第18話 規制? 何それ美味しいの?(たぶんセーフのはず)

「ルールは簡単だ。お前はボディーソープの泡が落ち切るまでの間、ただ声を出すのを我慢すれば良い」


 今までと今回の勝負で明確に違う点を上げるなら今回は俺が勝負形式という名のルールを決めているという一点だろう。


「ちなみに念押しするがシャワーは使わない。自然に泡が身体から落ち切るまでの間、俺はお前の身体を『自由』に洗ってお前に無理矢理にでも声を出させる。ルールに関して質問は?」

「莉奈が声を出したっていう判定は誰がジャッジするの? あと、泡が落ち切る方の判定も」

「それは全部お前の判断にまかせる」

「良いの? それだと莉奈の方に有利な判定を出すかもしれないよ?」

「今更何言ってるんだ。今までもお前に有利な判定だっただろ」

「それは……」

「安心しろ。完膚なきまでに負けを認めさせてやる」

「…………」


 思いの外、妹は勝負に対して乗り気じゃなかった。てっきり即座にでも勝負を受けると思っていたのだが。


 俺からの申し出を不審に思って警戒しているのか?

 なら、美味しい餌を出して妹を釣るだけだ。


「お前が勝ったら何でもお願いを聞いてやるぞ」

「……本当に何でも聞いてくれるの?」

「ああ、お望みならお前の『初体験』の相手になってやる。その時は小虎との関係も綺麗さっぱり断ち切るつもりだ」

「……え?」


 俺の発言に妹は大きく目を見開いた。どうやらこの提案は完全に予想外だったらしい。


「本当に、本当に何でも聞いてくれるの?」

「ああ、お前が俺に勝てたらな」

「今度は本当に約束守ってくれる?」

「ああ、何なら負けた時にお前の前でひざまずいてやるよ。なぁ、ワガママなお姫様?」

「…………」


 妹は魅力的な餌に目が眩んだのかあまり深く考えずに嬉々とした様子で「やる!」と勝負を受けた。


 罠にはめた。後は実行するだけだ。


 目には目を。不正には不正で。やられたら十倍にしてやり返す。


「じゃあ、今この瞬間に始めるぞ。他に何か質問あるか?」

「無いよ」

「そうか、最後に言っておくが負けても後で泣くなよ?」


 そして俺は絶対に負けられない勝負を始める。


 まず初めにボディソープのボトルを手に取りフタをポンプして妹の身体に『大量の白濁した液体』をぶっかけていく。


 ビュルッ、ビュルッ。

 背中から腕、胸元から腹にかけて入念に妹の身体を白い液体で塗りつぶしていく。

 塗布した白い液体は妹の身体を伝ってポタポタと下へ下へと降りていった。


「…………」


 俺の目から見た限り身体に白濁とした液体(ボディーソープです)がかかっても妹は平然とした様子に見える。


 まぁ、勝負をしている手前この程度の刺激じゃ流石に何の反応もないのは当たり前か。


 さて、次の行程だ。できればこれでお終いにしたいのだが……。


 ──いや、むしろギリギリまで我慢してくれてもいいんだぞ? つーか我慢しろ。


 頭の中からそんな悪魔の囁きが聞こえた──気がした。


「今から泡立てるからな。お前は抵抗するなよ?」

「…………」


 妹は無言で首を縦に振り首肯した。妹からの許可が降りたので俺はお構いなしに身体に触れた。


「へぇ、お前以外と胸があるんだな」

「………………っ」


 腕とか背中とか回りくどい場所はすっ飛ばして。俺は開幕のファーストタッチから全力で妹の胸に触れた。いや、触れたという表現では生ぬるいだろう。誰がどう見ても完全に揉んでいた。しかも完全に指が胸に食い込む感じの揉み方で。


「しっかり泡立てないと汚れも落ちないからな。なんならついでにマッサージもしてやるよ」

「……………っ」


 ピクリと身体を震わせて俺のマッサージに反応する妹。声には出さないが少しだけ呼吸のペースが早くなってきた気がする。


 やはり胸を揉んだ程度じゃ声は出さないか。すべすべな手触りの胸をここで手放すのは名残惜しいが……次はここだ。


 キュッ。


「…………っ!?」


 妹の桜色の部分を指でつまむと強い刺激に驚いたのか妹はより一層身体をフルフルと震わせた。


 コリコリと回したり、グニグニと押し潰したり。たまにキュッとつまんで。そんな風に指でいじると桜色の突起は徐々に固くなりツンと先端をとがらせ始めていた。


「何だ? まさか勝負の最中なのに感じてきたのか? お前って本当にエッチなやつだよな?」

「…………」


 いやいやと、首を横に振って否定する妹。その反応がたまらなく面白くて俺はさらなる責苦を妹に実行した。


 やった後で何だが我ながら大胆な行動に出たなと思う。


 ニュルっと。ボディーソープの滑りを利用した俺の手は腰を伝って妹の桃みたいな尻を強引に掴んだ。


「可愛い形のお尻だな。これは叩き甲斐がありそうだ」


 そして俺は妹に命令を出す。立てよ、と。

 妹は俺の命令に逆らわなかった。


「立ったらそこの壁に手をついて足を開け。言っておくが拒否したらもっと酷い目にあわせるからな」

「…………」


 妹は少し怯えた様子で壁に手をついた。足を開くと尻が突き出されてその形の良さがより一層際立った。


「そういえば確か昨日はお前の方から触らせてきたんだよな? 俺の手を掴んで。触って欲しいんだろ? デリケートな部分に」


 なら望み通りにしてやるよ、と。俺は妹の背後から手を伸ばし尻の割れ目を伝って妹の蕾の上にある『めしべ』の先端に触れた。


「…………ふっ!?」


 軽く触れると妹は口から悩ましい吐息を漏らして必死に声を出すのを我慢していた。


「ふっ、ふー、ふーふー……」


 ボディーソープの泡も手伝って妹の蕾は指に良く馴染んだ。擦って、押して、摘んで。まだ固さの残る若い花弁が自分の指先一つで乱れる様はきっと男なら誰しも興奮するに決まっているだろう。


 ぐちゅぐちゅぐちゅ。

 ハンバーグとは明らかに違ういやらしい肉の音を聞くとあの時の興奮を鮮明に思い出した。そのせいで俺の指はさらに激しさを増していった。


「どうだ。少しは反省したか?」

「ふー、ふー、ふぅー」

「そういえば喋れなかったな。どうだここ強くすると気持ちいいだろ?」

「ひぅっ……っ〜〜〜!!」


 声を出せない妹は声の代わりに足をガクガクと痙攣けいれんさせて俺に快感の絶頂を伝えた。


 何だもう終わりか。案外だらしないな。


「どれ、ちょと顔見せてみろよ」


 壁の方を向いていた小さな頭がこちらを振り返ると緑色の双眸そうぼうはぼんやりと俺の顔を見詰めた。

 熱を帯びたその瞳はわずかに涙で滲んでいた。


 その様子を見て俺は──ふと、興奮で忘れていた妹への思い遣りの心をこの瞬間に思い出した。


 俺、何で妹をイジメてるんだ?

 あれ? これ完全に目的というか趣旨変わってないか?


 俺は妹の非を分からせるはずじゃ?


「……………?」


 戸惑っていると妹は心配そうな目で俺の顔を見つめていた。


 その目が俺にこう訴えている。もう止めちゃうの? もっとしようよ、と。

 妹にそう言われている気がした。

 その熱を帯びた涙目が俺の理性を完膚なきまでに破壊した。


「莉奈、こっちに来い」


 妹を抱き寄せた後に俺は先に座椅子に腰掛け妹を自分の足の上にまたがらせた。


 対面座位になるとボディーソープの泡に彩られた妹の裸が良く見えた。足に密着している股の下からはボディーソープの泡と混じった花の蜜がトロトロと滴り落ちている。


 その姿が堪らなく愛おしいから俺は──


「…………うぷっ」


 妹の唇にキスを──うぷ?


「……ごめんお兄ちゃん。もう限界っ!」


 口元を手で抑えた妹は身をよじり浴室の排水溝の前に座り込んだ。


「ウオエッ。ゲロゲロゲロゲロ……」


 カエルの鳴き声みたいな効果音の後に妹は口から大量の吐瀉物ゲロを吐き出した。


 それは人生で二回目になる妹のゲロを間近で見た瞬間だった。


 場の空気が一瞬で冷え切ったのが嫌でも分かる。もうこの空気で続きは出来ないと。


「……お前、大丈夫か?」


 排水溝の前で四つん這いになっていた妹は口元を拭った後に俺に向かって吠え散らかした。


「大丈夫じゃないよ! 莉奈が途中から目で訴えてたじゃんか! もう胃が気持ち悪いからこの辺りで止めようよって!」

「いや、それはお前の目がもっとして欲しそうだったから」

「それはお兄ちゃんの勘違いだよ!」

「勘違い、だと?」


 ええ、だってあの顔は誰でも勘違いしちゃうだろ。お前完全にメスの顔してたじゃんか。


「ねえ、お兄ちゃん。大事な初体験の思い出がゲロで台無しになった莉奈の気持ち分かる?」

「本番じゃないからセーフってことに……」

「ならないよ! てゆーか何なのあの少女漫画に出てきそうなドS彼氏は! ああいうのはお兄ちゃんのキャラじゃないし。何かSすぎてちょっとキモかった!」

「キモかったってお前」

「あと触り方が下手くそな上に雑! もっと優しさと激しさの緩急つけて触ってよ! 莉奈への愛が全然足りてないから!」

「下手くそで雑……」


 妹のまさかのダメ出しに俺の心は折れかけていた。


「いや、でもお前さっき軽くイッてたよな?」

「何? イッ○Qなら日曜の夜八時から放送だけど?」

「いやそのボケは流石に無理があり過ぎるだろ」

「いやいやイッてないし。ちょっとお腹の下らへんがキュンってしただけだし」

「お、おう。そうか……」


 というか全裸でよくもそんなに怒れるな。ピロートーク下手くそか。


「あの、ところで勝負の方は?」

「何か言った?」

「いえ、何でもありません」


 妹はその後何ごともなかったかの様に黙々とシャワーを浴びて身体についた泡を落とした。


「お兄ちゃん、汚した分の後始末よろしく。莉奈はもう寝るから」

「あっ、はい。お疲れ様でした」

「ホント、マジ最悪なんだけど。お酒なんて二度と飲まないんだから……」


 そう言って妹は風呂場から出て行った。


 残された俺は一人でせっせとゲロの始末をした。


「いやー、懐かしいな。小学生時代にアイツが歌の発表会の時に緊張しすぎて吐いたゲロを掃除したの今でも軽いトラウマなんだよなー。はは……」


 そんな独り言を呟いて掃除を終えて部屋に戻ったら妹は毛布に包まってふて寝していた。


 なんていうか、今回の勝負で俺が学んだ教訓は酒は飲んでも呑まれるなということわざを身をもって知ったということだけだ。

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