第 二 章 とある研究所の業務日報と                ワタクシゴト

第四話 1980年代

 未だ、研究施設名がつけられていない結城将嗣の職場。彼が務めている部門には毎日の作業記録を残すなどの日報を義務付けられてはいないが、まじめな彼は毎日がどれほど忙しく、一日の睡眠時間が三時間に満たなくとも、忘れずそれを書き記していた。これはそんな彼が残した業務日報の一部である。

 彼は一冊、四十頁の記録帳に毎日、一頁程度に収まるように業務日報を書いていた。彼がそれを始めたのは研究施設建設当初の頃からだった。そして、今日、1981年11月13日、金曜日の後十分もたてば日付が変わるその時間に男はその日の作業報告を日報としてまとめていた。

 藤原美鈴に頼まれていた仕事がかなりずれ込み完成が二カ月遅れの今日まで続いていた。明日は土曜日。普通なら、曜日無関係で働く事の多い研究所。

 翌日には彼等、制御開発部門が設計した美鈴達の依頼の装置を動かせると期待していた。だが、美鈴は彼等技師達に土日、しっかりと休暇を取るように命じたのだ。

 一研究員で在りながら、全施設の総代である彼女の言葉に従わない訳には行かず、不満を募らせながら、万年筆を紙の上に滑らせる。

『本日、制御が最も難しいとされる列に並ぶ特殊培養液槽の配管内を流れる液体の品質管理、流速、流量の単一制御、指定槽制御、全体均一制御に成功した。』

『いずれの制御も百分の一誤差単位で運用可能である事を統計で示し、皆に納得させもした。』

『経路内の液体漏れもなく、配管敷設を担当した新谷(にや)によれば、今回使用される予定の液体の腐食と品質管理から考え、五年から、六年に一度は交換しなければならないとの事だ。』

『その作業に大掛かりにならず、彼の考案した区間弁、彼が言うゲート・ヴァルブと言う物を一定の間隔で取り付けたためにその両側を閉じれば、その間の配管を交換可能との事だ。さらに』

 彼がその続きを書こうとした時に、少しばかり、不満を募らせた声が届く。

「将嗣さん・・・、もう日付が変わってしまうといいますのに、まだ、ここにいたのですか・・・」

 呼ばれた男は銜え煙草をしながら、日報を書いていたためにその状態のまま声がした方向へ振り向く。

 男は銜えていた煙草を陶器の灰皿の上に置くと、

「何ようかな、巫君。」

「いつになったら、私の事を神奈と呼んで下さるのかしらね・・・」

「まっ、まあそのうちに・・・」

「ふぅ、明日は私も、将嗣さんもお互いに久しぶりにお休みが合いますのに・・・、明日一日の時間を無駄にしたくありませんのに・・・」

 彼女の云った意味が全く理解できていない将嗣は事務的に

「あと、数行で書き終わる。それまで待ってください。そうしたら、一緒に帰りましょう」

 神奈は彼女が口にした言葉の意味など将嗣が分かってくれるなどとは思っていなかった。彼に言われたとおり、椅子に座り、不貞腐れた表情で、目の前に合った机の彼の為に作った夕食が入っていた弁当箱を軽く指ではじいていた。

 彼女の指に伝わる反応は軽く、中身が空である事に気づく。将嗣は仕事の忙しさで頭がいっぱいになると食事などしない人だと理解していたが故に、空き箱となったそれを知る彼女は心なしか嬉しそうな表情へと変わる。そして、またその表情のまま左腕で頬杖を突き、それを眺めながら弁当箱を右手人差し指で叩く。

 彼女がそのような顔をしている間、将嗣は日報の続きを次のように書き記し、

『培養槽の部分も容易に交換ができるが、こちらは配管と違い衛生管理の上で半年に一回、少なくとも年一で交換した方がよいとの事』

『経路内を濾過区間へ通し循環させているが培養液の総交換頻度は生命保全部門と今後の状況から判断すべし』、万年筆の蓋を閉めるとそれを筆箱にしまい机の引き出しの中へとしまいこんだ。

「おまたせしましたね、ではかえりましょう・・・?何がそんなにうれしいのですか」

「将嗣さんには理解してもらえません事です・・・」

 神奈はおどけた表情で立ち上がると、弁当箱の包みの結ってある処を摘み、それを持って先に彼の居室をでていった。不思議そうな顔を浮かべながら彼女を追う異性の感情に鈍い男。

 彼の日報の内容の殆どは、彼が管理している測定機器が弾き出す数字や制御機器の不具合が無いかの確認などが主だった。実験装置ではないので日々の調整は不要だが、制御回路の点検は怠らなかった。それらの結果が彼の想定内の範囲に収まっている事を日報に書く事が彼を安心させる。

 彼はその検査の際、常に手帳を持ち歩き、それに現状を書き込んでゆく。万年筆の頭で確認しなければいけない物を順次さしながら、漏らさない様に見て行った。彼が手帳に書いた物を仕事終わりに確認し、それを日報にも書いたのだ。

 無用な変化が無い事、それが彼の望むものであった。だが、1982年の一年間で最も日差しの強い時期、将嗣の記す日報の中に一、二位を争うほどの内容があった。それは・・・、日報の題名まで書かれていた。

『1982年8月13日、金曜日』

『しの、シノ、しノ、皆、詩乃・・・、まるで呪いの様だ』

『だれもあの様な事故が起きるとは想定していなかったであろう。勿論私もである』

『それが起きたのはいつも私より早く、培養槽の様子を見に来る生命保全部門の研究者達だった。特に藤原美鈴女史は誰よりも早く培養槽室へ訪ねて来る。私は遠隔用の監視画面でその室内を監視していた。彼女の以外に巫神奈女史と他、四人の研究者達が培養槽に収められている献体の様子を窺っていた。誰も澄んだ紺碧色の液体を収める櫃を制御する装置に触れてはいなかったし、触れた処であのような現象が起きる筈もないが、それは起こってしまったのだ・・・』

 美鈴達は突然の液体槽内の変化に困惑と驚愕し、叫び声を上げた。将嗣達制御監視員がいる中央制御室に設置されている監視画面は映像だけでなく、音声も拾っていた。故に彼女達の悲鳴が、監視員達にも響いていたのだ。何事かと思った将嗣達は彼女達が何に驚き叫び声を上げたのかと画面の中から判断するためにそこを凝視したのだ。将嗣はそれだけではなく、彼女達が叫び声の中に口々にする言葉も含めて、しっかりと画面の中を見ていた。そして、彼も内容の事実を目の辺りにすると驚きを禁じ得なかった。

 彼は所内の中でも群を抜いて冷静な人物だった故、直ぐに対処になりうるかも知れない行動に出たのだ。

 彼は放送拡声器(マイク)をその培養槽室内だけに届くように設定すると生命保全研究員たちへ、「こちら、制御監視部の結城です。I am Yuki at the observation control section!エル・アール・シー培養液を破棄します。ただちに退室してください。I am attention to you, please exit the room now! Because I am going to discharge the LRC solution soon!!」

 彼は早口ではありながらもはっきり聞き取り易い声で拡声器に向かってその言葉を投げた。彼の声を聞いた研究員たちは言葉に従い、直ぐに退出する。将嗣はそれを制御室の監視画面で確認すると仕舞っている扉を遠隔操作で施錠した。(LRC培養液とは献体を液中補完し、生命維持に必要な酸素の供給をその培養液内でも行えるようにした保存液である。LRC=Liquid Respiration Control、液体呼吸制御の略)

「Goenitz please come here and…(ゲーニッツ、直ぐに来てください)」彼は副主任を呼ぶ。ゲーニッツと呼ばれた男は将嗣の処まで近寄る事なく、特定の位置に来ると彼の表情を窺った。

「You know I mean?(わかっているな?)」

「Yeah, Sho(分かっているさ、将)」

「We have to do right now!!!(直ぐにかかりますよ)」

 緊急事態である事を察知しているゲーニッツは所持の云わんとする事を理解しており、懐に何時もしまっている何らかの操作に必要な鍵を取り出し、それを鍵穴に挿した。だが、彼は回さない。同じように将嗣も持っていた鍵を似たような場所に挿すと、

「Count down 3,2,1, turn the key!(数えますよ、3、2、1、まわして下さい)」

 二人が同時に鍵を回すと鍵穴の上の警告灯が点滅し、その男達が立つ中央部分の仕掛け戸が自動で開き梃式取手(レバー)が競り上がっていた。

 出てきたそれを所持は掴み下に引くと同時に、ゲーニッツが彼の手元に合った押鈕(おうちゅう)(押しボタン)三つを順番に力を込める。それにより、培養槽に循環している液体を櫃直前の開閉弁で閉鎖し、その室内に献体が納まっている中の物だけを排出させた。廃液は室内の傾斜に沿って排水溝へと流れゆく。

 外に出された研究員たちは覗き窓から中を確認したくとも、その窓に閉鎖板が降りていて中を見る事叶わず。制御監視室に居るたちだけが中の様子を知る事が出来たのだ。そして、将嗣達は驚く、その中の異変を。夢でも見ていたのでは中と、映像の誤送信なのではと勘違いする事を目の当たりにしていた。

 監視の主任と副、それと三名の同僚を伴い生命保全研究所の培養槽室へと駆け出した。

 生命保全研究棟の培養槽室前に来ると美鈴達が困惑と相当不安げな顔で、駆け付けた将嗣らを見た。

 彼は彼女らから声を掛けられる前に扉の前の緊急閉鎖時にそれを解除する暗証番号を打ち込み、そのあとに磁気式板鍵(カード・キー)を読み取り装置に通した。

 彼の行動後、扉は何の障害もなく正常に開いたのだ。美鈴等研究者も将嗣達制御監査員も、我先にと中へ入ろうとして、扉前で閊えていた。どこからか、生命保全部門の異常を嗅ぎつけた医療部門の数人がだめ押しとばかり現れ、扉の枠に挟まっていた者達は、押し出されるように室内に入り、床へ突っ伏していた。

「いたたたたたたぁ・・・、もう酷いですよ皆さま。少しばかり女性の気遣いをしてほしい物ですわ」と不平をこぼしながら、埃など着いていない白衣を払いながら立ち上がる美鈴。

「すみませんでした。我々もこの目で現場を確かめたかったので・・・」と将嗣が日本語を使う相手に日本語で答えていた。

 その様なやり取りをしている中、室内の様子をいち早く観察していたのは後から来た医療部門の八神皇女、その人だった。そして、彼女は言う、

「何かすごい事になっていると聞いてきたのですが、なんともないですねぇ、おかしいですねぇ・・・、皆詩乃ちゃんになってしまったって噂だったのに・・・」

 美鈴や神奈は部屋から追い出される前に皇女が言った事をその目で、確かに間近で見ていたし、監視映像に嘘が無ければ、将嗣等の制御監視員達も、同等の光景を見ていたはずだ。だが、今見る光景は献体として、培養槽に収められていた人々、藤宮双子姉妹、セレナーディ・レオパルディ、夏姜麗(カ・シュウレン)、ミルチェー・エンリック(Milche Enrick)、ヤァーナ・ラシュラ(Jarna Lashurra)、ルー・シー・レーン(Roux sie Lane)、ミリアノ・フェロー(Milliano Faeroe)のその姿だった。

 しかし、直ぐにその場にいる全ての者等が狐に化かされたような表情でしばらく沈黙した。美奈が見ていた光景が再び変容した。

 献体すべてが再度、詩乃の姿になっていたのだ。

 詩乃と詩音は一卵性の双子で顔形は勿論のこと、容姿全体もが同等だった。彼女等の見分けは話し方と髪型のみ。故に現場を見た者等が詩乃と感じたのはその髪型、頭髪の長さから来るものだ。

「神奈さん、皇女さんもお手伝いお願いいたします」

 原因は分からず仕舞いだが、このような騒動中も櫃に納まっていた献体が目を覚ます事が無かったのは不幸中の幸いなのかもしれない。目覚め、お互いの顔を見れば混乱が起き、収束が容易ではない騒ぎになったであろうからだ。

 生命保全と応用研究班は採取した表皮から塩基配列の解析を直ぐに開始した。制御監視班は原因の究明及び、対策を講じた。そのGroupの一人が直ぐに思い立った事を口にする。それは培養液が個体別ではなく、全体を通じて同じ物を循環させているから、その影響で今回のこの事件が起きたのではという。今回は詩乃の姿だが、このまま、循環路を共通のままの場合、可能性として低くとも今度起きるとしたら、別の誰かだらけになるかも知れないと考えた。

 その様な訳で個体別に培養液を流した方が良いという案をその部門の最年少の要員が答えていた。

 技師達は直ぐにその作業に取り掛かり配管改善を開始した。その間、献体達は櫃に収められたまま、人の手による培養液の交換によって管理される。その期間は大凡二週間。

 その時間の流れで三日くらいして、初めて何名かが基の姿へと気付かない内に戻っていたのだ。全員が詩乃になってから9日後、本物の彼女以外、本来の彼女達へ還っていた。

 美鈴達は試料の塩基解析を迅速に行った。解析速度よりも、本来の配列に戻って行くのが早かったのか、それとも表面上だけ詩乃に変化しただけで、内部は各個人の元々の配列のままだったのか生命保全・応用研究員たちが得た結果、個は個に等しい。

 どの櫃に誰が納まっていたのか、それは誰もが周知。採取したSampleもどの槽の詩乃からの物かはっきりしていた。

 解析した細胞の塩基配列は各個人の物と同一だった。他の献体が詩乃のDNA、RNAと等しい事はなかったという事実だけがのこった。

 だが、誰もが同じ事を考える。それはなぜ、表層だけが詩乃と同じになったのか、何故、塩基配列が個々のまま保たれたのかと。

 その究明は重要だと考えた美鈴は誰にも告げず、ひっそりと彼女が信頼する仲間達だけで進めていこうと決意した事を将嗣は知らない。

 彼はその日の日報の最後に、

『翌週、8月21日、土曜日。ADAM計画の第二段階を応用した移植手術が行われる予定だ。このような事が起きて仕舞い。本当に大丈夫なのだろうか、と心配するが、我々制御部が意見するべきことでもない。故、今は客観的に彼等彼女等の研究を窺うだけです。当日、私が担当する事になるのは献体を収める聖櫃を手術室へ運び、蓋を開けることぐらいしかありません。どのような結果が得られるか、心配ではあるが非常に興味深いことでもある』と行末に日報と関係のない事を加え、それを書き終えた。彼は書類立てに帳面を収めると煙草を吸い始めた。

 そして、巫神奈と夜の密会を待ち合わせの一時間以上過ぎた後に思い出し、彼女を泣かせてしまった事を知っているのは愚痴をこぼされた美鈴だけだった。


『1981年8月21日地、土曜日』

『先週に引き続き、私が生命科学の分野の人間ではなくてもその現象が特殊であると理解させるえない事をこの目に焼き付けてしまいました。それは・・・』

 その日、結城将嗣はLRC培養液で満たされた藤宮詩乃が収められている水槽を医療開発研究部門にある手術室へ運びこみ、臨床手術後、再び、詩乃を培養槽室へ戻す担当になっていた。彼は一体どのような手術が行われているか知らされていないし、彼もそれには興味が無かった。彼は先週の不可思議な事件があったので、慎重に彼女の櫃を取り扱う事。ただ、それだけがその男の頭の中を占拠していた。

 詩乃を術室へ運びこむのは午前十時二十分に予定されている。将嗣はその時刻にぴったり運びこめるように一時間半少し前から、培養槽室の中で準備をしていた。

 各水槽の左隣に置いてある制御端末を操作するためにその場に立つ。左胸の隠し(ポケット)から磁気厚紙(カード)を取り出し、それを読み取り機へ通した。英語表記の出来る小型のSegment LEDが二十六列十行並んでいる表示板に登録者番号を入力しろ『Enter ID#:』と光っており、彼は自身のそれを打ち込み、Enterを叩いた。続いて『Enter Password#:』の指示通り、それも打ち込み、現れた項目列に従って、水槽と配管分断の作業を開始した。

 その作業を終えるのに四十分弱で、時を等しくして、室内のお扉が開かれると同僚が切り離された櫃を運ぶための施設内輸送機を運びこんできた。

 輸送機と水槽の牽引部を繋ぎ固定する。同僚の隣に座り、移動のお願いする将嗣。彼らを乗せた輸送機が培養槽室から完全に出ると大扉は自動で閉鎖され、施錠も同様に行われた。

 医術研究部は医療機器研究部門と同じ建物にあり、手術室もそこにあった。生命保全、生命応用を総じて生命科学研究部門と改名したその研究所と医療研究所は最も離れており、歩くと四、五十分はかかる。今、将嗣が乗っている輸送機は最高時速60を出せるが、安全を考えて15から20に押さえていた。その分だと手術室へは予定の二、三分前には到着できる。

 将嗣は移動している最中に一服しようと煙草を取り出した。それを口にくわえ、火をともそうとした時に、彼はそれを止め、懐に戻す。密閉空間の中の素体に煙草の影響など有り得る筈が無いと分かっていても自身の所為で何かよからぬ変化が起きてはまずかろうと頭に廻った故に将嗣は吸う事を止めたのだ。

 彼のその行動に煙草を吸わない隣の同僚は小さく笑っていた。それを目にした将嗣は鼻の穴を親指でさすり、照れ隠しの様に気分を紛らわす。

 午前十時十五分、彼等は手術室のひとつ前の部屋の搬入口から培養槽を入れ、後は数人がかりで車輪付きのそれを押し、いったん作業着から手術衣に着替え術室裏口から水槽を運んでゆく。将嗣以外、そこを立ち去り、裏口が閉じられた。

 執刀医が声を掛けて来た時に直ぐ、櫃の前面窓を開けられる様に将嗣は磁気式読み取り機に先ほども使用した厚紙(カード)をとうして、登録者、暗証番号を入れると装置を開閉できる状態へと移行させた。

 彼は声が掛かってくる間、培養槽に取り付けている計器類を観察しながら、櫃の中の彼女やLRC液などに異常が無いか監視していた。何らおかしなことが無いそれらに暇を持て余していた将嗣はその暇を解消するのに煙草を吸おうとそれを取り出すが、吸う事など出来る筈もなく手術を見ていた藤原美鈴に叱られ、彼女が持っていたクリップ・ボードで頭を叩かれた後に煙草の箱を元あった場所へとしまいこんだ。それから、また計測機に目をやる事、大凡十五分、第一執刀医の峰野に声をかけられ、将嗣は手元の小さめな梃式取手(レバー)を引く。保存液の三分の一程度が簡易的に取り付けられた配管により、排水溝へと流れていった。

 詩乃が納まっている櫃と彼女全体がはっきりとわかる大きさの窓、その密着部分が緩やかに僅かばかり垂直方向へ移動し、滑らかに上部へ滑り出した。LRC保存液の中の彼女が触れられるくらいまでその大きな窓が移動し、その動作が止まっても、中の彼女は目覚めない。LRC保存液には麻酔に似た睡眠持続剤が成分として含まれていたからだ。麻酔は使用を間違えば、生物を殺す道具になりえる。その麻酔にも似た睡眠持続剤を一般人への投与は危険であるが、彼女達献体にはそうでない事を研究で分かっていたために献体等はずっと研究中水槽の中で眠らされていた。

 執刀医、峰野は新しい医療手袋に交換し、水槽に入ったままの藤宮詩乃の下腹部へ手術刀(サージカリー・ナイフ)を当てた。

 彼の手の動きで一筋、流血がじんわりと水槽の中の色を変えた。彼は素早い動作で、保存液の透明度が血による濁りで落ちる前に彼女から子宮全体を切除し、用意していた生理食塩へ移し替えた。

 開かれた詩乃の下腹部を縫合する事をしないで、手術台に寝かされている女性を優先させるようにその取り出した臓器の移植を第二執刀医、八神皇女と共に開始していた。

 医学知識のない結城将嗣にとって藤宮詩乃の切り開いてしまった部分をそのままにして、名も知らない相手の手術を続行するのは正しいか、どうか知っている訳ではない。だが、彼は客観的感想から、別の医者が詩乃の縫合をしてもいいのではと思っていたし、龍貴と共に長年学生生活を歩んできた彼女がその状態にされている事で気分も少しばかり下向きだった。

 だが、彼のその気分も直ぐに一変し、詩乃の変化に固唾を呑んでしまっていた。不鮮明になりつつある保存液内の彼女の切り裂かれてしまった部分が、やんわりとまるで生きているみたいに閉じて行くではないか。

 未だ、移植手術真最中の名も知らない寝台の上の彼女よりも早く、櫃中の彼女の部分の方が明らかに早く閉じられていった。将嗣は目を疑った。双眸を閉じ、その上から右手の人差指と親指で数回ほどもみほぐし、今まで見ていた現象を振り払おうとした。気が済んだ、彼は再び視界に光を入れ、詩乃を見た。それは夢でも幻でもなく、彼女に手術刀が当てられていた痕跡が分からない状態になっていた。

 眼の前の幻術?現実を否定したかった将嗣は開いていた硝子の蓋を閉める操作をし、密閉されると濁ったLRC保存液を排出させ、新しい物へと交換する作業に入っていた。基もと何もしていなかったように偽装する、それがいま彼の出来る最大の現実逃避法。

 手術が終わるまで誰も、彼の行動に気がつく者はいなかった。

 将嗣にとって見知らぬ女性の施術が終わってから、さて、詩乃の方も縫合しようかと彼の方へ振り向く峰野等。彼が勝手に培養槽を閉めてしまった事に叱りの言葉を上げようとした峰野。だが、声を上げる前に目の前の詩乃を見て言葉を失う。驚かなかったのは唯一、藤原美鈴のみ。

 これは将嗣の知り得ない知識の一つで、女性の卵巣が健康状態でしっかりと二つある場合。片方を切除しても、医学的解明がいまだ先延ばし状態であるが、復活する。しかしながら、子宮全体を切除してしまったらその臓器の再生などまず有り得ない。なら、それを取られてしまった藤宮詩乃はどうなのか・・・、答えは簡単だ。蘇生する事が解っていたからこそ、この手術が実行された。

 今回の臨床実験の目的は二つ。

 一つは移植された側の順応性。

 もう一つは摘出された側の再生速度とその復元度合だ。しかし、その結果を将嗣が知る事はないのだ。

『藤宮詩乃氏との付き合いは長いです。今までその片鱗すら見た事がありませんでした。本日の彼女のあの超常現象は工学系技師である私にとって全く理解しがたいことであり、無かった事にしたい、記憶として留めて置きたくない事だが、このように書いてしまってもいるし、棺桶に入るまで忘れる事の出来ない事であろう。本当に先週に引き続き、厄日続きです』

 結城将嗣はその日の報告の最後にそのような事を書いていた。そして、今日もまた煙草を吸い始めてから、巫神奈戸の約束を思い出し、吸い始めのそれをもみ消し、急いで彼女が待っている場所へと向かったのだ。


『1983年5月31日、火曜日』

『今日は培養槽、内の同僚や他の部署の者達は棺桶や聖櫃と言う名で呼んでいるそれの交換を行った。毎年、雨期が終わった頃に取り換えるという方針を去年の暮れに生命科学部門の所員と話し合っていたし、その時に本日交換する予定も既に決められていた。それが理由で培養槽の生命維持などの制御装置や水槽その物の材質の改良などをその頃より研究し、何とか今日の作業前に準備ができまた。』

『今回一番改良を考えていた部分は特殊溶液の腐食に強い材質』

『次に制御系回路の小型化である。』

『一は私及び、制御監視部の所員達の専攻とは違うので、藤原龍貴氏から、材質工学を研究していて、ここで働いてくれそうな人を探してもらった。』

『二は私を中心に今の部署職員と試行錯誤して、今日まで至る。』

『材質の方は硝子部分に蒼玉硝子(サファイア・ガラス)なる物を使用し金属部分には三相ステンレス合金なる物を使用した。どちらも耐腐食の高い物ではあるが、やんわりと加工が出来る材質ではなく、今回用意できたのは二組だけである。加工技術が向上すれば工程も短縮されよう。もしくは今後、もっと良い物が出来るやもしれませんがね』

『献体を収める匣の大きさは決めて仕舞っていたし、作製作業が開始されてしまえば、容易に変更できない。それが理由で我々、制御監視部門は先行させてしまったそれに合うような形で制御部を組み上げなければならないという制約のもとに開発を進める。配線数の見直しや、制御表示機の縮小。後は制御論理の再構築を行い半導体の集積化、それに関連する基盤の簡易化など、皆それぞれ得意な分野に手分けして設計を練る。私の担当は制御論理の改善部分を担当し、最近やっと理解し始めたC言語による演算命令を組み込む事を決意した。私の部分が難局を極めて仕舞い、同僚たちに申し訳なかったが、昨日で極地動作確認は終え、晴れて今日、培養槽に設置され、制御監視室から今まで、末端でしか行えなかった操作が行えたのだ』

 将嗣はそこで一度、手を止めて満足げに煙草を吸うが、煙を吐き出した頃はその表情も翳りを見せていた。

『我々、制御監視部の造ったものは無事に機能を果たした。それは非常に喜ばしい事だ。だが、私個人、今日、嬉しさ以上に悲しい事実を知ったのだ。否、寧ろ、私よりもタイヨウくん・・・源太陽氏の方がその気持ちは強いだろう。仕事に私情を挟まない様に常に心がけていたが、流石に今日は藤原美鈴氏に苦言を呈してしまいました。今までアダム計画の献体は九名おりましたし、ずっと、四六時中培養槽に浸かっている訳でもなかった。ですが、今日を境にして藤宮詩乃氏、彼女、独りだけとなったのです。更に浸礼期間も今までの何倍も長い。彼女は美鈴氏のよき理解者であり、親友でもあった女性です。その彼女を今後の研究に利用するなど倫理道徳的にどうかと、私は思いますが、彼女、詩乃氏、彼女自身が私達へはっきりと献体になる事を望んでいるのだと言葉に出されてしまったら、いくら、私が美鈴氏へ言葉を述べた処で無意味でした。彼女がそれを望むなら、よき友として彼女のその意思を理解してあげるしかないのでしょう。でも、やはり悲しい事です。二つしか今回出来なかった培養槽は何かあった時の予備にしましょう。彼女があの聖櫃の中で眠り続けると言うなら、その揺籠がもっと心地よい物であるようにさらなる改善をしましょう可能な限り・・・。唯、私はこうやって彼女を分かって上げたつもりでいるのですが、詩乃氏の願いと想いを理解出来ず者も少なからずいるでしょう。それが将来の不安にならないとよいのですが・・・』

 憂い表情を浮かべながら将嗣が今後の彼の云った聖櫃、揺籠開発への待望に意欲を湧かせようと心に誓いながら、大きく吸った煙草の靄を空中に吐きだした頃に煙草臭い彼の居室へ、夕食を持参した巫神奈が姿をいせた。


 それから大凡三ヶ月後、藤原美鈴は第三児出産の為、親元から強制帰国を命じられ、彼女の拓いたインスティテュート・オブ・ウィスタリア・フィールズ・メディカル・リサーチ・アンド・デヴェロップメント、通称ウィスタリアを離れて行く事になってしまった。無論、彼女の番いである藤原龍貴もである。

 最高責任者である彼女が不在になる為にその代役を受け持つ事になったのはその彼女の盟友セレナーディ・レオパルディが施設長として、研究者の傍ら任される事になった。彼女、セレナーディ女史は、一人では立ち回るのも難しいと美鈴に告げ、副、二人を着任させることを望み、一人が制御研究部の結城将嗣で、もう一人は特脳研のグリフィス・ランディール(Griffith Rundeal)だった。

 セレナーディの夫、ゲオルグは三歳になったばかりの娘を妻に任せて龍貴と同じ研究をつづける為に彼と共に日本へ渡る。

 結城将嗣は自分の続けたい、開発したい物に時間を掛けたかった。管理職を任されるという事はそれに当てられる時間を多く持つ事は容易ではない。彼は制御開発研究所の所長も兼ねており、尚更それに掛けられる時は短くなってしまう事は分かり切っていた。だが、彼はセレナーディからの乞いを断りきれず、表情に渋さを浮かび上がらせ、それを承諾した。

 副施設長になった事を利用しその男は自分の部署の要職を誰かに任せようと算段したが誰もそれを引き受けてはくれない。投票形式にしても、集まってしまうのは彼の名前ばかりだった。誰もが自分のしたい研究に勤しみたかった故の結果だ。更に研究者と言う立場でも、年功序列系で一般の大企業と同じ待遇を受けている彼等にとって十分な報酬を受け取っていてそれで満足していた。要職待遇での給与まで望んでいなかった。複合的な理由で結城将嗣は二足ならぬ、三足、四足の草鞋を暫く履いて過ごさなければならない状況が続いてしまう。

 彼のその後、時間が無い中、詩乃に対する直向きな聖櫃の研究と開発は傍にいる女性の嫉妬を募らせるが、それも・・・。

 1986年二月。美鈴らがウィスタリアを離れて三年くらいの時が経っていた。巫神奈も自分の研究で忙しい中、それ以上に忙しい将嗣の面倒を見ていた。

 女性に対して不器用で無愛想で、それほど関心のない更に顔の造りも二枚目ではない彼だが、何故か施設内の異性に人気があった。

 神奈は相当献身的に将嗣に尽くしているのにも拘らず、彼は彼女のその想いになかなか答えようとしなかった。そんなある日、

「将嗣さん、私と婚姻して下さる話。それを話してからもう一年が経ってしまいました・・・、やっぱり、私と一緒になる事は御嫌・・・」

 彼女の表情は不安と悲しさが同居していた。そんな表情を見ないで煙草を吸いながら、帳面に鉛筆で計算式や回路図などを煩雑に書いていた。将嗣が神奈の想いに答えたくなかった訳ではない。彼の頭の中には詩乃の為の培養槽の開発で一杯だった。

 今まで彼女が彼に尽くしてきたことがどれだけ、彼を救ってきたのか彼自身よくわかっていた。しかし、彼は古い考えの男、故に愛だの、恋だのを、好きだのを、自分の口から安易に語りたくなかった。

 頭を掻きながら、帳面と格闘しながら、右手でその場所を見ないで机の引き出しを開け、中に手を突っ込み何かを探り、形から望んだものだと知ると、それを取り出す。将嗣は神奈の方へ顔を向けないまま、手に掴んだ箱を差し出す。

「今はそれを持ってここから出てはくれまいか、神奈君の事を構ってやる余裕、今はないです」

 邪魔だ、とばかり追い払う様に将嗣はその様な言葉を神奈に言う。彼女の両手に収まる位な小包。今日は二人にとって特別な日ではなかった。その受け渡された物の意味が彼女には理解出来ず、彼の言葉だけが彼女の心を傷つけた。泣く事はしなかったが、それを手にした神奈は寥々とした顔で、彼の居室を出て行く。

 不満そうな表情の神奈。下唇を軽く噛みしめ、研究室へ早足で戻る彼女。誰もいないその部屋の彼女に宛がわれた椅子に座り、それと対の机に腕を伸ばすようにうつ伏せになる彼女。

 伸ばした両腕の先にある小さな箱。それをじっと眺め、その中身が何であるか考えた。一瞬、嬉しそうな表情になるが、頭を振り、そんな事、ある筈が無いそう思い直し、また顔が暗くなる。

 不貞腐れた顔で、その箱の紐を解き、包装紙に張り付いた粘着帯(テープ)を剥がし、綺麗にその紙を畳んでから中身を確認した。

 箱のふたを開けると一番上には四つ折りの小さな紙が入っており、

『今年の十月に結婚しよう』と単純で、何の飾りもない言葉が添えられていた。

 神奈はその様な素っ気ない言葉だけで涙した。悲しみじゃない方を。彼女は見ずに手紙の下に何が有るのか悟る。それは婚約指輪。

「ばか・・・、本当に口下手なのですから・・・」と彼女は呟き、涙を流したまま、その指輪を胸元で握りしめた。


 1986年、十月上旬。結城将嗣は同僚らと共に第二世代の聖櫃を完成させた。第一世代目の改作、藤宮詩乃のみに使用されたそれから約三年の月日を経てその揺籠が形になった。培養槽は強化ガラスと硬質ガラスの真空二重構造で傾斜式台座に乗っており、底面に制御装置が取り付けられ、上部には保存液循環用の配管が設けられていた。

 初代の物に比べて、制御部は二回り弱の縮小し、献体保存部はその分容積を上げ、眠り続ける詩乃に分かる筈もないが中の人物が窮屈な思いをさせない様に考慮した。

 耐久年数は少なくても十年、大事に使えば十五年、二十年は保守要らずに済むだろう。聖櫃内の汚れも保存液循環の際、定期的に硝子内面の掃除をする小型機械を投入する事で清潔さを保てるようになっていた。

 将嗣は詩乃がそれに移され、何の問題もなく機能した事に他の同僚や関係者達と一緒に満足な笑みを漏らす。そして、その時、彼女が彼に微笑んでくれたような気がして、彼は少し照れてもいた。

 ほとんどその様な顔を他人に見せる事のない将嗣。その時の彼の表情を神奈が見たら何を思ったのだろうか?しかし、その場に彼女はいなかった。神奈は将嗣よりも先に教会で結婚式の準備をし、彼の来るのを今か、今かと待っていたからだ。

 結果が分かると、盛大な式を挙げたくなかった彼は招待状を手渡していた者等にだけ声を掛け、そそくさと研究所を後にした。

 挙式、記念日などを忘れっぽい彼が何とか、今日この日を記憶に留めようと、結婚式と彼女の誕生日を一緒にした。

 将嗣と神奈が交際するようになって、五年の歳月が流れていた。言葉にする事はなかったがその間、自身の世話を惜しみなく焼いてくれていた事に深く感謝していた。これを境にもっと彼女の事を理解してあげようと、彼女を幸せにしたいと懸命に彼は心に誓う。

 神無月、神が居ない月だけに、希望だけは持ち続けて欲しいという意味も込めて、彼はその意味を持つ彼女の誕生石、パライバトルマリンが埋め込まれた指輪をその式の中で彼女へと贈った。

 当時、トルマリンでその種の知名度は低く、知る者は多くなかったはず。鉱石の中で最も希少価値が高いらしい薄藍色、ネオンブルーの輝きを持つ、小ぶりのそれが埋め込まれた輪を将嗣自身の手で神奈の左手薬指に通す。彼女は今この瞬間が夢でないようにと、現実であるようにと指輪の後の誓いの口付の時に彼を強く求め、そして、嬉しさのあまり涙していた。

 招待客の中にはまだ、生まれたばかりの幼子を連れた藤原夫妻、柏木夫妻や藤宮夫妻がそこにいた。

 その招かれた朋友等も自分達の事のように喜び、将嗣と神奈を祝福する。

 結城の氏に嫁いだ巫神奈はその日より、結城神奈となった。そして、彼女等の幸せは本当に訪れるのだろうか?そしていつまで続くのだろう・・・。


 それは二人が婚前の頃から神奈が疑問を持っていたことがある。彼女は正式に籍を入れる前から将嗣の子供を早く設け様と必死だった、彼がそれに気がつく事はなかったが。彼と閨をともにする事は両手、両足の指では納まり切らない程、及んだし、避妊具など使用した事は一度もなかった。だが、結果はどうだろう?一度も命中する事が無かった。妊娠の片鱗すらも彼女は感じる事が出来ないまま、日々を過ごしていた。

 彼女は彼と結婚したことを理由に彼を言葉巧みに誘い出し、健康診断の名のもとに彼の精密検査を決行したのだ。そして、彼女の得た物は彼の精子は存在しても、その中に彼の遺伝子情報が見事に欠落しているという不可思議な事実だった。

 神奈はどうしても、将嗣の子供が欲しかった。彼女が導き出した答え、それは彼の体細胞を彼女が研究しているADAMの持つ特異な性質を用いて精子に埋め込み、それを自身の体内に送る事。だが、それには彼女の狂気が孕んでいた。そもそも、将嗣、彼がそのような形で二人の間に子を設け様とする神奈の行動など気がつく筈もないし、彼女のその狂気がどのような意味なのか彼が知るのも二卵性双生児が生まれてから、数年後の事だ。


 1987年三月三日、将嗣と神奈の間に二人の子供が誕生した。一卵性双生児ではなく、二卵性の男女。男の子の方が先に分娩されたためにその子が兄となり、女の子が妹となった。二人の子の名付け親は娘が将嗣、息子は神奈が考え、将臣、弥生の名を兄弟は授かった。二人の子の名前に深い理由はない。三月生まれの意味の娘と夫の名前の一部を継承させただけだった。

 将嗣は何の疑いもなく、その子らが自身と神奈が番うことで生まれたのだと思っていた。真実は彼が思うところとは遠くかけ離れていた。クローニングに近い形で生まれてきた子供達だが、クローンともまた異なり、十年以上も先になってわかることだが確かに、将臣も弥生も父と母の塩基配列は受け継いでいて、どちらか一方の複製という訳ではない。それではいったい弥生と将臣の何が普通の子供達、人間と違うのか?それは・・・。

 1988年7月、ウィスタリア研の医療部門の半分を日本に移すためにその中の日本人研究者がこの月に国元へ帰省していた。結城夫妻も八神皇女に誘われ、日本へ帰ることにした。実際、将嗣の方は龍貴とゲオルグに日本での仕事を頼まれ戻ることにしたのだが、そのことは妻へは語らなかった。

 自身の役職の後任として、ゲーニッツを着かせた。

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