Dixie Too Arms!

南部連合のメスガキ

プロローグ、もしくは終わりの始まり:【我らの合言葉は脱退】

分かれ争う家立ち行く事叶わず。

-聖書、主のみことば-


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【イギリスで産業革命が進行中……】


【ロシアで革命運動が浸透中……】


【火薬庫に火縄が投擲中……】



1860年代、世界が産業化の波を迎えた頃。

アメリカは二分され、内戦に突入した。

南北戦争、世界最初の総力戦、あまりに膨大な死者の数とあまりに深い傷痕。

それが始まる直前まで、南部も北部もこうなるなど考えていなかった。

どうしてこうなったのか。

過激な自己陶酔的解放論者のテロのせいか?

ブレッキンリッジを代表に担げなかった政治家たちのせいか?

リンカーンの強硬政策か?

北部が奴隷支持者の圧政者とレッテルを貼ったからか?

それともろくな計画もなく騒いだ南部連合独立派を黙らせる人間が居なかったからか?


恐らくそのどれもこれもが原因なのだろう、サムター砦攻撃に至るまでの関係者全員が共犯者だと言える。

そして、これは南部連合が"悪魔の悪戯"が為に生き残った世界だ。

生き残った先に希望が無いともいえど、彼らは戦うしか無い。

Dixie Too Arms南部よ銃を執れDown With Eagle鷹を落とせ


1929年3月5日、アメリカ連合国ジョージア州アトランタ市


アメリカ連合国ジョージア州アトランタ市、この都市は連合国の中でかなり発展している部類の都市だ。

先の世界大戦に協商として参戦したアメリカ連合国は経済的成長を--今更に---遂げ、アトランタは前から賑やかだったがさらに賑やかになった。

さらに、ジョージア州はアメリカ独立13州の一つであり、歴史的格式もあった。

南部人たちの自家用車が行き交い道路計画見直しを州議会が賑やかし、ヒューイ・ロング議員は公教育政策を叫んでいる、そんな賑やかな都市である。


アトランタには更に特徴的なものがあった、アメリカ連合国国防総省だ。

この典型的な南部独立戦争後作られた星型要塞を改造したアトランタ郊外の軍事施設は、憲法上の制約と連合国政府首脳部の及び腰により移転出来ないリッチモンドから離れている政府官庁である。

軍事境界線ボーダーを超えて侵攻してくる北軍のヤンキーや、サパティスタ派共産メキシコの脅威があるから、誰もこれに文句を言わなかった。

強いて挙げるならパットン将軍くらいだった、彼は軍内部きってのタカ派で、この事柄に関して強く言葉を荒げている。

曰く「そもそも大統領閣下たちも移転して例え世界最後の日まで孤独であるとも戦い続ける様にするべきだ」という風に。

ただ批判についても分かっていた、北部人に負けた気がするからやだという事である、結局はそういう低次元とさえ言える事が原因だ。

それをよく知っているので、ジョセフ・スタンレイは自身の官舎で起きるのがつくづく嫌だった。

彼はアイルランド系移民3世の黒い髪をし、少し彫りの深いドイツ系が混じった顔をした男性で、35歳で陸軍中佐の地位についている。

平均的にみても少し早足な出世であるが、理由は簡単だった。

アトランタに近いコロンバスにある連合国士官学校で育った若者たちが、greatWar世界大戦で大量に失われていったからだ。

将校たちがポッカリ穴が空いたので、埋め合わせる為に必死なのである。

28万人の陸軍将兵、彼らを指揮する組織と兵站を維持する為に連合国は必死なのだ。


「・・・ミナツキ、コーヒーを淹れておいてくれ。」


スタンレイは祖国の泥沼が見えてしまう人間だったので、普段から気難しい顔なのに朝は更に気難しくさせてしまう。

唯一それを分かってくれる人は、いま彼の為に全てを尽くしてくれる長く黒い髪をして、小柄で愛くるしい人形の様な日本人移民の少女、ミナツキ・ミカゲを除いていない。

2年前まではこれに母親と父親もいたのだが、2人とも天に召された。

2人いる弟と1人の兄は軍人になったジョセフの事を良い厄介払いのように考えてる節がある、少なくともジョセフはそう言われるだろうなと思っていた。


「ジョセフさんジョセフさん、お顔を洗うと良いですよ」


日本人形の様に童顔で可愛く、ジョセフの様な捻くれていると自覚している心も無下に扱えない少女はいつもの様にそう言った。

ジョセフは基本家庭内に於いてミナツキの助言に従うことにしている。

欧米では頭が戦艦建造しか考えてないアホのバカイザーが撒き散らした黄禍論が残っていたし、ヤンキーは中国人排斥法などを通過させているものの、ジョセフは熱烈な差別主義とは無縁だった。

インディアンは好きじゃないし、ユダヤ人も関わりたく無いし、アジア人は何を考えているか分からないが、追い出すなんて馬鹿げていると思っている。

それに、アメリカ連合国は数少ない友好国であり戦略的にも日本との関係を粗末に出来ないのだ。

アジア系の認識は連合国が北部より先進的である、というのはタチの悪いブラックジョークである・・・。


「・・・そうだな」

「それとコーヒーにミルクはいれますか」

「いや、サッカリンは少しだけで良い」

「ご飯はどうします?」

「・・・スープがいい」


こくりと頷いてミナツキはジョセフが作ったお立ち台に乗って、ガスコンロをつけて湯を沸かせる。

ミナツキのゆったりとした歌声まじりに朝食を作る様子を聞きながら、ジョセフは新聞を開く。

一面の見出しは【ラジオ神父、北部の堕落者への警戒を強める抗議】と書かれており、一面にデカデカと神父らしく無い男の集会の写真があった。

カナダから来た口先のうまいラジオ神父殿チャールズ・カフリンが、北部の堕落者への警戒を強めているのだ。

幸いなのはアメリカ連合国のクリスチャンベルトはプロテスタントでカトリックじゃない事だが、政治思想とは宗派性を乗り越えるらしく消極支持者はかなりいるらしい。

思わず眉を顰め、ページをさっさと別の話へ動かす。


2面は合衆国大統領選挙の記事だった、ウィリアム・ダドリー・ペリーという全体主義政党連合党の候補が就任式を行ったそうだった。

事実上孤立し、大戦後の終戦不況と国際連盟からの白眼視に晒されているアメリカ合衆国を再び偉大にすると言っている男だった。

ジョセフは余計な事をやらかさないでくれよと、そう願う事にした。

何故なら彼には理解してくれる女がいて、ある程度のキャリアがあり、家も職もあるからだ、これ以上望むものといえばミナツキが自分より幸せに長生きする事である。

3面、4面は混迷のソビエトや外電、細々としたニュースだった。

ソビエト連邦では指導者を巡る争いがスターリンの独裁によって終結したと結論づけられ、日本では治安維持法の改正に反対していた社会民主主義政治家が暗殺されたらしい。


「ジョセフさんジョセフさん、出来ましたよー!」

「ん」


ジョセフは芳しき味噌の匂いに慣れた、未だに魚を生食するミナツキには慣れないが、スープは慣れた。

飲んでみると辛い気がするが、目は冴える。

サッカリンが多めに入り、たっぷりミルクが入ってカフェオレになったのを飲むミナツキとの朝食を終え、彼はグレーの軍服に袖を通した。


「ミナツキ。今日は定時で済むよ」

「わぁ!本当ですか!」

「ご飯は、外で食べようか」

「お気をつけて!」


可愛らしい笑顔を、心から自分だけに向けてくれる人にそっと彼は手を振った。

少し冷える外に出て、トレンチコートを着て官舎を出る。

妻帯者向けの官舎から、国防総省への道を歩く。

どこを見てもアスファルトと見間違いそうなほどグレーの軍服に満たされている。

レミントンがリーエンフィールドをライセンス国内生産したM1914A4小銃を持った警衛たちに身分証を確認し、全てチェックされ、中に立ち入る。


今日も業務が始まる。

彼の目下の仕事は機甲部隊の編成の手伝いである、要するに、ある程度権限を分担されての雑用だ。

アイゼンハワー大佐がパットン将軍たちの意見で作ってる機械化連隊をどうしたものか、いつも予算と人員の枠内で収まる様苦労するのである。


何故そんなものを作ろうとしているかを述べよう、簡単に言えば人間が足りないからである。

南部と北部では1860年台時点で徴兵適齢人口でいうと1:4の差がある、無論北部が4倍持ってる。

そのくせ互いの国境線はやたらに長い、キレそうなほどに。

これを全て守り抜くというのは難しいから機動戦力で相手の先手を取って殴りまくり、カウンターされない様に装甲で命を守るというのが防衛構想である。

そして、それがための戦車である。


驚くべき事だが、アメリカ連合国はある程度自力で国産技術を使って戦車を作れた。

イギリスの技術やフランスの構想、そして89式中戦車の影響を受けて作ったM1928A1<ボーレガード>という戦車である。

重量21トン、主武装車体固定式57mm、副武装砲塔12.7mm、最高速度悪路で18キロと、フランスのB1戦車やヴィッカースMk3中戦車などに近い思想で作られていた。

乗員三名で走るこの戦車は、アメリカ連合国の製品ではかなり海外輸出されている。

エチオピアや中華国民党、南米各国などに売られている兵器だ。


しかし当然欠点がある、車体固定式の主砲の取り回しに関してと、エンジンだ。

この何方もを解決するのはイギリスからのエンジン関連技術がいる、それゆえに今はイギリスから輸入しているのが現状である。

当然ながら、今は完全に国産化できないだろう。

それに、いまはこのM1928A2の方が大事だ。

A2は開発がほぼ完了した<ボーレガード>の改良型戦車で、砲塔を大型化し47mm長砲身、シャーシを延長して五輪から六輪に切り替えたものだ。

エンジンもスペースが取れるので強化して悪路で20キロに速度が上がった。

悪い戦車じゃない、合衆国の戦車は未だに旧式の一次大戦式かイタリアから買った戦車、それの影響を受けた少数の国産戦車M2<スコット>だけだ。

ゼネラルモーターズとキャタピラー社がやいのやいのやり合ってるらしいが、合衆国にそんな金はないだろう。

経済が低迷しているのはお互い様だからだ・・・。


ジョセフは若干都合の将来予想図を片隅に追いやって、自分の仕事をすることにした。

パットンたち高級将校の支持により事で、ようやく機械化連隊は4ヶ月先には編成を終えれる。

試験的に機動砲、自走砲と呼ばれる部隊が2個中隊8両の追加予算と、オートバイと軽装甲車両中心の斥候先遣大隊の追加編成もようやく終わる。

これは通常の編成ではない、連隊の規模を上回っている。

おそらく、おそらくパットン将軍もアイゼンハワー大佐も・・・このアトランタにいる参謀スタッフたちも気になっているのだ。

この連隊戦闘団レジメント・コンバットチームがどう言うものになるのか。

師団にしてない小さいが機動力がある、通常の連隊よりずっと強力で、師団より安い。

コンパクトな軍隊は政府も軍部も市民も嬉しい、人命が機械化で損耗されづらくなるのは母親と子供と妻達にとっても幸せだろうし、同期生達が死ぬのは嫌だ。


「ジョセフくん。」

「はい。」


ジョセフは開いていた扉に立っている人物を見て慌てて起立し敬礼した。

剃った頭にグレーのシャツ、小麦の様な色をしたズボンの姿をした男といえばただ1人だ。

この連隊を指揮するべき男、アイゼンハワー大佐。


「仕事に精を出すのはいいが休まないか?2回ノックしたが気付いてなかったよ」

「失礼しました。ですが丁度良かったです、編成に関する要項が終わりました。」


ジョセフは誇りに満ちた顔をした、俺は祖国の歴史に僅かだが貢献していると言うのはたとえ祖国に未来が乏しくても誇りあることだ。

アイゼンハワー大佐はそれを見て、一通り確認し、二度頷いた。


「うむ。問題なく仕事を完遂しているね。」


アイゼンハワー大佐の言葉をジョセフは実はあまり聞く気にはなれなかった、この仕事は恐らくこれで終わりだからだ。

だがそんな考えを次に聞いた言葉で直ちに捨て去るべきだと後悔した。


「じゃ、とりあえず君も部隊指揮官にするから」

「Sir!?」


ジョセフは思わず声を大きくした。

警らしている憲兵が思わず肩を震わせ、様子を見に来た。


「あの、失礼ながら小官は書類と戦闘する担当であったと記憶しておりますが」

「君の士官学校の成績を見させてもらった、机上演習の物は特に面白かった。」

「え、アレがですか」


ジョセフは思わず本気で尋ね返した、きっとパットンなら嫌な顔をするだろう行為だし、アイゼンハワー大佐もしないだろう。

しかしそれに幾らかの正当性を感じたので、アイゼンハワー大佐は自身の直感を述べた。


「君は演習で有利な地点の奪取や敵撃滅より、敵に仕掛けさせて出血を強いる戦い方を好んだね」

「サー。会戦で相手に勝つより防御側の有利を活かすべきだと考えています。」

「防御側で有利な地点を確保する際指揮官にある程度権限を委譲したり、攻勢に際して装備を減らした軽装隊員達を先行させたね」

「サー。出来うる限り先手を取り、時間的優位性を確保したかったからです。」


アイゼンハワー大佐はそれを聞いて「概ね同意だ、機械化部隊は軽装でなくても人間の足より早く騎兵より頑丈だ」と述べた。

ジョセフは失言した事を気づいた、言質を取られたのである。

そして自分を待たせてくれたワーカーホリック気味の中佐にアイゼンハワー大佐は静かに微笑んだ。


「というわけで機械化連隊戦闘団に君も士官として加えるから、よろしく。」


去っていくアイゼンハワー大佐の足音が聞こえなくなるくらいに時間が経って、ジョセフは静かに席に着いた。

やっちまった。



彼の呟きは、そっと扉を閉める憲兵の音ですぐに掻き消された。


1929年3月21日、アメリカ合衆国コロンビア特別区ワシントンD.C.


第32代大統領ウィリアム・ダドリー・ペリー新大統領は最悪な気分を味わっていた。

ホワイトハウス会議室ではそれ以外の全ての閣僚も額を並べているが、全員大統領と同等に辛い顔をしていた。

その閣僚の面々を見れば、思わず声を上げるだろう面々だった。

副大統領ロバート・ウッド退役陸軍准将、アメリカ右翼組織のモンロー主義者・・・これはまだ良い。

外務大臣チャールズ・リンドバーグ・・・、彼は積極拡大するナチスのシンパで幹部であるゲーリングとの会談や日記に於いてヒトラーを熱烈に称えている。

気が狂ってるとしか言いようがないのはFBI長官のエドガー・フーバーはともかくとしてジェームズ・アーノルド・コレスコットが法務省のポストに収まっている。

さらに言えば他にもジェラルド・LK・スミスとかフリッツ・クーンとかいう--悪い意味で個性的な--面々もいる。

ぶっちゃけて言えば、どいつもこいつもアメリカ合衆国の真反対にいるファシストだ。

要するに、合衆国の自由を死なせる安楽死担当者達だ。

だが彼らを選んだのは間違いなく国民だ、たとえ6割が無記名白票であったとしても最大多数投票は彼らの"銀鷲軍団"だ。

メイク・アメリカ・グレートアゲイン偉大な祖国再び!」だの「アメリカ・レッツドゥーティスアメリカ、やってやろうぜ!」だの叫んでる彼らを選んだのはアメリカ合衆国自体が病んでいるからだ。

何故なら連合国ですら彼らが当選するなんて思ってなかったのである、お陰で序盤で民主党が優位だったからCNNは「民主党圧勝!」と記事を書いてしまった。

しかし彼らは第31代大統領、フーヴァー大統領の自由放任のレッセフェール政策が生んだ恐慌という特大のクソの後始末をしなくてはならない。

第30代大統領カルビン・クーリッジは第29代大統領の急死に対して「国民は正当な意志を以て次を選ぶべきだ」と引き継ぎ作業だけを終えて辞職したのはともかく、

その後があまりにも問題だった。

なすに任せよの不況への対応は失われた経済的損失をさらに拡大させて出血多量である。

その結果は反ユダヤ主義であり反共産主義者、世の中の全ての悪いことはジューとコミーのせいと責任転換する事を愛国心と誤認した新大統領だ。

しかしながら彼は祖国の現状が思った以上だと思い知らされた。


「なぜ我が国の企業たちは我が国以外に工場を立てているのだ!JAPの沿海州や満州に何故アメリカ企業が移っているのだ!」


ペリーの叫びに、新閣僚のヘンリー・フォード商務長官は若干苦しげに言った。


「それは、要するに人件費です・・・。日本人や中国人のが労働者として安いので・・・」

「彼の国は我が国の権益を脅かしているだろう!」

「ですが先の大戦以来日米は緊張緩和路線を訴えているのでありまして・・・」


フォード商務長官は自身のためにも言い訳した、彼の自動車会社でも大陸に工場を立てているからだ。

赤旗振って一丁前に文句言ってストライキする連中より、安い給料でこき使える猿どものがマシだと思うのは無理はなかった。

世の中かが利潤と数字でしか見えてないからだ。

新設された宣伝省のジェラルド・LK・スミスは少しだが熟考し、意見した。


「大統領、まず我々がすべき事は改めて世界的状況を見直す事です。視界を広く取るべきでしょう」


閣僚達の何人かがそうだと思うと賛同した、気まずいし話を逸らしたいのだ。

しかしながら、改めて見るとそれは悲しむべき話だった。


アメリカ合衆国の鉱山会社があったのにメキシコはそれを国有化、当然フーヴァー大統領はろくに対応できてない。

ハワイ諸島は大日本帝国の衛星国と化し唯一の仮想敵たる合衆国海軍艦隊に威圧を続け、日本は協商と結託しイギリスとの蜜月関係を断固維持するつもりだ。

その欧州はなんかもう滅茶苦茶である、ドイツではナチス党のヒトラーが政権を取ろうとしているがそもそもワイマール共和国は非文明国家である、エチオピア帝国のがずっと平和である。

フランスでは真逆を行く共産党が勢力進捗しているが何もしてなくても政権が飛ぶのが第三共和政である。

対するイギリスは英連邦植民地を統括する貴族の子供達がイーペルやガリポリで脳味噌ぶちまけて土に還ったのでもう独立させるしかない。

イタリアはアメリカ合衆国のことをマフィアのゴミ捨て場と思い込んでるフシがある、ムッソリーニは新大陸への片道切符しか出してない。

東欧やバルカン半島の狂人達は論外だ、ブルガリアのハゲやギリシャのホモ達はともかく、ルーマニアには鉄衛団とか言う狂人以上の悪魔が出てきた、奴らは大天使ミカエル軍団を真顔で名乗っている真の狂人である。


そこから東に目を向ければさらに救いようがない、接している国全部と敵対的外交をするポーランドから東はろくでもない有様だ。

悪の秘密指令が飛ぶところコミンテルンのソ連、数百万超えれない人口のフィンランド、かつての帝政時代から逃げ出したバルト三兄弟。

中東やらに目を向けるが大戦で滅茶苦茶になって傷が癒えてないどころか更に悪化しているし、アジアに目を向ければソードマスターぷーいーの中華四天王編--内戦とも言う--が絶賛連載中である。


合衆国のかつての裏庭、南米はあの頃の輝き何処へやら。

アルゼンチンは単一輸出モノカルチャーに翳りが見えてきたけどいつものブラジルとのケンカをしている。

ベネゼエラは石油輸出モノカルチャーであり何らの自活能力もない。

ボリビアも鉄鉱石しかない。

・・・パナマはともかく中米から北を見ると泣きたくなる、メキシコ共産政権樹立のせいで新大陸に意味不明国家が増えた。

メキシコによる中米赤色化と中米共産連邦とメキシコの合邦による統一赤色アメリカである。

トロなのでスターリンとは最初から縁が遠い以外の喜べる点はない。


「神に愛され選ばれた国がどうしてこうなる、本来なら、本来なら我々の合衆国は世界に冠たる大国として・・・」


多分それ神様じゃなくて悪魔だよ、副大統領ロバート・ウッド退役陸軍准将はそう感じたが言わないことにした。

だがその後に聞いた言葉に、ロバート・ウッド退役准将は大きく衝撃を受けた。


「いや待て、我々は雇用を改善する手段があるではないか」


ペリーはハッとした顔で、国家的麻薬を吸った。


だよ」


その場に居たほぼ全員の顔が、衝撃に包まれた。

ただ1人だけ、マッカーサー将軍だけが心の中にだけ感情の動きを抑えていた。

彼の内心だけが、彼の愚かしさに感謝し、将来の自身の為の生贄に喜んでいた。

ロバート・ウッド退役准将は反戦右翼というアメリカ合衆国らしい感性と政治思想故に「そんなバカな!」と驚いていたが、誰も対案がなかった。

トイレ一つ増設することすら社会主義的だの共産主義的だの言うのがフーヴァーの言う真のリベラリズムとされてきたのがこの時代のアメリカなのだ。


斯くしてアメリカ合衆国は、危険なファシズムへの傾斜とイカれた内向きの社会に変容していた。

しかしアメリカ合衆国に他に手段があったか、それは怪しかった。

例え最大多数派は白票であろうとも、国民に名指しで支持されたのはペリーなのだ。

そして、1928年合衆国大統領選挙の第4位の支持率を獲得したのは共和党ではなくアメリカ共産党のフォスターなのだ。

民主主義国家は投票の結果自由の安楽死を選んだのである。












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