第21話 「W失踪と情報屋」

 辺りが夕焼け色に染まる夕刻、彩花が探偵事務所に現れた。


 「大知さんは一体どうして3日も、3日も戻らないんでしょうか?私が、私が、悪かったんでしょうか?凛さんは?凛さんは、連絡は取れましたか??」


 「落ち着きましょうね」桃介が即座に、しかし、優しく言う。


 「座りましょう。まあまあ。落ち着きましょう。はい。落ち着いて下さい(僕は、つい語気が荒くなる)」


 「ヨーグルトとプリンどちら食べますか?」




 「コラッ。桃介な、こんな時に呑気にデザート勧めるなよ」




 「いやいや、こんな時こそ、先生、落ち着きましょうね。落ち着いてヨーグルト食べましょう」



 「そっか…まあそうだな。まあ、まあ彩花さん、では、お茶入れますよ。ね?コーヒーは興奮作用ありますしね」





 (落ち着いて)





 彩花、桃介、僕は4人がけソファに3人で座り、相談をした。


 「さっき電話もらってから、凛さんには、連絡は試みましたけど、だめでした。多分、尾行されて情報が漏れたと感づいたでしょうね」


 「僕も凛ちゃんの出勤を。いや、店では葵ちゃん。彼女の出勤がいつか?って大手町のキャバクラに聞きました。そしたら、昨日の夜に凛ちゃんから連絡があって、突然に辞めたそうです。なんかありました?なんて逆に聞かれちゃいましたよ」桃介が頭を掻きながら話す。


 「では、やっぱり一緒に居るのではないですか?」


 「いやぁ、それはわからない」



 「大知さんは連絡やっぱり、取れません」


 「私達も、凛、大知さんが同時に失踪するなんて、想定外でしたから、凛の住所は、調べて居ないんですよ。だから、足がつかめない。ミスかもしれない。申し訳ない」


 「大知さんの○○社に電話したら、3日前から無断欠勤らしくて」


 「でしょうね」


 「どうしたら?」


 「警察に届けは、出せますけど、事件にならない捜査は警察はしないんですよね」

 桃介


 「え?なんで?行方不明じゃないですか?」


 「確かには行方不明として届け出はだせる。しかし、夫婦のうちわめでは?とは思うでしょうね。民事ミンジ不介入ですからね」


 「は?!ミンジフカイニュウ?!」


 「あっ。いや。まあ。そんなニュアンス。いや、言い方が難しいですね」


 「彩花さんには残念なんですけど、何か事故が万が一に起きたりしない限りは、警察は行方不明を探してくれないんですよ」

 桃介が言い直した。


 「えっ、そんな??事故なんて遭ったら困ります。なぜ警察はしっかり捜査してくれないんですか?酷すぎます……(嗚咽を始める)」


 「結局、年間で日本中に、たぶんかなり、行方不明はいますよね。それを捜査していたら、警察官がいくらいても足りないんですよね」


 「探偵はそのために居ますよ」

 桃介が優しく言う。




 彩花は顔を上げて少しとりなおして話す。

 「探して頂けますか??」


 「もちろん、やりますよ。それが私達の仕事です。」木村



 僕らは彩花に段取りを説明した。


 ❶「僕らには知り合いのルートがあり、凛の昼間の仕事場、都内かの自宅を探させること」


 ➋「そこが分かれば自宅を探り、大知がいないか探る」


 ❸「さらには、凛の自宅に大知が居ないならば、凛に私達が直接にアクセスして、大知の居場所を聞く」


 ❹「必要なら大知との関係の確認。浮気なのか本気なのか、とか」


 こんな風に説明して彩花を帰らせる。



 僕らはすかさず「情報屋の謎の男・カトウ」に電話した。カトウと名乗る男は、若く仕事のできて信頼できる筋の男である。


 「プルルル。プルルル。プルルル。プルルル。プルルル」


 コールは暫く続いた。



 俺達は、大塚の街の優しい探偵だ。

 看護師と元教師。

 しかし今は探偵なのである。

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