがないと持ち帰るのが面倒な魔物だ。


牙を剥き出しにしてスカルリザードが突進してくる、右に避けて前脚を斬りつけると鱗は斬れたが脚を断つまでにはいかなかった。


「硬いな...」


振り回される尻尾を避けて剣に魔力を込める、刃の部分が集められた魔力によって黒く染まっていく。


イメージするのはドラゴンを倒したあの斬撃、魔力を限界まで注ぎ、凝縮させて跳び掛かってくるスカルリザードに合わせて剣を叩き込む。


我流剣術『崩牙ほうが


スカルリザードは頭から尾まで身を包む甲殻を砕かれながら両断され、勢いを失って地面にどちゃりと落ちた。


「…少し強すぎたか」


素材として回収できない程粉々になった死骸を一瞥しながら呟くと再び奥を目指して歩き出し、道すがら魔力の出力調整をしながらスカルリザードや竜骨兵スケルトンなどの魔物を倒して5階層まで降りていった。

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