音楽が聴こえてきた

一色 サラ

音の元へ

 大学の少し古びた校舎から、ピアノの音色が微かに聴こえてきた。一階の廊下を歩いてた大学三年になる大崎おおさき成海なるみは、二階に置かれてるピアノの方に耳を傾けた。

 クラシックではなく、どこかで聴いたことのあるアニメの楽曲を弾いている。だぶん、忍者が出てくる作品だったと思う。最近、午後4時過ぎになると、聴こえるようになってきた。この時間になったら、学生も減って、大学は静まり返っているからかもしれない。

 成海は誰が弾いているのかが気になって、二階にある部屋に足が進んだ。部屋の前に着くと音は一階に居た時と同じ大きさだった。

 それに部屋は防音設備になっているようで、重そうドアノブがあった。ひねってまで、中の様子を伺う勇気は持てなかった。その時ドアノブが動いた。

  成海は驚いて、隣の部屋に入った。ドアのガラスから、弾いていた人を知りたくて確認するようにゆっくり、廊下をみた。部屋から出てきたのは、大学の経済学を教えている速水はやみまさる教授だった。頭が固くて、ピアノを弾くイメージなどない人だった。

 それからしばらく、成海は教授の授業があまり頭に入ってこなかった。

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