アズリル 「プロローグ」

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プロローグ


 時は16世紀後半、世には人々の渦巻く欲望につけ込み悪事を働く悪魔という存在がおり、それを祓う祓魔師ふつましという者達がいた。

 そして、この地ソロモニア王国は5つの区画に分かれている、平地が多く農業の盛んなイスト地方、オアシスを囲む灼熱の砂漠地帯サース地方、そびえ立つ山々沢山の動物が生息しており酪農の盛んなウエス地方、雪の降りしきる極寒の大地ノス地方、そしてその中央に君臨する大都市「王都ダイモン」。


 この物語は真実を追い恐怖を振り払う祓魔師達の冒険譚である。

 

 





 


     「エクシディアボリ」

 

 そう言ってルシカ様は十字架を突き出した。

 

 するとそこには、この世の者とは思えないおぞましい悪魔が姿を表し断末魔と共に消え去った。


 深くお礼を言う女性とその家族、初めて悪魔祓いを目の当たりにしたが、私は、意外と落ち着いている。


「ノイス、帰ったらお昼にしましょうか」


「はいルシカ様」


 私達は、イストサンクトゥス教会の悪魔祓い屋、いわゆる"祓魔師"(ふつまし)である。


 まだ見習いの私は、先輩であるルシカ様に付き指導を受け晴れて1人前の祓魔師となる。

悪魔は憎悪、憤怒、強欲等の感情を強く持つ"女性"にのみ憑く、それは悪魔の子孫を残す事が目的だと言わている、故に女性の前にしか現れず祓魔師も女性しかいないのだ。

教会へ帰る為少し程歩いていると


「もしかして...あんた達...教会の人かい?」


 やけに息の切れた中年くらいの男性が声をかけてきた


「どうかされましたか?」


 気の優しいルシカ様が問うと。

「娘が...」


 祓魔師は、悪魔との接触が多い事から"汚れ"仕事として嫌われる事も多い、なので大抵話しかけられる内容は同じ、故に多くは語らずとも目的は悪魔祓いだろう。


「わかりました、ご案内頂けますか?」

 

 大通りを抜け男性の家に着くとかすれた叫び声と共に悪魔の兆候である低い笑い声がした。

 

 お互いを見合わせ理解した私達に、男性は振り絞るように


「お願いしますどうか娘を助けてください」


 その言葉に少しだけ頷くとルシカ様は聖書と十字架を取り出した。


 中に入ると、椅子に手足を縛られた"少女のような者"がいた

ルシカ様が聖書を押し当て悪魔を引き出す

聖書でも悪魔にとっては千本の針を刺すように、又は灼熱の鉄板を押し付けられるような感覚を味わうのだろう、少女に取り憑いた"悪魔"は苦しみ叫び始める


「汝の名を答えよ」


 1日に2度も悪魔と出会うのは珍しいがここ最近は悪魔による事件等が増えた、これもその一貫だろう、安易に考えていた私達に衝撃が突きつけられた。


「ガァァァ、ガーゴイ...ル」

「‼︎」


 悪魔と言えばサタンやルシファーと言った者が有名だろう、しかしガーゴイルは下級の使い魔、決して人に取り憑けるほどの力はない筈だった。

 

 ルシカ様の表情が少し疑問と焦りが混じったように見えた。


「悪魔ガーゴイルよ、罪なき少女から立ち去りなさい、エクシディアボリ」


 悪魔の名前と神の名の下に祈りを捧げる呪文唱え、十字架を見せる事で悪魔達は浄化され消え去る、要するに強い力を持って悪魔に命令をする、これが私達"教会の祓魔師"が行う悪魔祓いだ。


 何も考えず私達に名前を教えたガーゴイルは少女から薄らと離れた。


「アァァ!クソっ!話が...違う!お助けください!ベリュト様ァァァ!」


「ルシカ様!」


 その場に落ちるように地に膝をついたルシカ様に駆け寄った私は何か嫌な予感がしていた。


 悪魔払いは体力を消耗する、しかし1度や2度で立てなくなるような物ではない、疲労は悪魔の強さ、執念深さに比例するこれだけの疲労、ただのガーゴイルではない事を物語っていた。


「ノイス、すぐに教会に戻り今あったことを報告なさい」


「ですがルシカ様!」


「いいから...早く!」


「...わかりました」


何か嫌な予感を感じるが私にはそれがよくわからなかった。


「司祭様!報告があります!」


なるべく早く教会に帰った私は本来人に憑かないガーゴイルがいたことルシカ様の状態を簡潔に伝え数人の祓魔師に同行してもらい少女の家へと戻ったがそこにルシカ様、住人の姿はなかった。


「誰かいらっしゃいませんか?」


「!?」


部屋の奥へと進んだ私はおびただしい血の跡、男性と少女だったと思われる手足、そしてルシカ様を見た。


「ルシカ様...これは...ウッ‼︎」


私を含めた数人の祓魔師は耐えられず嘔吐し恐怖に怯えた、それを見たルシカ様は口を開いた。


「ニンゲンヨ、我ガ名ハ騎士ベリュト、貴様達ニンゲンヲ"救イ"ニキタ」


 そうして恐怖と困惑で体に力が入らない私達に顔程はある大きく鋭い鎌のような爪が振り下ろされていた。


 


 これは悪魔大戦とアズリルの生まれるちょっと前のおはなし。

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アズリル 「プロローグ」 TM @TM_syousetu

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