自我とは、「私」の定義とは、何か。
@2258319
第1話
そもそもヒトとは何なりや?私たちのこの体を構成している細胞一つ一つだろうか?いや、感覚的に正しい定義かもしれないが、違うだろう。というのも、私たちの細胞は日々更新を繰り返し、剥がれ落ちていっている。「私」という統一されたアイデンティティを託すにはあまりに頼りない。いや、本当に私という存在は一貫しているのか?ニーチェは、『脱皮できない蛇は滅びる。意見を脱皮してゆくことを妨げられた精神も同じことである。』という言葉を残している。考え方(つまり、精神)というものは逐一更新されていくものであって、統一されたものではあり得ないのかもしれない。なら、近視眼的に今を見ればいいのではないか、という考え方も当然出てくるに違いない。今存在して、考えている「私」は確実に存在しているのだから。(コギト・エルゴ・スム?デカルト?なのか?)ということだ。だが、存在しているというだけでは不十分なのではないか。というのは、無論無意識のことを考えるに至るからである。ふとした匂いや手触りなどから、過去のことを思い出すことはしばしばある。我々は無意識の領域まで普段意識を飛ばすことはできないのだ。そういう意味では、ゲーテの言うアンチテーゼを我々は自らの中に内包し、それ故に成長することができると言えるのかもしれない。では、そのような不確実性を秘めた統一思念体という定義で良いのだろうか。ここで考慮したいのは心身の繋がりである。思念というイデア的なものとは対照的に現実界に存在する身体。記憶のことで考えるなら身体記憶が分かりやすいだろう。漢字を書くときにわざわざ漢字の形を思い浮かべなくても手が勝手に動いてくれるアレである。脳と身体は連関している。今となっては心身が分離しているとみなす心身二元論を持ち出すのはいささか時代遅れだ。ではどうやってヒトを定義しうるのか、ということだが、心身をひっくるめても外界からの影響で動くマシーン的なものとして捉えうるとしたら?例えば、他人に挨拶をされたとき、挨拶を返すだろう。なぜそうするのかといえば、幼少期にそうするものだと教えられるからだ。そこに我々からの働きかけは存在しない。我々が挨拶を返したいと思うのは、我々がそうしたいからではなく、すでにそうするものだと決まっていたからだ。他に我々が干渉できないものとしては3大欲求が挙げられるだろうか。生まれたときにはほとんどのものにはそれが備わっている。生存のための本能だから。いや、本能に限らずとも、今自立した自我を持つと確信している我々は、日々の行動をどう決めているのだろう?おそらく、自らの行動によって何が起こるかを感覚的・理論的に(もしくは無意識的に)考え、実行に移しているわけだが、その思考をする脳はどういった具合で結論を出しているのだろう?結局これまでの経験が全てだろう。そしてその経験とは、外界からの刺激によってもたらされたものではなかっただろうか。まるで数学の関数のように、外界からの刺激に対して思考・行動で反応する一種のマシーンであるという捉え方はできまいか。幼少期から、帰納的に出力・演算を繰り返してきたマシーン。これを突き詰めると、我々という存在を定義するのに必要なのは現在の心身の状態に関するデータと思考ルーティンだけどいうことになりはしまいか。なら、我々のことをインターネットの世界で、ワイヤードの世界で再現することも可能だろう。記憶というクオリアがなくても、記録さえあれば我々の再現が可能なのか?いや、それは違うかもしれない。記憶と記録は違う。インターネット上にヒトを再現するとなれば、当然その人に関するデータと思考ルーティンを記録から作り出していくことになるが、それは無理だ。そこからでは記憶、クオリアには届かない。では、このクオリアに着目してみてはどうだろうか?我々の解釈次第では、この世界は全て恣意的に映る。というのも色の名前や、ものの名前は言わずもがな恣意的につけられたものである。例えば、仮にあなたの前にリンゴが一つ転がっていたとしよう。だが、実はそれはあなたの勘違いで、実は何らかの錯覚でリンゴではなくミカンがリンゴに見えていたとしよう。この時、あなたの脳内世界では、リンゴがあったという認識で終わる。そう、解釈次第では現実はどうとでも捉えられ、歪められる。いわば、妄想の世界に逃げ込んだ人がいたとして、その人は自分自身の世界の中で生きているのだ。つまり、自我とは世界をどう解釈するかという一生終わらない試みなのかもしれない。世界を、どう見つめるか。今一度、私も考えてみたい。そのためには教養が必要だろう。先人たちがこの世界をどう捉えたかを知るのは大事だろう。これから身につける知識によっては、私の自我は全く違う世界を見せるのかもしれない。
自我とは、「私」の定義とは、何か。 @2258319
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます