淑女倶楽部

第1話 サロン マリンアロー

　サロン｢マリンアロー｣は海の見える山の中ほどにある広い敷地を持つ館。古の領主貴族の別荘でもあったところ。風光明媚なサロンとして人気の社交場の一つ。

　しかし一部淑女にとっては単なる社交場以上の場所となっている。淑女の為の完全会員制秘密倶楽部として。この秘密倶楽部のメンバーになる条件は一つだけ。会員の紹介があること。例え万金を積み上げようともこのルールが覆ることはない。

　メンバーの守るべきルールは３つ。倶楽部内のことを外に明かさない。メンバーであることを明かさない。そして何よりも淑女であること。

　罰則は一つだけ。会員権の剥奪のみ。ただし、紹介者も連座して退会させられることになる。過去には連座させられた紹介者による刃傷沙汰もあったと言われている。真偽のほどは定かではないが、さもありなんと疑う者はメンバーの中にはいない。

　そんな秘密めいた倶楽部だけれども、噂は絶えず、会員になることを願う女性は多い。その理由は一つ。とこしえの美。いつまでも若々しく美しい女性の多くがこの倶楽部の会員だとまことしやかにささやかれている。もちろん、そうだと認めた淑女は一人もいないのだけれど。