@yuuki_ya

第1話

「君の絵をタトゥーとして刻みたい。」

そんなクサイセリフを意図も簡単に言えるのは私の人生の中でこの男しか居ない。

辞めなよ私の絵なんて、と自分を無下にする言葉を吐き出す口を男は自分の唇で蓋をした。仕方が無いのでその場にあった適当な紙に〝You are bicchi〟そしてその横に女の尻を描いた紙を渡すと、男は 俺の事よく分かってんじゃんと大切そうに紙を財布にしまった。

ラブホテルの金額設定は間違っている。何故ラブホテルの金額は4400円だとか6600円だとか、2で必ず割れる数字にするのだろう。私は毎回お会計をする度に2で割れる数字であることに現実を突き付けられる。お前と彼も別れる関係だ、と神様に言われてる気分になる。セフレとの甘い時間を過ごし、キッチリ割り勘も終え今日も彼氏が待つ家に帰る。

家に帰ると早速彼氏が玄関で仁王立ちしていた。どうしたの?と声を掛けても無反応なので私も無視をしてそのままリビングのソファにだらしなく座った。するとタイミングを見計らったかのように、突然彼氏が獣のように俊敏な動きで私の首に飛び付くと、めいいっぱい首を絞めてきた。呼吸が出来なくて私は藻掻く。口をパクパクさせながら彼氏の手を叩くと意外にも彼氏はすんなり手を引いた。二人の間に沈黙が流れる。沈黙を破ったのは彼氏の「何で俺じゃ駄目?」という言葉だった。


2ヶ月の久しぶりの私からのLINE

「久しぶり。今日会おうよ。」

男からの連絡は一向に待っても来ない。私の連絡はマメに返す男だったのに。

今頃私の絵が彫られた身体で他の女とまぐわってるのだ。ざまぁ見ろ。嫉妬しろ、お前の見てるその〝You are bicchi〟その言葉は私が男に向けた言葉じゃない。男が今後抱く女へ向けた言葉だ。


作者である私がそのタトゥーを見る事は二度と無い。

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