California Dreamin
全世界の人民は団結してアメリカ侵略者およびそのすべての走狗を敗北せしめよ!
全世界の人民が勇気をもち、敢然と戦い、困難をおそれず、あたをたやさず前進するならば、全世界はかならず人民のものだ。
すべての悪魔はどれもこれも消滅されるのだ。
-毛沢東、1964年アメリカ帝国主義に抵抗するコンゴ・レオポルドヴィル人民を支援する演説にて-
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1941年4月20日
大挙国境を越境した中米共産党人民解放軍はサンディエゴに10万、ニューメキシコ・アリゾナに8万人の兵力を越境させた。
笛の音を響かせて兵員が突撃を行い、それをUEキャリアー改造の47mm自走砲が援護していく。
合衆国軍や連合国軍より装備は劣る為、ツーソンで防御円陣を組んで抵抗する州軍部隊などを迂回しながら彼らは後方へ浸透していった。
カボルカから浸透した人民解放軍の一部はフェニックスを占領して10号線・8号線・17号線からさらに浸透せんと図る。
最も激烈な戦いとなったのは必然的にサンディエゴ市街戦だった。
合衆国のOSSは侵攻前兆を察知し損ねてはいたが、国境から斥候が何人も越境している事実を確認すると即座に警報を出したのである。
それは最悪の事態、すなわち英国の介入を恐れている合衆国首脳陣にとってマシだがろくでもない事態になった事を理解させた。
彼らは口で言うほど合衆国に対して自信を持っていなかった、南部国境全域が戦闘状態なんて言う素敵極まる事態に自信を持つのはバカしかいないのだから仕方ない。
緊急出動した州軍は直ちに連邦軍到着までにやるべき事を始めさせられたが、この動きはノロマとしか言いようがなかった。
前線諸州と呼ぶべきカンザス州やミズーリ州の州軍は南部連合再侵攻を恐れて常にピリピリしているが、西岸六州の州軍とは徴兵逃れの居場所だった。
装備品も連邦軍や前線諸州の州軍に比してあまりにも貧弱で、装甲戦力は2号戦車ライセンス生産型だし、銃はスプリングフィールドのM1908だった。
彼らは非常呼集をかけても6割から7割しか現れず、集まった兵員は戦闘が近付いている事を受け入れられず逃亡する兵士が相次いだ。
結局のところ合衆国内部における戦争の認識の問題なのだ。
西岸六州にとって戦争の関心は太平洋の向こうで、それもハワイ陥落以降はハワイの向こうの事である。
この衝撃と認識の差異は後々合衆国に大きな影響を与えてしまった。
西海岸にとってこの「戦争」は、突然巻き込まれた被害者の自分達と言う認識になったのである。
だがそれはそれとしても、合衆国は緊急対応策を即座に放った。
マッカーサーは大胆にもカナダ警戒部隊から機甲戦力を即座に鉄道輸送させ、数日でロサンゼルスに集めると一挙に投入したのである。
さらに前線諸州で構成される州軍予備集団も投入して敵軍の兵站線を完全に断ち切ってしまった。
大軍である以上兵站線は維持されねばならず、連隊や大隊ならともかく軍団規模を略奪で喰わせれる訳がないのだ。
4月22日には中米共産党人民解放軍六万人がロサンゼルス進撃途上で補給が寸断されて包囲撃滅され、前線の中米共産党人民解放軍は戦列が壊乱した。
電撃戦のなんたるか、機械化作戦部隊の行動について最も熟練した対カナダ方面軍はまるで欧州を席捲したフサリア重騎兵が如く最新型のM4シャーマンA2を走らせていく、長砲身76mm主砲はドイツ製のライセンス生産型だがこれほど効果的な主砲は類を見なかった。
何せ欧州派遣軍はこれでジトミル前面のヴジョンヌイ直率のソ連軍戦車部隊をバッタバッタと薙ぎ倒し、KV重戦車の無敵神話を崩壊せしめたのは伊達ではなかった。
皮肉な事に基礎工業力の差は大きく、合衆国製戦車はライセンス元のドイツ製戦車よりアテにされたのである。
結局のところサンディエゴを巡る市街戦とツーソンへの支援作戦以降、合衆国軍は行動をしなかった。
政府首脳陣も合衆国軍部も「手痛い一撃でノックダウンしたからそろそろ停戦交渉するだろ」と考えていたし、連合国は「あの役立たず余計な事を!」と憤慨していた。
だが彼らの想定は甘かった、トロツキーが思ったより諦めが悪かった!
自己の責任と非を棚に上げて大敗北を合衆国軍による組織的虐殺だと徹底的に非難した挙げ句、合衆国がサンディエゴにおける虐殺行為を告発したのは自作自演と滅茶苦茶言い出したのである。
しかも国境全域でゲリラ戦を繰り広げ始めたせいで事態は滅茶苦茶になった、モハーヴェの砂漠までラテンのアカが侵入している以上これの捜索撃滅をどうすれば良いんだ?
合衆国軍は突然無茶苦茶な問題を押し付けられた。
そして1941年5月を迎える頃には、この北アメリカの交戦国三カ国全員が打つ手があまり無い状況になっていた。
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1941年5月、太平洋
太平洋での戦いは散発的になっていたが、合衆国軍は飛石作戦と言う計画を立案して前線を延伸させる事とした。
ハワイ諸島を超えて作戦行動するにあたり、適切と判断されたのは水無月島で、合衆国はアリューシャン列島からの威力偵察と水無月島攻略を前提とするAL・MI作戦を開始した。
両軍共に太平洋上にろくな根拠地や基地航空団が存在しないから、新設するしか無いわけだが相手がそれをするなら妨害する。
つまるところ洋上でもお互い気まずい沈黙が支配していたので、両軍の作戦指導部は焦れていた。
取り敢えず一戦交えて敵軍を漸減し、様子を見ようと言うわけである。
「だからって取り敢えず一戦やれと言われても困りますよ」
そう臨時連合艦隊旗艦たる戦艦<土佐>で呟くのは山口多聞提督だった。
元々機嫌が良いのか悪いのか分かりづらい丸い顔をしつつも、目の色は燃えていた、彼も結局のところ見えた敵をブチ殺すのは当然と言う
「まあ取り敢えずだ、この作戦自体はね、敵の揚陸阻止が作戦目的だ」
山本五十六連合艦隊司令長官はそう言ったが、多聞にとっては「そう言う話をしとらん」と言いたくなった。
南雲提督がハワイ退却戦で重傷になってしまったし、海軍は再建計画で何年溶けるか恐ろしくなっていた。
大神軍港ではなんでも新型戦艦作ってると言うが、時代が航空機の時代になっている事はもはや日本海軍に於いて常識となりつつある。
ハワイ軍港にて爆沈した<長門>は衝撃的だったし、連合国海軍が空母<イリュージョン>による対独支援船団などへの妨害作戦で多大な戦果を挙げている事も理解している。
「まあ取り敢えずだよ、多聞くん、君の仕事は我が軍の航空機がどこまでやれるのか?と言う皆が気になっている疑問を解決する事でもある」
「航空戦隊を人身御供にされても困りますよ」
「アレがどこまで出来るのか気になってるのは我々だけじゃ無いし、実際問題やってみん事にはわからんことが多過ぎるんだよこの戦争は」
気楽に言ってくれるなぁ!
多聞は<飛龍>に帰ったらラム酒呑んで寝ようか考えた、海軍ではラム酒をお湯で四倍に割るのがお行儀良くて良い事とされている。
無論相手の言いたい事も理解している、彼だって海軍で将軍になった男である、馬鹿では無い。
まして航空戦力がどのような問題と成果を挙げれるかの点は彼も気になっている。
ただそのために自分の部下を使われるのが気に食わないのだ。
彼は部下から人殺しのあだ名を持たれていたが、鍛えた部下を無意に失う事だけは気に食わなかった。
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1941年5月8日、水無月島から北東
戦艦<土佐>の中で山本五十六は「あれ、なんか予想と違いすぎたな」と事態の認識を戸惑っていた。
水無月島を巡る戦いは当然、偵察から始まる。
まずここでお互いにしくじった気がする、まさか挙げた水偵が両軍邀撃機に喰われて触接を保てない。
続けて出した攻撃隊、まさか邀撃機に喰われてあんまり成果が出ない。
航空攻撃がどっちも邀撃されて阻止されたまま敵味方で艦艇が近づいてしまった!!
溶けた!俺の
「参ったなあ、夢見て財産スっちまったよ・・・」
両軍の艦隊は航空機の分厚い傘と、対空火力の傘をお供としている。
で、これが両軍でぶつかるとどうなるか?お互い航空機が対消滅する・・・おいこの後どうすんだ。
答えは簡単、砲弾で解決するしか無いのである。
砲戦に突入してしまった事は冷静になると当然だった。
そしてどうも、合衆国さんはやる気満々らしく砲戦でケリをつけてやろうとしてきた。
「水雷戦隊が突入準備に移ってます」
「敵戦艦2隻発砲」
元気がよろしいねえと五十六は思いつつ、双眼鏡で敵旗艦を見てみた。
どうせこの距離だと当たらないし有効打を与えれやしない。
五十六は事ここに至っては砲戦で敵艦隊を縊り殺す事を志した、"敵戦艦2隻と重巡洋艦及び中型空母を伴う敵集団"、無理せずに勝てる範疇だ。
「電探による射撃管制へ」
砲術指揮が始まった、イギリス製レーダーを積んだ最新艦艇である<土佐>はかろうじて海軍の投入し得る戦力の一つだった。
帝国海軍はその長大な帝国のシーレーンを守るために大型艦艇より小型護衛艦などに注力を向け続けている、最近のトレンドは空母と潜水艦だった。
空母でエアカバーを安易に提供出来れば護衛船団は強靭になるし、潜水艦で偵察活動と破壊作戦やっていけば強力だ!と認識していた。
必然、戦艦の必要性は軽んじられていく。
作らないわけにはいかないから作るが、時代が終わりつつある事を誰もが認識し始めていた。
「敵弾弾着」
水柱が立ち上がる、赤く染まっているが着色剤が入っているらしい。
テクニカラーか、古典だが有効だ。
戦艦2隻分の水柱、大型戦艦の艦影が2で中型空母と重巡洋艦を有すると言うから・・・。
待て、水柱のサイズがおかしい!
五十六は咄嗟に水柱を再観測し直し、観測員が驚きの声を上げる。
「敵弾弾着!40サンチ以上砲弾と推測!」
「伊号潜水艦の報告にあったのと違う部隊だったというのか?」
五十六は参謀長に問いかけてみたが、参謀長はハッとした顔をして、言った。
「・・・長官、もしやして敵巡洋艦と見間違えたのはコロラド改級ではありませんか」
「・・・と言う事はアレが、エイギル級か」
五十六は、潜水艦の艦影参考資料の更新が遅々として進んで無い事実を認識せざるを得なかった。
縮尺の目安がない以上、推測が狂うのは当然である。
観測員が訂正報告で「"パゴダ"です!アレは巡洋艦ではありません!」と報告を挙げたため、それは確信に変わる。
「有効射程に入ります」
こちらの発砲。
敵艦列も応射を開始している。
適当なところで退くしかあるまい。
「いかんなあ、勝負にならんぞ。適当なところで切り上げる」
煙幕の展張を命じつつ、隷下の水雷戦隊に自由作戦行動を与える。
しかし帰りますといって合衆国海軍は素直に帰すつもりはなかった。
むしろここで削り殺すことが戦争を優位に立たせる唯一の好機と認識して一挙に突入してきたのである。
その結果は惨憺と言えた、<霧島>以下15隻を喪失又は自走不能・大破させられてしまったのである。
ただ、日本海軍は戦術的敗北をしつつも作戦目的は達成していた。
5月10日、残存する航空戦隊は5月7日以来捕捉し続けていた合衆国輸送船団を撃滅する事に成功したのである。
合衆国海軍は已む無くAL・MI作戦を切り上げることとなった。
そして両海軍で、航空戦力が思ったより心許ないのではないか?と疑問を抱き始めた・・・。
そんな最中、衝撃的なニュースが飛び込んだ。
合衆国ポトマック作戦集団が兵站線を整え直し、泥濘が終わると同時に作戦行動を再開させてきたのである。
ポトマック作戦集団は、一路臨時首都であるアトランタへ進路を向け始めていた。
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