第24話 宮脇様

「話は受けたまわった。そちらの困窮に寄り添えずに申し訳なかった。すまぬな」


涼香殿の啖呵の後を継いだ男は代官だった。松岡代官所代官、宮脇様だった。俺達は代官所の中に入れられて、宮脇様に事の経緯を包み隠さず申し上げた。


「そなた達の工事許可は私がこの場で与えるとしよう。それで、この喧嘩を引っ込めてはもらえぬか? 涼香殿」


涼香殿が視線で同意を示す。

何故か、既に交渉代表権は涼香殿に渡っているのだが、まあ、あの状況を見れば、それも仕方ないか……


「して、沼田。この工事はまことに完成させられるのであろうな」


宮脇様が俺に向き直り、胆力の効いた表情で、50代くらいのがっちりした体躯から発する太い声で、俺に覚悟を聞いて来た。


「はい、既に専門の金堀衆にも声を掛けて、出来るとの話を貰っております。そして、我ら自身の手で用水路の完成を目指すために周囲の村に既に働きかけて200名の人工にんくを工面しております。


そして、この通り、私は命を賭しております。もしも、この工事が完成できずに終わるようなことがあれば、今度こそ磔の刑に処して頂いて結構です。この覚悟を何卒、お汲み下さい」


死に装束に視線を移す宮脇殿が、


「ふっ、そうか、ならば、もう何も言うまい。思う存分やるがよかろう。しかし、大変な妹御をお持ちだのう。うらやましい限りだ」


と言いながら、隣に控える小役人の顔を見て、


「山縣、今回の件が私のところに廻ってこなかったのは何故か、後ほど申し開きを聞いてやる。心して置け」


小役人は縮こまり平伏していた。

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