テンセー社畜は聖女を拾う

@サブまる

001 追放

「おーほほほ!! 見窄らしい姿 ですわねえ!!」


 プリーストであるスマベラが、高らかに声を上げた。

 その目線の先には 頭から水をかぶり、教会の床にへたり込んでいる女。


「………すみません」

「すみませんで 済むとお思いで?! あなたの その顔を見るたびに、私は精神的苦痛を 受けているのよ!!」

「………すみません」


 聖女クリスだ。数年前から この教会で働いている。

 クリスはただ頭を下げ、滴る水で 波紋のできる床の 水溜りを見つめている。


「出ていってくれないかしら? あなた、邪魔なのよ」

「それだけは……! く、クリスは、ここを追い出されたら、いく宛などなく クリスは 死んでしいまいます!」

「あら、それもいいじゃない? お似合いじゃない?」


 必死の懇願を 見せるクリスを、意地汚い顔をして スマベラがわらう。

 クリスは、その言葉に怯えた様子だが、それでもな口を震わした。


「嫌です……私が何を したと いうのですか……?」

「さあて、何をしたのかしらね?」

「そんな……!! 酷い! ひどすぎます!」

「うるさいわ! いいから 出ていきなさい!! 二度と顔を 見せるんじゃありませんわ!!」


 スマベラの 大きく振りかぶった足が、クリスの肩に直撃する。


「きゃあああ!!」


 肩を庇いながら クリスは床に転がった。痛みや悔しさに 涙を浮かべる。


「まぁ、冥土の土産に 教えてあげるわ。実の所ね、私ここのお金を 少々ふところに入れちゃって、今 国にバレそうになってるの」

「な、聖職者がなんてことを……」

「さあ、理由は話したわ。さっさと出ていって、二度と顔を 見せないでくれるかしら?」

「い、嫌です……!」


 鋭い眼光が、クリスを射抜く。あまりの恐怖に、すくみあがったクリスは 這うようにして外へ向かうしかなかった。


「言っておくけど、告発しようとしたって 無駄よ? 教会長である私と、下っ端のあなた、どちらのいうことが 説得力あるかすら わからないほど 馬鹿じゃないでしょう?」


 絶望に顔をそめ、クリスは濡れたままの みすぼらしい姿で、行く当てもなく教会を 後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る