99.9%為にならない蕪四季投資のすゝめ ~なんで野菜すぐ高騰してしまうん~
いずも
第1話 ニートになりました
彼は呆然と立ち尽くしていた。
かつて毎日足を運んだ仕事現場の変わり果てた姿を見て絶望したのだ。
――彼の名は
社会人五年目。
今の会社に入って五年目。
いや正確には五年目だった。
交友関係は狭く恋人もいない。
趣味という趣味なく、休日はスマホゲームで時間を潰す日々。
ギャンブルに手を出す度胸はなく、パチンコや競馬を「あんなのは駄目な大人がやること」と一蹴するくせに、スマホゲームへの課金は「必要経費だから」と悪びれもせずに毎週魔法のカードを買いに走る。
しかし希少度の高い当たりを引いたところで自慢する友人もいなければ、SNSもアカウントを作るだけ作っておいて放置しているものぐさなため、狭い部屋の一角でほくそ笑むだけで終わってしまう残念な大人である。
現実世界のみならずネット世界でも出不精な性格で、平日は家と会社の往復だけ、休日はスマホでアプリと攻略サイトの往復だけ。
土曜の深夜にコンビニへ出掛けるのが例外的な日課である。
そして課金するための魔法のカードと夜食として某からあげクン、もしくは某ファミチキを購入する。
某セブン? そんなものは存在しない。だって田舎だから。
週替わりで買い物しても店員に顔を覚えられているので「まーた
口では「あーあ、宝くじでも当たって一生遊んで暮らしたいなー」などど言いながらも宝くじは買わない、だから当然当たるはずもないということを自覚しながらも、絶対に努力はしない典型的なダメ人間であ――
「おいナレーション。いくらなんでも好き勝手言い過ぎだろ」
あっはいスイマセン。
ありのままの姿をお伝えしようとして調子に乗りすぎました。
……でも、主人公はダメ人間の方がみんな読んでくれますよ。
「読んでくれても俺の名誉著しく毀損されたら困るんですけど! 程々にね!」
ということで、程々に自己紹介を済ましたところで、これから話す顛末は皆様おわかりでしょうからサクッと済ませてしまいますね。
順調とは言わないまでも、それなりの業績で推移していた小規模の勤め先であったが、昨今の新型ウイルスによる影響は免れなかった。
「ちょっと当社でも『リモートワーク』っての? を推進してみようと思う」
という社長の思いつきにより、何故か彼に白羽の矢が立った。
理由は簡単。
一番若いから、なんか上手いことやってくれそうだから。
そんなこんなで会社には出向かず、自宅で作業する日々が続いた。
勝手がわからず、上司に電話しても「頑張れ」の一言しかもらえず、何より外出自粛によるストレスが彼を蝕んだ。
嘘です。
ここまで読んだ方ならそんなわけねーだろと突っ込んでいただけたことかと思われます。
しかしただでさえ引きこもり気味だった生活が完全な引きこもり生活に突入。
社会との関わりも絶たれてしまったような感覚に襲われ、焦燥感だけが増大していく。
何より恐ろしいのが上司からの進捗確認の連絡すら来ない日々。
アレ?
これはまずいのでは。
もしかして窓際的なポジションに置かれたのでは。
このまま体よくリストラ対象になってしまうのでは?
などと流石の彼も本格的に焦り始める。
一度会社に出向いて上司と直接話しをしなければ。
そう思い立ち、使い古した使い捨ての不織布マスクを付け、約一ヶ月ぶりに出社することと相成った。
――彼は呆然と立ち尽くしていた。
かつて毎日足を運んだ仕事現場の変わり果てた姿を見て絶望したのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます