第68話 「6.再会」
また3時間後の23時00分。
風が強くなり窓を叩く風の音が激しさを増す。雨が横殴りに振りはじめていた。雨粒には、みぞれが混じっているように見えた。
看護師が待合室の彩花に話しかける。
「奥様。よろしいですか?」
「は、はい」
「手術は、順調です。これから胸を閉じます。あともう少しです。お待ち下さい」
「はい。ありがとうございます……」彩花は涙を流していた。
それから50分後、オペ室の赤い点灯ランプが消えて、ドアが開く。ひとりの男性が近づいてきた。医師だ。
「心臓外科医の
「……」
「上行置換術を行いました。旦那さんは本当によく頑張りましたよ。『手術は、成功です』もう大丈夫です。心配しないで」
「先生、ありがとうございました、ありがとうございました……」彩花は膝を付いて倒れ込んだ。僕と、桃介が駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか?」
彩花さんはしっかりと立ち上がる。
「奥さんも精密検査したほうがよろしかな。」
「いえ、私は、大丈夫です」
彩花は力強く言う。
「あとは心配いらんさかい。あなたも疲れたでしょう。ゆっくり様子を見ましょ。奥さんもね、しっかり休んでくださいね」
駿河先生は、優しく微笑んだのである。時刻は深夜0時00分を回っていた。
ーーー翌朝である。
ベッドに横たわる大知が、目を覚ます。
傍らにはパイプ椅子に座ってまま目を閉じて力尽きた彩花がいた。
大知が起き上がろうとする。
ガサッ
彩花は、ビクリと反応して、目を冷ます。
「だ、大知さん、そのまま!」
大知は、身体を戻した。
「彩花、、、ありがとう……生きているんだね…」
「はい……良かった、ううっ」
彩花は、涙が止まらないのである。
「僕は、僕は…君に説明しないといけないんだ…」
「急ぎませんから。あなたを信じていましたから。そして、ずっと此処に私は居るんたから」
そして、少しずつ大知と彩花は、話し始めるのである。
長い長い別れがあり、また2人の長い長い出会いが始まる。
人生の本質は出会い。
人は人に出会うために生きている。
人生とは、人から優しさをもらいその優しさを返していく営みだ。
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