魔物使いの弟子
天利ミツキ
第一部 決起編
第1話 出逢い
その日、村は災厄に襲われた。
ソレは、人を焼き、家屋を倒壊させ、破壊という名の災いを振り撒いている。
そんな中、瓦礫に半身を埋めた一人の少年は薄れ行く意識の中で、その災厄を目の当たりにする。
そう、その姿は―――竜。
◇◇◇◇◇
「……これは、ひどいな」
「そうですね……」
竜の襲撃によって見る影もなくなった村に、二つの人影が現れる。
一方は、青い髪の冒険者風の人間。
もう一方は、この場には似つかわしくないメイド服を着込んだ、見た目は猫耳の獣人族の女性。
二人は、魔物の襲撃があったと聞き、隣の町から現地調査のためにこの村にやって来ていた。
「この惨状だと、生存者は絶望的……かな?」
「そうかもしれませんね。ですが、被害状況を確認するためにも、村内を見て回った方がいいかと」
「じゃあ、二手に分かれよう。もし生存者がいたら保護するということで」
「分かりました」
そうして二人は、集合場所を村の入り口に定めてから分かれた―――。
◇◇◇◇◇
「…………うぅ」
「ん?」
周囲の状況を確認していた青髪の冒険者は、突然聞こえた声に眉をひそめた。
「こっちから聞こえた気がするんだけど……」
そう呟きながら、声のした方へ足を運ぶ。
足を運んだ先に、瓦礫の下敷きになっている子供を発見した。
その子供のそばまで駆け寄り、口元に手をかざすと、まだ息があることが確認出来た。
「早く瓦礫をどかさないと」
そう言って、魔法を発動させ瓦礫を取り除き、子供を救出した。
その子供―少年は、大きな怪我は負わず、意識を失っているだけの様だった。
「なんとか生存者を見つけられて良かった。他にも居てくれたらいいんだけど……」
そう言いながら少年を抱き抱え、まだ生存者が居ないか探すために、被害状況の確認に戻った―――。
◇◇◇◇◇
数時間後、村の入り口で合流した二人は、互いの調査結果を伝えあった。
その結果……。
「生存者は彼だけですか……」
「その様だね」
二人の視線は、冒険者が抱える少年に向けられていた。
彼だけが、この村で唯一の生存者だったのである。
二人は会話を続ける。
「一先ず町に戻ろうか。シオン、ギルドへの報告を頼めるかな?」
「かしこまりました」
そう言ってメイド服の女性―シオンは頷いた。
そうして二人は保護した少年を連れて、町に戻って行った―――。
◇◇◇◇◇
「………………うぅ」
窓から射し込む光の刺激によって、重い瞼を持ち上げる。
強い日差しに一瞬目が眩むけど、徐々に光に慣れてきて目を開けられる様になる。
目を開け、最初に見たのは……知らない天井だった。
そして僕はベッドに横たわっている……らしい。
……どういうこと? 僕はあの時死んだハズじゃ??
自分の置かれている状況に混乱していると、さらに横から声が掛けられる。
「お、ようやくお目覚めか、少年」
声のする方へ目を向けると、そこには二人の見知らぬ人物がいた。
僕がベッドから身を起こし警戒心を露にしていると、先ほど声を掛けた方が話を続ける。
「おっと、そんなに警戒しなくてもいい。ぼく達は怪しい者じゃない。君を助けた者だ。……っと、自己紹介がまだだったね。ぼくはソラ、見ての通り冒険者をしている。こっちはシオン、ぼくの仲間だ」
「シオンです。以後お見知りおきを」
そう言って、青髪の冒険者風の出で立ちのソラさんと、猫耳の生えたメイド服の女性―恐らく獣人族―のシオンさんが、僕に自己紹介してくる。
この状況は後で説明してもらうとして、僕も二人に自己紹介をする。
「アルスです。年齢は十才です。あの……僕は何でここに?」
―――これが僕とソラさんの……否、師匠との出逢いだった―――。
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