第4話

 戦い続きで科学者たちもたぶん疲れてたんだよ。だから武器作らないでメイド作ったんだよ。


 第二次大戦でイタリア軍は武器作りよりも戦地での美味しいパスタ作りに夢中で負けたとかいう伝説あるくらいだし。血は争えない。


「わたしを守るために、ですか?」


 俺の説明を聞いたアニータが、見る見るうちに顔を赤く染めていく。そんな機能まであるんだ! 両の手を頬に当ててオロオロする仕草まで!


 視線をぐるぐるさせたアニータだが、上空の一点に目を留め、


「――空に見える長方形の箱はなんですか?」


 と、遥か北の空に霞んで見えるバカでかいブロック状の物体を指さした。


「え……?」


 その物体――【ブロック】は空にあって当たり前の代物だから、いちいち意識して探すこともしていなかった俺だが、彼女に言われてブロックを見上げ、言葉を失う。


 北には灰色をした山脈が見え、さらにそのずっと先に、しかしそれでも巨大に見えるほどの規模で、長方形をしたブロックが霞んで見えている。あまりにデカすぎて空と同化してるというか、逆に目立たなかったりするんだよな。


 なんともSFチックな壮大さを醸し出しているブロックだが、俺が着目したのはその色合い。


 俺たちがいた世界――もとい地球から見えていたブロックの色は黒。だけど、今見えているブロックは赤い色をしている。


「――あれはブロックって言ってね。俺たちがいた地球では『神様がいる場所』だとかって言われてるものだよ。紀元前からずっとあるみたいだけど、詳しいことは誰も知らないんだよね」


「ブロック、ですね? 綺麗な赤い色……」


 そう、その色が問題だ。地球は宇宙空間にあって、その宇宙の中心に、件のブロックは位置しているんだが、色が違う。


 つまり、あれは地球を内包した宇宙の中心に位置するブロックじゃない。




 別の宇宙のものだ。




 諸説あるが、一つの宇宙には一つのブロックしか存在しないと言われている。


 一つのブロックと結びついた一つの宇宙を【ブロック世界】と呼ぶ。


 これは俄かには信じ難いが、そうしたブロック世界は実は環(わ)になって繋がっていて、【環状世界】を形成しているって説もあったはず。

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