『恐怖の大王シリーズ』 その6
やましん(テンパー)
『宣伝効果』
むかしむかし、地球に向かった次官が、現地で、学者、予言者としての活動を始めたころのこと。
まあ、もっとも、宇宙のことでもあり、どのあたりが、丁度その頃なのかは、よくは分からないのだ。
『むかしむかし、あるところに・・・・・』
という、おとぎ話の始まりを告げる決まり文句は、地球の各地にあるものである。(『エス・ヴァル・アインマル・・・』とか、『ワンス・アポン・ア タイム』とか・・・深く訊かないでください、わからないから。)
まさか、これが、遥かな過去、相対性理論も、統一理論も、その先の空間跳躍理論も、当然知り尽くした、ある宇宙旅行者が、おとぎ話の作り方を、地球人に教えたことが始まりだなんて、考える地球人は誰も居ないだろう。
それはともかく、恐怖の大王は、当然、自分とこの内政にも忙しく対処しなければならない。
恐怖の大王は、その名前に反して、自分は非常に寛大な君主である、と、認識していた。
確かに、前王のような残虐性はあまり、無かったのだ。
前王は、口答えした王国民は、すべて即刻死刑にしていたのだが、やがて王国民がほとんどいなくなってしまた、ことがあり、現恐怖の大王は、その後始末にてんやわんやだったからである。
それでも、『泣いて馬謖を斬る』、ことは、無いと・・・かは、はっきりとは、言えないが。
そこで、現在、『親しめる恐怖の大王キャンペーン』中であった。
彼らは、地球人と違って、異様に寿命が長いということを、考慮しても、このキャンペーンが始まって、地球時間でいえば、すでに4万年が経過したのだ。
『大王バッジ』『大王マグカップ』『大王味噌しる』『大王ソング』『大王音頭』『大王交響曲』『大王饅頭』『大王パスタ』『大王エコバッグ』『大王くしだんご』『大王SDRラジオ』『大王腕時計』・・・・
その他、考え付く、あらゆる、キャラクターグッズなどが、巷に溢れていたのだ。
しかし、ある時、意を決した部下の一人が、こう、進言したのだ。
『大王様。あなた様が素晴らしいことは、当然として、申し上げますが、やはり、もう少し、やんわりとしたキャラも、いっしょに混ぜた方が良いのではないかと。やや、高尚過ぎるのではないかと。王国民は、あなた様ほどの、頭脳は持ちませんゆえ。はい。』
『ほう・・・・・たとえば? なんだ。言って見ろ。怒らないから。』
『は!はは! ありがたきかな。では、たとえば、3王女様グッズとか・・・など、いかがかと。』
恐怖の大王の3人の王女は、なかなか美しいことで知られていたが、その、恐ろしさは、大王をも、遥かに凌ぐことも、常識の範囲である。
彼女たちの好物は、王国民のステーキであった。
『ふうん・・・・まあ、じゃあ、やってみたら? 成果が上がれば、さらに、昇進させてやろうぞ。』
『はははははああああ! 重ね重ね、ありがたきお言葉。』
その部下は、新キャンペーンの責任者に抜擢されて、自らの仕事に邁進した。
いわゆる、『3王女グッズ』の登場である。
これは、スタートから、大人気を博した。
3王女様が、空間映像で直にエスコートしてくださる、『最新ナビ観光ソフト』は、とくに、大爆発的に売れたのである。
結果、恐怖の大王のいめーじそのものが、大きく上がったことは、まぎれもない事実だった。
大王の、下手くそな演説よりも、絶段の、大きな効果があったのだから。
しかし、このキャンペーンは、長つづき、しなかった。
理由は、単純で、『恐怖の大魔女さま』で、あるところの、『恐怖の大王』の奥方様が、いたくご機嫌を損ねたからである。
その部下は、可哀そうだが、見せしめにされ、キャンペーンは終結した。
奥方様は、アイドルには、あまり向かなかったからである。
****************
時空間ジャンプを使って地球に到達した、脱走次官は、恐怖の大王のミサイルが、いつ、地球に到達するかを、必死に計算した。
大王の事だから、当初の設定など、意味がない事は明白である。
時空間ジャンプは、費用対コストが、非常によろしくない。
とくに、あのような、大型恒星間ミサイルだと、なおさらそうだ。
それでも、大王ならば、予算無視でどんどん、ミサイルの予定を変更することには、間違いないだろうと思われた。
もしかしたら、『大魔女さま』のお力で、廃案となる可能性もある。
複雑な計算の末、元次官が割り出した数字が、地球で騒動を生むことになるのは、まだまだ、先の話である。
ミサイルは、それでもまだ、飛んでいるのだ。
どんとはれ・ませ~~~
『恐怖の大王シリーズ』 その6 やましん(テンパー) @yamashin-2
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