CRoSs☤MiND ~ 継がれし意志 ~ 第 四 部 結城家 編
DAN
第 一 章 関わり
第一話 結城兄妹の両親
先ず初めに、物語を進めて行く前に結城家の事、結城将臣と結城弥生の両親の事をほんの少しだけ語っておこう。
その双子の父親の名前は結城将嗣。その姓を受け継ぎし者は古き名家で在り、歴史の文献にもなぞらえる事が出来る。出自は平安末期からで、下総を統括していた結城朝光の血脈の者だった。
さらにその源流をたどれば結城将嗣なる人物と藤原龍貴なる男の祖は同じ処に行き着く。その二人に当世の交わり有れど、お互いがお互いの発祥の源が等しい事、知る由もない。千と数年の時を経立て出会う二つの姓それには如何様の意味もなく、各々がその真実を知る必要はなく、何らかしらの縁があれど只、当人同士、認め合う無二の朋であったという事実が残ればそれでよいだけだ。
将嗣と龍貴の邂逅は二人が十歳、敗戦後の学校制度変遷が徐々に定着しつつあった1961年の事であった。
当時、三戸特別区に一家で在住していた結城家。方や藤原家の長、洸大は三戸の今後の発展を見越して、その場所へ渡り新たな事業を始めようとしていた。その親に付随して、息子龍貴も三戸へと足をふみいる事になった。
資産家ではあるがまだ、未開の土地で無名である藤原家の子息が夏の終わりごろに小学校へ転入してきたとも騒がれることなど有る筈が無い。
その時に初めて友達となったのが結城将嗣であり、死が二人を別つまで朋であり続けた事は記すまでもない。
ただ、二人とも難点があり、お互い真面目過ぎた。己の持つ良さを表現する事が得意ではなかった。二人の間に柏木司なる人物が存在しなかったら、その仲も遠く続く事もありえなく、周囲からは堅物という偏見で二人の良さを知られず儘、倦厭されていただろう。だが、事実その三人の輪を中心に男女関係なく友人の輪が広がっていた。
結城神奈、旧姓は巫。その名の出自は不明、既存の同音カンナギとは別の系譜であり、先祖伝来の生業は公的に秘匿されていた。神奈はその巫家の二男二女の次女に当たる。
将嗣と神奈が初めて顔を合わせる事になったのは藤原美鈴の手によって、始められようとした研究計画の招聘でシンガポールに訪れた時であった1976年夏の事である。今まで日本から出た事のない彼女にとって未開の地、シンガポール。彼女は空港から出るや否や、迷子になってしまう。英語少々出来る程度で、現地語など全く無知な神奈は、街中でおろおろし、どうしようもなく困っている所に研究に必要な物資の買い出しに回っていた将嗣が偶然通りかかったのだ。
当惑している神奈に声を掛け、彼と同じ施設で働く事を知ると彼女を連れ、ウィスタリア・フィールズと後に名の着く場所へと向かった。
以降、神奈は研究を続けるうちに、将嗣に惹かれて行く。異性に無頓着な将嗣へ、告白したのも彼女の方からだった。
付き合う初期の頃、将嗣が神奈に向ける気持ちに好きや愛という感情は無いに等しかったようだが、日々、月々、年々を重ねる度に彼も神奈を心から愛するようになった。
二人が婚姻届を出したのは1984年、将嗣36、神奈33。その三年後の1987年の三月に二卵性双生児の将臣と弥生を設けたのだ。だがそれは・・・。
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