外遺跡探索者~異世界に行く気はないのに向こうからやってきた

@hajimari

第1話仲間《パーティー》

 暗くカビ臭い匂いがする石壁の通路、仄かな灯りが人影を写し出した。   



 それは、手にランプを持ち、腰を曲げておそるおそる歩いてくるメガネの少年だった。彼はおよそこの場に似つかわしくない黒い学生服を着て、リュックの上に大きな中華鍋を背負っていた。



「皆、どこにいるんだろう」    



 少年は止まって、手に持った小さな古いランプの残り少ない油をみて不安そうに言った。



「ふぅ 早く皆と合流しないと」  



 そうため息をつきながら一歩足を踏み出した瞬間、 何かを踏んだ感触に足元をランプで照らすと、そこには液体状のものが蠢いていた。



「ひぃ ス......スライムだ......」  



 そして、スライムと呼ばれたものは、少年の足に絡み付いてきた。  

 少年は叫んだ。



「冒険なんていやだーーーー 」    



 僕は、ふきとおる高校二年の17才。   

 祖父母に育てられたこと意外は普通に生きてきた。

 今は、奨学金を得て名門高校に通学し、望みは冒険のしない人生だ。    



 だが、どういうわけか僕は冒険している。  



 こうなった原因は、10年前に遡る。    



 10年前、アイルランドで、ある古い村の教会の建て替え工事中に、地下から異形の神殿が発見されたことに端を発する。



 神殿に入った考古学者たちが、神殿最下層にあった祭壇を見つけ、 その調査中、祭壇にはまっていた宝石らしきものを誤ってはずしてしまう。    



 結果、世界各地に大小さまざまな『外遺跡』が出現した。 



 その遺跡は異形の魔物蠢くダンジョンとなっていたのだった。



 当然、各国政府は、政府関係者のみの調査以外立ち入りを禁じたが、どこにでも馬鹿はいるもので、多すぎる外遺跡を全て管理できない政府を尻目に、あらゆる方法で遺跡に潜り込んでおおいにその好奇心を満たしていた。  



 そして、いつしも馬鹿な人間が時代の扉をこじ開けるのは世の常、 彼らは遺跡内から常識の概念を揺るがす遺物を見つけてきた。      それが『魔法』の遺物である。     



 魔法とは、遺跡内から発せられている『魔力』という未知なるエネルギーを用いることにより、様々な現象を発現させる力。  

 この強大な力の発見、使用法の確立は、世界の軍事、経済、文化に影響することとなった。      



 そこで政府は国策として『探索庁』を創設、探索者エクスプローラーを職業として認め法制度をつくり、人材の確保を行った。  そして、民間探索企業設立に税制を優遇する制度等の導入により、探索企業が増加し、高額な報酬が得られる『探索者』は、人気職業となっていく。   



 その需要に答えるように、探索者を養成する専門学校、『探専』が登場し、増加していった。    



 僕が入った有名校も、有名探専に合併というよりは、吸収され探索者専門学校になってしまった。

 奨学金を受け転校もできない僕は、望まず探索者として、奨学金返済を目指さなくてはならなくなってしまったのだ。  



 そう、そんな僕は、今まさに探索の実技試験ため訪れた外遺跡内で、 スライムに襲われている最中だった。


「このこの! 」  


 体を登ってくるスライムに、持っている中華鍋で殴るも、その柔らかい液体状の体に跳ね返されてしまう。



「もうしょうがない! あれを使うしか......いやだめだ皆が近くにいないと」


「しようがねえなあ、スライム相手に何やってんだ、とおる」  


 と横から男の声がして


「えっ? 太陽か! 助けに来てくれたの......」   


 そんな希望をこめて、声の方を見ると  頭以外スライムに取り込まれている、悲しそうな顔をした少年が横たわっていた。


「ちょ!  太陽! 食べられてるよ!」  


「ダイジョブ、異世界に転生したらチート能力でハーレム作るから......」


「あきらめるな! 何とかするから!」  



 抜け出そうとじたばたしてると、ビュンと空気を切り裂く音がしたと思ったら、切られたスライムが四散し、続けて火球が飛んで、太陽の体にまとわりつくスライムを溶かした。


「君達、何遊んでるのかなあ、なんてね、だいじょうぶ?」    


 

 そう言って歩いてきたのは、1メートルほどの両刃の西洋剣を携えた、制服姿の少女と



「スライムに殺されかけるなんてバカなんじゃない?」    


 

 もう一人、大きな杖を手に持ち、先がとんがった大きなつばの帽子をかぶった、制服姿の小柄な少女だった。



かなめさん、来名くるなさん、助かったよ、ほんとありがとう」    



 そう僕がお礼をいうと、小柄な少女、来名さんは、つかつかと近寄って来て、



「あんた、本当に探索者になる気あるの? そんな望んでこんなところにいるんじゃないって感じならやめなさい、まわりをいつか危険にさらすわ」


「現実はいつも残酷なんだから」  



 そう去り際に小さな声で言った。  

 


「あと太陽、荷物なくしてんのになんで存在してるの」    

  


 と太陽にも続けて言っていた。  

 図星をつかれて、僕はなにも言い返せないまま落ち込んでいると、  



「今日だけとはいえ、同じパーティーの仲間じゃない、気にしないで」  



屈託なく笑いながら、話しかけてきたこの少女は、  

  


 かなめゆうき 17才

   

 このパーティーのリーダー。中性的で美しい顔立ち、ハーフで髪型は金髪ツインテール、大きな碧眼の瞳が特徴、優れた剣の使い手で、僕と同じく『特進クラス』から普通クラスに移った、社交的で明るい性格だが、浮世離れしてる印象。


 

「私達と同じ元特進クラスだから、ゆうきぐらい使えると思ったのに、とんだポンコツね」  



 この辛辣なことを言う少女は、


  

 来名くるな真名 17才


 童顔で、黒髪ショートボブ、切れ長な瞳が特徴、攻撃、回復、補助 全ての魔法を使えるという魔法のエキスパート、人とあまり関わらない為、性格はあまりわからないがとても毒舌。



「おい! 要! おまえちよっとさ! 」  



 そう言って歩いてくる、がっしりした体格の学生服の少年は、

 


 牧鎚まきづち太陽 17才  


 長身で短髪、基本身体能力以外取り立てて何もない荷物持ち、性格は明るく活発、元野球特待生、ただすごいやつ。



「ごめんごめん、助けるの遅れちゃって」    



 要さんが謝ると、太陽は 、



「んなことはどうでもいい! 何で! ビキニアーマーじゃないんだ!  世界観守れよ!」   



 真顔で言った瞬間、来名さんが放った炎に包まれた。  



「あつあつつ! 来名ごめん! お前はスク水しか無理だもんな」   



 そう言って、太陽は再び炎に包まれた。  



 それを見て、やっぱりすごいやつだと僕は思った。    



「で、このあとどうするの、ゆうき、荷物持ちが荷物失ってお荷物になってるんだけど 」


「そうね、まずこの先の、階段前の大広間に行ってその後どうするか決めよう」     



 来名さんに聞かれ要さんは答えた。



「そうねって、すこしぐらいフォローしてくれよ」  



 と、太陽は嘆いた。  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る