お熱いふたり
晴れ時々雨
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私たちが服を着ているのは裸でいることに飽きたからだった。どうせ脱いでしまうしどこへ行く宛もない、そんな理由で服を着なくなってだいぶ経った。洗濯物の量が減るということは洗剤と電気代の節約の他に、取り入れ無し、たたまなくて良し片付けも無しでいい事づくめだったが、人間は飽きると価値観が容易に覆る。
こんな生活をする前、私たちが睦み合うとき始まりは当然脱衣からだった。それから手間を省くようになり、屋内限定ではあるが、いつでもどこでもどちらかが求めればその場でコトを済ます横着ぶりだった。
それはそれで刺激的だった。まるで動物にでもなったような野性味のあるセックス。服の破れ汚れ、脱衣の手間などの心配のない垂れ流しの非日常的な情事は興奮を高めた。飽きるまで続けようと思ったがその時期は遠いと思っていた。
今思うと奇跡的にその期間中は外部からの邪魔が一切入らず、私どもは煮詰まるだけ煮詰まり、それだけその時期を早めたと言えよう。
酷使し続けた肉体と欲望が若干の翳りを見せつつあったある朝のこと、彼女がひとつくしゃみをした。それは二つ三つと続き、慌てた私は浴槽に熱めの湯を張り彼女を浸けた。
風呂に入るのも簡単だった。
湯温が高すぎて私は同行できず彼女の湯上りにぬる湯を足し湯して入ったのにも関わらず、彼女は今度震えだした。これはいかんと体温計を脇に挟ませると高熱と呼ばれる数字が並んでいた。
時間的にまだ午前の診療に間に合うということで急いで通院の支度をした。熱で呆ける彼女に毛布を巻き付け先に手早く服を着る。それから外出に相応しく且つ改まり過ぎない彼女の服を選び、下着を着けなければおかしいと気づいてパンツを穿かせ対のブラジャーをはめてやった。診察向きであろうと考慮した、コットン素材の前開きのワンピースを頭からかぶせ胸のボタンをかける。洗いざらしの髪を整えてやると彼女はふらふらと立ち上がり、今さっきはめてやったブラを直した。
ひと続きの長物を着せてしまったので、彼女は裾をたくし上げ後ろ手で背中に手を回した。
あろうことかその仕草に欲情を覚え、手伝う振りをして後ろからブラジャーに手を差し入れた。そして緩慢に振り返った彼女の唇を吸った。
熱のせいかいつもの流れを思い出したのか、彼女は拒まずに身を任せた。
前を向かせると、まだ閉じ切っていないボタンたちの割れ目から下着姿の彼女の体が見えた。突如、激しいリビドーを感じ彼女に強く口づけた。服で覆われた硬い乳房を揉みしだき、ぎゅっと鷲掴む。彼女が洩らす尋常ではない熱さの吐息が興奮を掻き立て、私は堪らずズボンのジッパーを下ろし既に猛り狂っていたジュニアを引き出すと、彼女を後ろ向きにしてパンツをずらし挿入した。
忘れていた快感が蘇る。私は阿呆ほど腰を振り彼女の熱い体を揺さぶった。その体は、身体中の水分を蒸発させようと温度を上げるが、結び付いた部分から溢れる潤いは音を立てて糸を引き、私を離さなかった。
目の前が白くなるほど彼女の体を堪能し終えたとき、彼女の意識は混濁していた。緊急を察知して救急車を呼ぶ。
医療関係者の素早い処置のおかげで大事には至らなかったとはいえ私の身勝手な欲望の犠牲となった彼女には謝る言葉もないが、その時から私たちに着衣の日常が戻ったのである。
お熱いふたり 晴れ時々雨 @rio11ruiagent
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