第7話 水戸

皆の期待を背負って俺は、水戸藩の出先機関、近くの松岡まで、歩いて2時間程度の道のりを意気揚々と出かけ、事の経緯を話すが、


「何を言っておる。そんな事、出来るはずも無かろう」


松岡の小役人が対応に出てきた。ひょろっとした神経質そうな男で、俺の話を途中で遮って話し出した。


「仮にやったとして、どの程度のコメが出来るようになるというのだ」


だから、それを説明に来たのだろう。ちゃんと最後まで人の話は聞くもんだ。まあ、説明しても、上の空なのは手に取るようにわかる。そもそも、聞こうという態度が無い、薄ら笑ってはなっから小ばかにした態度だった。


かくなる上は、直接、水戸へ行って話すしかあるまい。

俺は水戸まで1日かけて行ったが……同じような反応だ。バカにしたような態度こそないが、中身は一緒だ。役人ってのは……なんで、こうも新しい事をやりたがらないんだ。


ここまで来て、手ぶらでは帰れん!!かくなる上は! 


水戸の廓で休憩だ。

大きな色街だ。城の外堀、千波湖のすぐそばにそれはあった。赤や黄色の提灯が良い感じ。


いやあ、水戸の女子おなごは全然違うな。いや違う。何が違うって、いろいろあるから言えない、迂闊に比較などしようものなら大変な世の中だ。


外から覗くと、ソッと座り、俺に流し目をくれる細面の三咲殿と目が合って微笑み返しをしてくる。よし、決まった、今晩はこの太夫とねんごろになるといたそう。早速、登楼した俺は二階の部屋に案内され、大部屋の衝立で区切られた狭い空間に布団が一式、それが俺達の今夜の愛の巣だ。


三咲太夫に色々お世話されながら俺は考えている。


やはり、この世は、所詮、コネとカオだ。そいつを使って、何とかしようと思う。


強力とは言わないが……ああ、気持ちいい……きょ、強力とはいわない……ああ、それ……言わないが、我が家は……、そもそも、土着……武士であるから……ああ……ああ……親戚が……ああ……城勤めのいとこがあああああ……あした、そ……いつに……いいいい……たのむ……うううう、、、うっ……。

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