〈Epilogue〉 魂の絆はとわに(1)
〈〈 魂の絆はとわに 〉〉
真に愛し合う魂の物語は、これで終わるはずもない。終わるわけもない。
日記をすべて読み終えても、溢れる出る涙がなかなか止まらない。
しかしこの涙は、物語の感動からくる涙なのか、それとも心が切なくて出る涙なのか。
自分自身の事なのに、正直自分でも、よく分からないのである。
もしかして、自分の事ではないのかも、自分では自覚がない記憶のせいなのか。この日記にあるように、自身の魂がそうさせているのかも知れない。
そして僕は、他にも色々と疑問が残り、深くふかく考えさせられた。
まず、画家の男のことだが――――
その後の人生は、どうなったのだろう。
果たして、日本一の画家になれたのだろうか。
孤独となった男は、幸せな人生を送れたのだろうか。
天女のことを愛しつづけることは、果たしてできたのだろうか。
その答えは、この日記帳には、どこにも記されていなかった。
日記の記述は、あるページで、あの言葉で、ぴたりと止まっていたのだ。
それは、最後の日記のページを飾る愛のメッセージだった。
トワの最期の合言葉、『また@愛多意』。
人の一生なんて、その未来のことなど、誰にも分からないものである。
しかし、ただ一つ、確かなことがあると思うのだ。
それは・・・・・・
真に愛し合う魂ならば、来世でも来来世でも、めぐり逢えるということ。
時の大海原に浮かぶ未来に、何度でも何度でも生まれ変われる。それが本当の♪♪ずっと一緒さ♪♪
ただし・・・・・・
男が、魂の絆を失うことなく、死ぬまで天女を愛し続けることができたなら。そして、『輪廻の神様』の慈愛に満ちた見守りや、そのご加護がある限り。
ところで、『黄泉の国』は何処にあるのだろうか――――
天上界(天国)へ通じる入り口なのか。それとも、天上界と下界の境目なのか。
それは、次元を超越した別宇宙。もしくは超空間。
何れにしても、トワの言う通り、零次元の異次元の世界なのだろう。
物質とか、時間とか・・・・・・、そういった物理的概念のない世界。
私たちの心の中に広がる精神世界。心宇宙ではなかろうか。
生身の人間では、認識することが不可能な、『魂の世界』なのだろう。
生まれて日が浅い乳幼児に見える世界があると言われているが、それが霊魂とか、魂の世界なのでは・・・・・・。しかし、成長とともに、下界の俗に汚されて、その力は徐々に消え去るのだと思う。
もちろん、個体差というものがあるので、見える対象や時期が個人で違ってしまうのだと思う。
それから、とても気になったことが一つある――――
それは、日記帳の随所に紙が継ぎ足され、書き加えられている点だ。まるで二人で綴った日記のようで、二種類の筆跡が絡まっていた。
男は、天女との愛の日々を想い起こしながら、この魂の物語を書き加えたに違いない。
何度も何度も日記を読み返して、涙に涙して書いたのだろう。どのページにも認められる、滲んだインクの痕がその証し。
さらに、もう一つ――――
この日記帳を届けさせた美術学部教授の恩師とは、物語に出てきた画家の男だった訳である。画家の男は、自分の教え子に託したということなのだ。
それは、来世で一緒に転生する『魂の恋人』に、前世の記憶を届けるために。
そして、約束の再会を果たすため・・・・・・。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
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