第37話 連携魔法 (ウォール)

「すみません、皆さん個別で作業するものなのですか?」


 ネズコ君が手を上げてお姉さんに質問した。


「基本設計は基本的に個人ですね。テストは、大規模魔法や連携魔法だと、共同で行うこともありますよ」

「mPadに大規模魔法なんて使われてるの?」


 今度は、レモンさんが質問する。


「大規模魔法はmPad本体でなく、受け側に使われてることが多いですね」

「受け側?」


「たとえば、通信機能の基地局なんかがそうですね」

「ああ、成る程」

「そんなのも作ってるんだ」


 レモンさんは納得し、ラミンさんも感心しているようだ。


「セットでないと意味がないですからね」

「私たち知らないことばかりだね」

「なにか、私でも活躍できそうな分野があって、やる気が出たわ」


 レモンさんとラミンさんには、良い刺激になったようだ。

 これなら、視察研修を計画した甲斐があったというものだ。


「僕、一度、共同で魔法を使うところを見てみたいんだけど……。無理ですかね?」

「どうでしょう。ちょっとお待ちいただけますか」


 お姉さんは工房の責任者に確認に行ったようだ。

 俺も行って、手の空いていた人を三人呼んで、実演してもらうことにした。


 今回実演するのは、連携魔法である、地図上に自分の位置を表示する魔法だ。

 二人が基準点となる魔法を使い、それと連携するように一人がマップの魔法を使う。

 三角測量の原理で自分の位置を把握するというものだ。


 一度実演を見せてもらい、その後コツを教えてもらいながら、自分たちでもやってみることになった。

 実演を見ていることもあり、みんな、さほど苦労するとこなく、連携魔法を使えるようになった。


「流石はランク4だね。教えてもらったそばから使えるようになるとは――」

「その、教えてくれる人がなかなかいないんですよ。書物だけでは掴み切れないんですよね」


 俺が感心していると、ネズコ君が不満を漏らした。


「そうだな。学院では基礎しか教えてないからな」

「そうなんですよね。学院の授業を受けてがっかりしました。実際に使っているのを見るのが一番勉強になりますね」


 カリンさんもかなり勉強になったようだ。


「お互い、できる魔法を教えあって伸ばしていけばいいんじゃないかな。そのための研究会だろうから」

「そう言うなら、ウォール様も協力してよね」


 サテンさんから釘を刺されてしまった。


「一応、魔術研究会の会長になっているからね。できるだけのことはやるつもりだよ」


 成り行きとはいえ、会長になってしまったのだ、できることはやろう。

 それに、将来ここで働いてくれる人も出るかもしれない。


「それは心強いわ」

「期待してるわね」

「これからよろしくお願いします」

「僕も協力するよ」

「私も頑張ります」


 なんとか、みんな前向きにやる気を出してもらったようでよかった。

 視察研修は成功といって良いだろう。


 さて、この後は親睦を深めるために湖畔でバーベキューだな。


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