地球SOS!

渋谷かな

第1話 地球SOS 1

「これが本当の地球・・・・・・何てきれいなの! 水も緑もある! ウワアアアアアー! すごい! これが本当の地球の姿なんだ!」

 少女は上空から地球を見て美しいと感動していた。

「・・・・・・。」

 しかし疲れた少女は意識を失った。そして空から地上に落ちていく。

ドカーン!

 そして一軒の家の屋根をぶち破いて墜落した。


地球SOS


「な、何じゃこりゃ!?」

 少女は少年の部屋に不時着した。

「空から天女が降ってきた。ラッキー! ・・・・・・違うわい! もう少しズレていれば俺は死んでいたぞ!? それに穴の開いた天井は誰が治すんだ!?」

「アホ! アホ!」

「・・・・・・。」

 天井に穴が開きアホガラスの姿もはっきり見える。 

「イタタタタタタタ。もう朝ごはんの時間?」

 少女が目を覚ました。少し寝ぼけている。

「ウワアアアアアー! 生きてる!?」

 少年は高い所から落ちて生きてる少女に驚いた。

「はあっ!?」

 少女は正気を取り戻した。

「あなた! 今は何年なの!? ここは地球で間違いないの!?」

 血相を変えて鬼気迫る感じで少年に迫る少女。

「ギャアアアアアアー! 今は2021年! ここは地球です! どうか命だけはお助け下さい!」

 少年はすごい力の少女に命乞いをする。

「2021年! やったー! 私、過去の地球にやって来れたんだわ!」

 少女は大喜び。

「過去の地球?」

 少年には意味が分からなかった。

「はい。私は未来からやって来ました。」

 少女は未来の地球からやって来た。

「未来!?」

 少年は話の理解に苦しむ。

「はい。私は3000年の地球からやって来たのです。」

 少女は3000年の未来の地球人だった。

「3000年の地球!?」

「はい。私は地球からのSOSを受けて、滅びようとしている地球を救うために未来からやって来たのです。ロード・トウ・ピース! です。」

 3000年の地球は滅亡しようとしていた。

「ダメだ。話が話が壮大過ぎて頭が回る。ピヨピヨ。」

 少年の弱い頭では少女の話が理解できなかった。

「君はいったい!?」

「私の名前は菜々子。あなたは?」

 少女の名前は菜々子。

「俺はチタマ。青井チタマ。」

 少年の名前は青井チタマ。

「チンタマ?」

「チタマだよ!」

 ショートギャグを入れる。

「菜々子は名字とかないの?」

「名字? 未来には名字なんかありません。あるのはコードネームだけです。」

 未来は現代と違っていた。

「コードネーム? 未来って変わっているんだね。」

 現代人のチタマには文化の違いは理解できなかった。

「名前や呼び方なんて、ただの人や物を識別するためのものです。何でも構いません。未来では毎日生き抜くだけで精一杯ですから。」

「未来って、大変なんだね。」

「はい。そうなんです。」

 菜々子は切実な未来を実感させる。

「う~ん。名字や名前があるって、この世界は平和なんですね。空気も美味しい! 空も青い! アハッ!」

 穴の開いた空から太陽光を浴びる菜々子。

「こ・・・・・・こんな・・・・・・きれいな地球なのに・・・・・・きれいな地球なのに。」

 少女は現代の地球を感じて笑っているかと思えば未来の地球を思い出して涙を零し始めた。

「だ、大丈夫?」

 チタマは少女を心配する。

「はい。大丈夫です。私が現代と未来の地球を守ってみせます!」

 菜々子は燃えていた。


「お兄ちゃん! 何を騒いでるのよ! うるさいわね!」

 そこにチタマの妹がやってくる。

「海!?」

 チタマの妹の青井海。

「これはいったい!? あんた誰よ!? お母さん! お兄ちゃんが部屋を破壊して女の子を連れ込んでる!」

 天井に穴の開いた部屋、菜々子を見た海は言いたい放題である。

「ち、違う!? お兄ちゃんが壊したんじゃない!? このお姉さんが空から降ってきたんだ!?」

 必死に言い訳をするチタマ。

(メモリーチェンジ!)

 菜々子は全身から光を放つ。


「ん? んん? 何だ?」

 光が収まりチタマは目を開ける。

「菜々子お姉ちゃん。お母さんがご飯だって。」

「はい。直ぐに行きます。」

 何事も無かったようにチタマの妹の海と会話が成立している。

「おまけにお兄ちゃんもね。」

「誰がおまけだ!?」

 妹はご飯を告げて去って行った。

「菜々子と海が普通に会話をしている!? いったい何が起こったんだ?」

 不思議に思うチタマ。

「皆さんの記憶を改ざんしました。」

「記憶の改ざん!?」

「はい。未来の科学力であれば、これぐらいはおちゃのこさいさいです。」

 恐るべし! 未来の科学力!

「なんか未来と昭和が混じっている様な?」

「はい。細かいことは気にしません。そういう私のデータなんです! エッヘン!」

 変な所で妙に自信のある菜々子。

「チタマ。あなたの記憶は改ざんしていませんよ。」

 菜々子はチタマの記憶は改ざんしていないと言う。

「え? どうして?」

 チタマには不思議だった。

「だって、あなたは私を受け入れてくれたから。アハッ!」

 チタマは未来の地球人はカッコイイと見惚れた。


「ご飯を頂くのにデビル・スーツでは失礼ですね。」

 菜々子は戦闘員のスーツのようなものを着ている。

「デビル・スーツ? 物騒な名前だな。」

 現代人のチタマは素直に感じたまま言う。

「はい。デビル・スーツは超絶怒涛の高性能の戦闘服みたいなものですから。私のデビル・スーツの正式名称はゴエティア・コード・バエルです。」

 天井から落ちてきても平気な耐久性。記憶を改ざんできる性能。次元を超えるタイムマシンの機能など何でもできる高性能な戦闘服である。

「ゴエティア? 悪魔みたいな名前だ。」

「はい。悪の組織ゴエティア生のデビル・スーツですから。」

「え!? 悪の組織!?」

 菜々子のデビル・スーツは悪の組織が生産したものらしい。

「はい。悪の組織ゴエティアは地球を滅亡させようとする悪い人たちの集まりです。」

「ええー!? ということは菜々子も悪いそいつらの仲間なの!?」

 チタマは身構える。

「元はそうでした。ですが私は何も知らなかったんです! 生きていくためには働かなくてはいけなくて、ゴエティアで働きだしたんですが、仕事の内容が地球の滅亡と知り、とてもブラック企業なので嫌になって逃げだしたんです。

「うわあ、マジ、ブラック。」

 ゴエティアは酷い会社らしい。

「私、元々はゴエティアの戦闘員だったんですが、戦闘戦闘の毎日が嫌で、ある日、地球が、真っ二つになってしまったんです。」

「え!? 地球が真っ二つ!?」

「はい。だから私は地球を滅亡の危機から救うために未来からやって来たのです! エッヘン!」

 菜々子は地球に優しい女の子。

「その時に最新型のデビル・スーツのバエルを盗んで、地球を滅亡から救うために過去の地球に私はやって来たんです!」

 菜々子は地球を救おうと決意して未来から過去にやって来た。

「菜々子って、すごいんだね。」

 平凡に暮らしているチタマと菜々子は温度差がある。


「お兄ちゃん! ご飯! 早くきてよ!」

 その時、全然食卓にやってこないので妹の海の怒鳴り声が木霊する。

「は~い! 今行く!」

 適当に答えるチタマ。

「菜々子。ご飯を食べに・・・・・・ギャアアアアアアー!」

 チタマは菜々子がデビル・スーツを脱いで裸になっている姿を見た。いわゆる一つの読者サービスである。

「な、な、何をやっているんだ!? 服を着ろ!? 服を!?」

 現代人のチタマは見てはいけないモノを見てしまった感じ。

「どうしたんですか? 恥ずかしいんですか?」

 裸でも菜々子は一向に動じない。

「未来ではみんな裸ですよ。アハッ!」

「なにー!? 羨ましいぞ! 未来!」

 チタマは発狂する。

「はい。この体も半分は私の物ではないですし、見ますか?」

 菜々子の体が人間の体が消え、中から機械の内部が見えるようになる。例えると理科の人体模型の機械版である。

「ええー!?」

 菜々子の体は半分人間で半分ロボットだった。

「ど、どうして!? そんな体に!?」

「はい。未来の地球は大気が汚染され過ぎていて普通に呼吸をするだけでも放射能を体内に取り込んでしまい人間の細胞は死んでしまいます。ので喉に放射能除去フィルターをいれたり科学の力で体を機械に変えて人類は生き延びているのです。」

 今、明かされる過酷な3000年の地球の生活。

「未来は好きと愛とか結婚だとかどうなっているんだろう?」

 チタマの素朴な疑問を感じた。

「好きって何ですか?」

「え?」

「愛なんて言葉は3000年の地球には存在しませんよ。」

「ええー!?」

「半分機会の体の私を誰が愛してくれると言うんですか?」

 菜々子の体は半分ロボットだった。

「大変なんだな。未来の地球って。」

 未来の地球の日常生活の大変さを実感するチタマ。

「はい。でもチタマが私の裸を見てあたふたする姿を見て、久しぶりに私って生きてるんだなって感じました。半分機械なので羞恥心とか恥ずかしいとか人間らしい感情を忘れていました。アハッ!」

 前向きな半人半ロボの菜々子。

「何やってんのよ! お兄ちゃん! 遅いから私がお母さんに怒られ・・・・・・ギャアアアアアアー!」

 その時、妹の海がチタマの部屋にやって来た。

「え!?」

「お母さん!? お兄ちゃんが菜々子お姉ちゃんを裸にして手ごめにしようとしている!?」

 絶叫する妹。

「ち、違う!?」

「何が違うのよ! お兄ちゃんの変態!」

「ギャアアアアアアー!」

 チタマは妹に殺されかける。

「過去の地球の生活も大変だ。アハッ!」

 菜々子には新鮮な過去の地球の血の通っている生活風景だった。


「さあ、ご飯を食べに行きましょう。アハッ!」

 菜々子は可愛い私服に着替えていた。

「どこから服が!?」

 チタマには謎であった。

「私の体は服を縮小して首脳してくれるので、直ぐにデビル・スーツでも人の裸でも取り出せて着せ替え出来ます。アハッ!」

 便利な3000年の人間の体。

「え!? あり得ないんだけど。」

「おかしいですね。私の世界ではこれが普通なんですけど。」

 文化の違いを感じ首を傾げ合うチタマと菜々子。


「おおおおおおおおー! これが食べ物ですか! すごい! きれい!」

 食卓に着いてチタマママが作ったご飯を見て菜々子は目を輝かせて喜ぶ。

「ど、どうしたの? 理性を失って。」

 少し引き気味なチタマ。

「だって! 喜ばずにはいられません! おおー! これが伝説の料理というものなのですね!」

「伝説の料理?」

「はい。未来の地球ではご飯やみそ汁はありません。普段、私はエネルギードリンクを飲んでます。半分機械ですから。アハッ!」

 菜々子はエネルギードリンクを飲んで生きてきた。

「でもでもエネルギードリンクにも炭酸やリンゴとかオレンジ味とかあって美味しいように工夫はされていますよ。」

「結構です。俺は普通のご飯が食べたい。」

 チタマは未来の食事は食べたくないと思った。


「美味しい! これがご飯なんですね!」

 菜々子は初めて食べるご飯に感動する。

「そんなに急いで食べなくても・・・・・・。」

 チタマは菜々子の勢いのある食事風景に恐怖を覚える。 

「菜々子お姉ちゃんは大食い大会に出たら優勝できるね。」

「これだけ美味しそうに食べてくれたらおばさんは嬉しいよ。作り甲斐もあるしね。菜々子ちゃん。ご飯をおかわりするかい?」

 チタマママと妹の海は菜々子の食欲に感動する。

「おかわり?」

 未来人の菜々子にはおかわりという言葉の意味が分からなかった。おかわりは未来では死語になっていた。

「ご飯をもう一杯食べるという意味だよ。」

 丁寧にチタマママが説明する。

「なんて素敵な言葉なんでしょう! はい! はい! 私、おかわりします!」

 手を上げて元気におかわりを宣言する菜々子。

「はい。おかわり。どうぞ。」

 気を利かせたチタマママが山盛りご飯を菜々子に差し出す。

「ありがとうございます。それではいただきます! ご飯! 美味しい!」

 菜々子は米粒を顔につけながらすごい勢いでご飯を食べていく。

「まるで何も食べていない子みたいだな。まさか未来の地球には食べ物がないとか言わないよな?」

 チタマが未来の地球の食料問題を考えた。

「はい。そのまさかです。未来の地球は闇に覆われて太陽の光が地上には届かないので、食べ物や植物が育つことはありません。」

「なんですと!? 当たってしまったぜ!?」

 恐るべし! 未来の地球の食糧事情。

「まだエネルギードリンクが飲めればいい方です。普通の地球人は人口に作られた光でエネルギーを充電していますからね。」

「なにそれ? 太陽光発電? 人間の食事は電気の充電なの?」

「いいえ。未来の地球の電気にはウイルスがバラまかれているので電気を自由に使うことはできません。」

「電気にウイルス!? ぶっ飛んでいるな。未来の地球は。」

 もう話についていけないチタマ。


「ごちそうさまでした! チタマママ! とても美味しかったです! アハッ!」

 初めての過去の伝説の料理を食べれて満足な菜々子。

「こちらこそ美味しく食べてくれてありがとう。良かったらデザートも食べるかい?」

「デザート?」

 もちろんデザートやスイーツという言葉も未来では滅亡していた。

「美味しい! このシュークリム! とても甘くて美味しいです! こんな美味しい食べ物があるんですね!」

 菜々子は初めてシュークリームを食べて感動した。

「良かったら俺の分も食べる?」

「いいんですか!? それでは遠慮なくいただきます!」

「痛い!」

 菜々子はチタンの手ごとシュークリームにかぶり付く。

「ワッハッハー!」

 チタマママや海がその光景を見て笑っていた。家族団らんの和やかな雰囲気である。

「私、シュークリーム屋さんをやりたいです!」

「地球の平和はどこへいった?」

「おっと!? あまりの美味しさに忘れていました。アハッ!」

 菜々子は笑って誤魔化す。


ピキーン!


 その時、菜々子は何かを感じ取った。

「この気配は!? デビル・スーツ!?」

 菜々子の表情が笑顔から真剣モードに変わる。

「どうしたの?」

「どうやら私を追って悪の組織ゴエティアの誰かが、この世界にやって来たみたいです!?」

「なんだって!?」

 菜々子を追って未来の世界から悪の組織ゴエティアの戦闘員がやって来たというのだ。


ドドドドドドドドドー!


 その時、地響きのような破壊音が鳴り響く。

「ギャアアアアアアー! なんだ!? なんだ!? 地震か!? それとも戦争でも始まったのか!?」

 ビビるチタマ。

「これはデビル・スーツによる攻撃です! 放っておいたら日本なんか3日で滅んじゃいますよ!」

 恐るべし! デビル・スーツ!

「なんだって!? ・・・・・・俺の人生は短かったな。まだ女の子と手も握ってないし、キスもしてない。結婚もしてなければ、子供もいない。それなのに俺の命は後3日か・・・・・・寂しい人生だった。」

 チタマは死を覚悟した。

「諦めないで下さい! 私が地球を救います!」

 その時、菜々子が立ち上がる。

「そんな!? 相手は化け物だぞ!? 菜々子一人じゃ無理だよ!?」

 チタマはさっきの破壊の衝撃にビビっていた。

「大丈夫です。私も強いですから。アハッ!」

「え?」  

 自信満々の菜々子。

「チェンジ! デビル・スーツ! バエル!」

 菜々子の衣装が可愛い私服から戦闘服のデビル・スーツに変わる。

「な、な、なんだ!? その姿は!?」

「完全武装です。これが真のバエルの姿です。」

 手にはビームライフルとシールド。背中にはリュックサック。リュックサックの上部にビームサーベルが刺さっている。そしてリュックサックの左右にはメガ粒子砲を装備している。

「菜々子、おまえは人間か!?」

「はい。3000年の地球人です。」

 何の違和感もなく普通に答える菜々子。

「ちょっと地球を平和にしてきます。私のシュークリームを食べないで残しておいてくださいね。」

「安心しろ。怖くて食べれません。」 

「はい。良かったです。アハッ!」

 安心した菜々子は笑顔になる。

「菜々子! 行ってきます!」

 菜々子はリュックサックから光を放ちながら空高く飛び立つ。

「こらー! 天井を壊していくな! おまえはサンタクロースか!?」

 菜々子は来た時も出ていく時も家を破壊していく。

「煙突でも作ろうかしら? お父さんに相談しなくっちゃ。」

「吹き抜けがいいね。部屋が明るくなるから。」

 チタマママと海は自宅のリフォームをする気満々であった。

「チタマ。天井の応急処置しておいてね。」

「なんで俺が!?」

 面倒なことはチタマに任されるのであった。


「これが菜々子が夢見た美しい地球か。」

 新たに時を超えて出現したデビル・スーツの女の子が空に浮いて地球を眺めている。

「そこの未確認物体! 無駄な抵抗はやめて! 速やかに投降しろ!」

 そこに自衛隊の戦闘機がやって来た。

「ジャパロボか!? いや、ただの戦闘機だな。」

 少女は微動だにしない。

「女の子です!? 女の子が空を飛んでいます!?」

「バカな!? そんな女の子がいる訳がないだろう! 宇宙人の侵略だ! さっさと迎撃しろ!」

「りょ、了解!」

 戦闘機のパイロットと自衛隊の本部との通信。

「うおおおおおおおー!」

 戦闘機が機関銃で攻撃を開始する。

「アガレス・ソニック・ウェイブ!」

 女の子は超音波を放つ。女の子のデビル・スーツはゴエティア・タイプ・アガレス。

「なに!? 銃弾が止まった!?」

 戦闘機の機関銃の弾が超音波とぶつかり止まり吹き飛ばされる。

「ウワアアアアアー! 操縦不能です!?」

 そして超音波は戦闘機にも当たり、戦闘機を吹き飛ばし地面に衝突させ爆破する。

「遊んでいるのか? この時代の戦闘は?」

 女の子は戦いに緊張感の無さを感じる。


「やめろー! そこのデビル・スーツ!」

 そこに菜々子が光の如く飛んでやってきた。

「くらえ! バエル・メガ粒子砲!」

 菜々子はリュックサックの左右のメガ粒子砲を両腕で抱えるように構え敵のデビル・スーツに打ち込む。

「アガレス・アックス!」

 敵のデビル・スーツは斧で一振りすると菜々子の放ったメガ粒子砲はかき消された。

「なに!? 私のメガ粒子砲がかき消された!? なんていうパワーなの!?」

 菜々子のバエルは光をエネルギー源にした機動型である。しかし敵のデビル・スーツは重装型で機動力はなさそうだがパワーは段違いだった。

「来たな。菜々子。」

「おまえは!? 明日香!?」

 菜々子は自分の追手のデビル・スーツの女の子を知っていた。

「久しぶりだな。菜々子。」

「明日香! どうしてあなたが!?」

「私たちは友達だから、あなたが悪いことをしたら、友達の私があなたを正すのよ!」

 正に連帯責任。

「そんな!? 私は明日香とは戦えないよ! 私たちは友達でしょ! 見て! この美しい地球を! 明日香! 一緒にこの世界を守って地球の滅びを食い止めようよ!」

 菜々子は友達の明日香をスカウトする。

「・・・・・・確かに、確かにこの世界の地球は美しい。水も緑もある青い地球。私も菜々子と一緒に戦いたい。」

 明日香の本音を言う表情は暗い。

「明日香! 一緒に戦いましょう! 二人で地球を救いましょう!」

 菜々子の表情には笑顔が溢れる。

「でも、ダメなの。私の家族がゴエティアに捕らえられて人質になっているの! 救うにはあなたを倒すしかない!」

「そんな!? 酷い! 友達同士で戦わすなんて!?」

 明日香のお父さんやお母さんは悪の組織ゴエティアの人質にされていたのだ。そして裏切り者の菜々子と戦わせるために友達の明日香を選んだのだ。

「私は今も監視されている。悲しいけど、この戦いを終わらせるためには私か、あなたのどちらかが死ぬしかないのよ! アガレス・ソニック・ウェイブ!」

 身を潤ませながらも家族を人質に取られている明日香は攻撃をやめる訳にはいかなかった。

「クッ!?」

 菜々子は超音波を残像を残す高速移動で回避する。

「やめて! 明日香!」

「菜々子! あなた地球を救うんでしょ? なら、私を倒しなさい! そうじゃないと、地球は守れないわよ!」

 明日香は超音波を撃ちまくる。アガレス自体はスピードがないのだろう。それを補うための遠距離攻撃が超音波である。

「何を言っているの? あなた・・・・・・まさか!?」

 超音波を避けながら菜々子は明日香の本心を感じ取る。

「私は死ぬことでしか、お父さんもお母さんも守れないのよ!」

 明日香は死ぬつもりで、この戦場にやって来たのだ。

「そんな!? 無理よ! 私に友達のあなたを殺せというの!?」

「菜々子! あなたは覚悟も無いのにゴエティアを裏切ったというの? それしきのことでは地球なんて救える訳ないじゃない! うおおおおおおおー!」

 明日香が突進してくる。

「ごめん! 明日香!」

 菜々子はビームライフルの引き金を引いた。明日香は避けようとはしない。

「それでいいのよ。菜々子。お願い。この世界を守って。ロード・トウ・ピース。」

 ビームは明日香を貫通する。

ドカーン!

 大爆発が起こり明日香は吹き飛ばされ落ちていく。

「嫌ー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 涙を流す菜々子の叫び声だけが空に響く。

「・・・・・・。」

 自分の行いに恐怖を感じて気分が悪くなっている菜々子。

「みせる・・・・・・絶対に地球を救ってみせる・・・・・・絶対に地球を救って見せるからね。明日香。」

 菜々子の言葉には悲しみがこもっていた。平和への道は平坦ではなかった。


「ああ~アガレス負けちゃったよ。」

「バカな奴だ。勝っても負けても裏切り者の友達の家族は助からないのに。ケッケッケッ。」

 その様子を見ていた黒い影が複数人あった。

「元々、パワーのアガレスでは高機動型のバエルを仕留めることは無理だろう。」

「そういうこと。つまり私たちの出番ってことだ。」

「裏切り者には死を。」

 黒い影たちのターゲットは菜々子である。

「ウァサゴ。おまえに任せる。暗殺は得意だろ。」

「ああ。私に任せておけ。」

 ゴエティア・タイプ・ウァサゴ。声はするが姿は見えない。

「私たちは過去の地球を見学させてもらう。」

 悪の組織ゴエティアから菜々子の刺客たちが送られてきたのであった。

「楽しみだな! 海に行きたい! 海!」

「私はアイスクリームが食べてみたい!」

 実はうかれているゴエティアの刺客たち。

「燥ぐな! 遠足じゃないんだぞ!」

「アモンのケチ。」

 こうして菜々子は悪の組織ゴエティアから狙われることになった。


「美味しい!」

 菜々子はチタマの家に帰ってくるなりシュークリームを食べた。

「だから! おまえ! 出入りする時は玄関から入ってこいよな! せっかく穴を塞いだのに、また天井を修理しないといけないじゃないか!」

 ご苦労なチタマ。

「美味しい・・・・・・シュークリム。」

 それでも菜々子はシュークリムを食べ続ける。

「てめえ! 菜々子! 俺の話を聞いているの・・・・・・うっ!?」

 チタマが菜々子の顔を見ると菜々子は自然に泣いていた。

「美味しい・・・・・・シュークリム。」

 菜々子は本当は甘いのに友達を討った悲しい味にシュークリムが思えた。

「な、泣いているのか!? そんなにシュークリムが美味しいのか!?」

 シュークリムを食べてあまりの美味しさに感動していると勘違いしているチタマ。

「はい。美味しいです。シュークリム。」

「約束通り俺のもやるから食えよ。」

「もちろん、いただきます! アハッ!」

 それでも食欲はある菜々子。

「今度エクレアも食べに行こうか?」

「エクレア? それは新兵器か何かですか?」

 3000年の地球人の菜々子は知らない言葉は武器だと思ってしまう。

「シュークリムの友達かな。」

「美味しそう! 是非! いただきます! アハッ!」

 こうして菜々子はチタマと話すことで元気を取り戻していくのであった。

「私は、絶対にエクレアを守ってみせます!」

「おまえが守りに来たのは地球だろ?」

「そうでしたね。アハッ!」

 菜々子の地球を守る戦いが始まる。

 つづく。

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