せかせか都会

シヨゥ

第1話

 都会はなんだかせかせかしている。田舎から出てきて数か月。そんなことを毎日のように思う。


 大学が多いのもそのせいだろう。向学心というのか向上心というのか。専門分野を深く探求しようと田舎では満足できない人たちが集まってくるのだ。それはそれはせかせかとしている。

 なんたってその分野の知識であればなんでも吸収してやろうというぐらいの意気込みなのだ。そんな学生がせかせか動き回っている姿をよく見かける。

 ぼくも大学進学でやってきた口だが、ああはなれない。なりたくもない。ぼくは社会に出ることを先送りにする目的で大学に進学にしたに過ぎない。大学生の大半はそんなもんだと思っていたのだが違うようだ。

 それでもぼくと同じような奴も一定数はいる。ただそいつらもせかせかしている。


 そいつらは女の尻をおっかけてせかせかしている。おしゃれをして、話術を磨き、女の群れへと飛び込んでいく。自分磨きという意味では向学心とも向上心ともいえるだろう。いかにいい女を口説き落とすかに心血を注ぎ、毎日自分磨きに、その元手稼ぎのバイトにとせかせかしている。

 ああなりたいかといえばそうでもない。じゃあなにになりたいんだと言われたらなにもなりたくないいと答えるだろう。ぼくはただだらだらしたいのだ。


 そんなだらだらしたい連中がこうして下宿に集う。田舎からやってきたやつが大半だが、都会になじめずに肩身の狭い思いをしてきた都会人もいる。みんながみんな都会はせかせかしていると言う。

 そんなせかせかしている都会の片隅でぼくらはだらだらするのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

せかせか都会 シヨゥ @Shiyoxu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る