14皿目 焼き秋刀魚

 秋の風物詩。


 秋刀魚については、「ちょっと風流じゃないか」と自分で思っているエピソードがある。外から見たら「ただの食欲じゃないか」と思われるかもしれないがまあ読んでいってほしい。

 まだコロナで緊急事態宣言とか出る前のころ。

 当時住んでいた駅前アーケードの秋祭りで「落語会」があるという。席代500円。お祭りなので破格だ。近くの居酒屋を貸し切って(残念ながら飲食しながらの観覧はできない。ま、当然か)、ちゃんと本物の落語家さんが落語をやってくれるというイベントだ。前座の方がおひとかた、そしてその方の兄さん。兄さんのほうの話が「目黒の秋刀魚」であった。落語はずぶの素人だけれど、タイトルと大筋だけは知っていた。たいそう笑わせていただいて、いや面白かった、お祭りの焼きそばでも買って帰るかと会場を出ると、何やら白いテントが張ってある。


 言うことには「焼き秋刀魚 100円」。


 これで食わなかったら野暮であろう。

 ちょっとしてやられた気分ではあったが、秋晴れの空の下で食べた秋刀魚はたいそううまかった。

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