お茶入れましょうか?

@mi53do

第1話

何でこうなったんだろうか?。私は何度も自問自答してみる。

私は有田圭(ありた けい)去年大学を卒業し、とある会社に就職し事務員として働いていたけど、兎に角ミスが多かった。もちろんミスを減らそうと努力はした。先輩の注意は逐一メモし、目に付くところに張り出していたし、わからないことは人に聞いたり調べたりした。でも何故かミスは減らない。いや、まったく減らないわけでは無いが新しい仕事や知らない人とのやり取りが出来ない。『考えればわかることだろ』と言われるが、それが苦手。毎日『今日はどんなことが起きるのだろうか?』と考えただけでも心は重く、毎朝頭痛と吐き気に襲われた。それでも頑張って仕事に行ったが、体調や精神状態が悪くなると益々ミスが増える。そんな感じでもなんとか3か月ほど働いた頃だった、私は取引先のお偉いさんの電話を受けたのだが、その受け答えでお偉いさんを怒らせてしまった。電話を受け取った時に生憎私一人しかおらず、緊張のあまり言葉がしどろもどろ言葉遣いも上手く行かず、しかも良く分かってないことをその場しのぎで『だと思います』なんて答えてしまい。後日ちょっとした騒ぎになった。まあ、先輩が言うにはそのくらいのことは誰でも最初はあることだから以後気を付けるようにとのことだったが、それ以来私は電話が取れなくなってしまった。電話に出ようとすると手が震え、何かしゃべろうとすると声も震えてしゃべれなくなってしまったのだ。それからなんとかその年度一杯頑張りちょっとだけ、貯金が貯まった年度末の区切りについに仕事を辞めた。


なんかほっとしたし、1年間頑張ったというちょっとした達成感もあって少しの間は好きなアニメを見たりゲームをしたり、お一人様の食事を楽しんだりと、ちょっと自由を謳歌したけど、友達がしっかり仕事をしているのを見聞きすると、急に虚無感に襲われた。

思えば私はいつも人よりどんくさかった、不器用だし、学生の時誘われてコンビニのバイトした時ももたもたしてお客に怒鳴られたり商品の陳列の仕方も上手には出来なかった。そんなことを思い出し気が重くなった。きっと私はこの先何をやっても上手く出来ないんだ。私の気持ちはどんよりと落ち込んだ。


そんな気持ちを私はSNSで知り合った『ピーコタン』に相談というか、お互いの愚痴を語り合った。といってもまだ『ピーコタン』にはリアルではあったことが無かった。それどころか、声さえも聴いたことも無い。文字だけの付き合い。まあそれが程よい距離ということもあったけど。


「で、私って何をやってもダメなやつで、人に迷惑ばかり掛けるような気がするの」

「人はみんな得意なことと苦手なことが有って、ダリアは緊張しやすいのと事務系の仕事が有ってなかったんじゃないかな」

「ありがとうピーコタン、いつかリアルで会いたいよー」

「まあ、そのうちね」

私はちょっとだけ、元気をピーコタンからもらった。ピーコタンの言葉もうれしかったけど、それよりこの世界のどこかに私のことを知ってくれている人がいることが何よりうれしかった。


ちょっとだけ元気になった私は行動に移してみることにした。

次に仕事を探し始めることにしたのだ。

ハロワに行っても思うような仕事が見つからない。どうしても前の仕事をイメージして検索してしまうからかもしれない。

そんなある日仕事紹介サイトで検索をしていると、『資格不用、住み込み』という言葉が目に飛び込んだ。他にもいろいろ書いてあったがそれらは頭に入ってこなかった。

今は実家暮らしの私、兎に角実家を出て何かを変えたかった。実家が嫌ではないけど。

そして、私は応募ボタンをクリックし申し込んだのだった。



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