第15話 Who is my MaMa?(ママは幼女で女で男でアレレレ?)
雑居ビルの階段を登りながら、反響する足音に負けないように、伽夜ちゃんが声を張る。
「良い? 事務所に入ったら、まず【明星ステラ】さんにご挨拶して。宵月レヴィアの、いやヘブンズライブ全員のガワを手掛けた『ママ』だから」
「ママ……幼女……ママ」
「それに『100日後、オーディションに合格する堕天使』の漫画も描いてくれてたり、レヴィアのプロデュースにかなり尽力してくれた人だから。
良い? 一番最初に挨拶してね、それとお礼も。分かった?」
「幼女……バ美肉……ママ……バ美肉?」
分かんない、もう何一つ分かんないよ。
分かってるのは、今から会う3人の先輩の内、2人は男の人で、1人は女の人ってことだけ。
そこから宵月レヴィアのママの幼女の男の女のステラさんのアレソレハレホレ?
いつまでも情報が完結しない。
故に、何もできない。
「お姉ちゃん? ちゃんと聞いて……し、死んでる」
わたくしは目を閉じ、合掌した。
視界など不要、思考など不要。
心の目で、真実を見定めるノデス……。
「まぁいっか。失礼します、姫宮です」
『はーぃ、入ってー』
伽夜ちゃんがノックした扉の向こうから、くぐもった声が聞こえる。
あれ? なんだか聞き覚えのある声……。
「失礼します」と伽夜ちゃんが事務所に入っていくのに続いて、私も入室する。
入ってすぐに、さっきの声の主に当たりがついた。
オーディションの時の看護師さんだ。
彼女は私を見ると、あの時の固い雰囲気なんて無かったかのように、両手で手を振っていた。
私もパッと顔を明るくして、手を振り返す。
そして事務所には看護師さん以外に――――――人が2人いた。
1人は窓際で腕を組んでる190センチ超えの男の人。
う、ウル〇ァリン? って疑う位、ムキムキだった。
そして……もう1人の人が本題(思考開始)。
彼女――――いや彼は彼女で私のママなのか?
伽夜ちゃんの事前情報と目の前の情報が混じって、思考がバグり散らかす。
それくらい、彼は女の子顔負けの可憐さを持っていた。
華奢な肩、小さな顔、長いまつ毛、サラサラの髪。
無地のTシャツに半ズボンって『THE男の子』って恰好なのに……どうしても女の子の可能性を捨てきれない!
そのくらい、彼は、すごく……女の子だった。
いや。
いやいやいや落ち着け、姫宮紗夜、落ち着くのよ!
伽夜ちゃんの情報では、『3分の2は男』。つまり、女の人は1人しかいなくて――――その唯一の女性は看護師さんだ。
ということは彼女……いやいや彼は男の子なんだ。
でも、いや、待って! 私が考えなきゃいけないのは――ステラさん(私のママ)は誰かということ‼
思考が加速する。時間が縮む。
そう、腐っても私は天才JC伽夜ちゃんの姉! そのお姉ちゃんIQの全てを解析力に振ることで……正答率は跳ね上がる‼(思考終了)
「こんにちは、はじめまして! 姫宮紗夜って言います! この度は【宵月レヴィア】のイラストや漫画を描いていただきありがとうございます!」
「――いや、僕じゃないけど」
え、とお辞儀した頭を上げる。
Tシャツ姿の彼の、困惑顔が目に映った。
すると伽夜ちゃんがスッと横を通り過ぎて……窓際に向かった。
そして腕を組んだ男の人の前に立つと、キチッとした角度のお辞儀をした。
「はじめまして、姫宮伽夜と言います。この度は、姉の紗夜のアバター【宵月レヴィア】のデザイン・漫画制作をして頂き、誠にありがとうございます」
「そんなにかしこまらないでくれ。ちゃんとした取引だったし……中学生にお辞儀させるのは落ち着かないよ」
「失礼しました」
スパッと顔を上げる妹の前で、190センチの男の人がフッと目を細めた。
190センチの男の人の笑顔に、ほわほわ幼女【明星ステラ】の笑顔が重な……かさ、重な……重な、る―――――――――スゥッ。
「 そっちなのぉぉぉぉぉぉおおおおおおおーーーーーーー⁉⁉⁉⁉ 」
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