9.3 100ページ目 ノート

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 五月七日


 LIFE:


 昨日はプレミアチケットの効き目がいつもより短くて、日付が変わる前に眠ってしまった。これ以上は無理できない体なんだと思い知らされた。


 このノートは、今までの人生を振り返るためにすごく役に立ったと思う。

 自分が考えてきたことも、みんなに伝えられる気がする。


 けれど、欲張りを言うなら、世界がとても美しいことを、私がとても恵まれていたことを、読み手に感じてもらえたらいいなと思う。


 辛いことや痛みのことを、想像していた以上にたくさん書いてしまったけれど、痛みがあるからこそ、世界がより一層輝いて見えるのかもしれない。


 だけど、今の私にはこれ以上、このノートに思いを書き続ける勇気がない。このノートを書いていると、どうしても人生の終わりを意識してしまうから——このノートは、今を生きることから私を遠ざけてしまうから、しばらく書かないことにします。




 Will and testament:

 もしも、私がこのノートを直に渡す前に死んでしまったら、このノートを読んだ人は、このノートが彼の手に渡るようにしてください。よろしくお願いします。



 追記:

 LIFE:


 直、あの日の会話覚えてる?


 私「私より好きな人を見つけてね」

 直「そんなの、絶対に無理だよ」

 私「無理じゃないよ。賭けてもいい」


 私、本気で言ったんだからね。




 Will and testament:

 直。これからは、好きなだけ美術の勉強をして、素敵な人に出会って、素晴らしい人生を送ってね。私より好きな人ができたら、賭けは私の勝ちだよ。



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 こんなふうに思われたら他の人なんて好きになれっこない。

 僕は愛なんてまだ知らないけれど、胸が押しつぶされそうだ。


 ページをめくるのが怖い。


 もしかして、もうこれ以上何も書かれていないかもしれないと僕は思ったけれど、ページをめくると、そこにはメモ用紙が貼り付けてあった。


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