第28話 艦隊進行

艦隊進行


 コリブリからもたらされた16ミリフィルムは即座に現像され、司令部で上映された。

そのフィルムを見た誰もが蚩尤の姿に畏怖を覚え、聖書にある黙示録を思い出さざるを得なかった。そして、私見として提出されたパイロットの証言「敵は実弾兵器を使用していない」という点は議論の的となった。そして導き出されたのは「敵には工業力がない」ということである。工業力がないからこそ、量産を必要とする実弾を持てない、労働力となる人間をさらっていく、という結論であった。

グランス・フェシアンは思案した。椅子をギシギシ慣らし腕を組み深々とため息をついた。

これからどうすべきか思案をしている間にも着実にFDGは戦場に向けて進行している。

推測に推測を重ねることは危険である。最初の推測が間違っていれば次から次へと間違いを積み重ねることになるからだ。だが、その間違いをグランス・フェシアンはあえて犯した。やけっぱちともいえる行動だが、他に手はないからだ。工業力がないのならば、一度破壊すれば再生はかなうまい、敵の数は減らせる、という判断である。

「敵を砲撃する。グラーフツェッペリンに発令。敵小型飛行物体を撃墜せよ。本艦は射程距離にあの悪魔をとらえ次第全兵力を持って攻撃する」

それはまさにシュナイダーら陸上部隊が待ち望んだ結論であった。

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