クズ

 ~宇佐美対穴山戦15分前~



 深夜の暗い人気のない夜道、10人の集団が大きなビルの工事現場に入る。

 その中の一人の俺の名前は横田、しがない武田家の一般人だ。


 別になりたくてなったわけではない、ただ周りの連中に流されて入った、ただそれだけの事だ、俺は別にクラス内の人気者でもないが昔から続け黒帯まで到達できた空手、それに組み合わせたシックに目を付けられ入ることができた。


 武田家にもいろんな奴がいる、基本いい奴らではないが、武田家のやつらは金をクラスから徴収すること以外は悪いことをしない奴らだって存在することを皆さんにはぜひわかってほしいものだ、俺までいじめっ子と思われるのは癪だ。


 それにしても俺のクラス4組の幹部、穴山は嫌なやつだ、気に入らない奴らがいるとすぐに暴力、気に入った女にはすぐに強引なナンパ、課題も適当な頭のいい奴に丸投げときた、武田家の力を使いやりたい放題、素晴らしいほどのクズっぷりだ。

 今日はその穴山のお誘いでレイプショーだそうだ、穴山の人間性は不快極まりなくいきたくもないがこのお誘いを断り穴山の勘気を被るのは御免だ、仕方なくほかに誘われた9人の武田家連中と計10人で仲良く呼ばれた場所に向かっている。

 目的地に連れ明かりがなくなりどんどん人の目もなくなっていく、相当奥でやっているのだろう、街路からも遠のき明かりも少なく暗くなり、光源は月明かり以外にない状態だ。


「楽しみだなぁ、すげぇ美人らしいぜ」


「できれば胸もでかいといいなぁ」


 前にいるほかの武田家の奴らが汚い会話を弾ませる。

 こんなところでガヤガヤと・・・全く下品な奴らだな、こいつらの放つ品性のなさは野生動物のそれ。俺はこいつらとは違う、勉強だってまともにしてきたし正直この中なら一番強いのは俺だろう、昔から習ってきた俺の武術と最近手に入れたばかりのこいつら力では天と地の差がある。

 クズどもが、今のうちに調子に乗っておくんだな、社会に出たら勝つのは俺だ。


「なんじゃあんまり、あんま乗り気じゃねえのか?」


 やれやれと前の奴らを見下していると急に横から髭を生やしサングラスをし帽子をかぶったぼろぼろの汚れた服をきた恰好の男が肩を組み顔を近づけてくる。


「なんだよ、あんた、この工事現場に住んでいるホームレスか?」


「そうじゃよぉ、彼らとお祭りでもするのかの?」


「そうだが、あんたには関係のないことだ、さっさと失せな」


 グイッ


 組まれた腕を引きはがしその男の胸を押す。

 押された後男は気持ちの悪い笑みを浮かべ、ポケットから何かを取り出し指にはめる。

 何だこのジジイ・・・


「そのお祭り俺も混ぜてくれよ!」


「!?」


 男は声を出したと思った瞬間飛び出し気づいたときには俺の懐に潜り込んでいた。


 ボゴォッッ


 鋭い突きが俺の油断していたみぞおちに入る。


「がぁっ・・・」


 急所への攻撃に膝をつく、鈍い音が鳴ったというのに誰も俺が攻撃されたことに気づいていない。

 こいつら自分たちのしゃべりに夢中になってきづいてないのか・・・馬鹿どもが・・・

 それと何だこのジジイ・・・いや違うこいつはジジイじゃない、間違いなく変装している、こんなジジイにあんなキレのいいパンチが出せるわけがない!


「おい、敵だ・・・」


 激痛が走る中で声を振り絞り前の武田家の奴に声をかける。


「ん、なん———————————」


 ドガァッ


 前にいた武田家の奴は先ほどの老人に変装している男に一瞬で倒される。

 振り向いたとたんに顎への的確な一撃、そのたった一撃で前の奴は意識を失ってしまった。


 老人に変装している男は次々と一撃で前の武田家連中を倒していく。


 バゴォッッ


「がぁっ!」


 バギィッッ


「ぐぁっ!」


 一人、また一人と倒されのんきに雑談していた声はもうどこからも聞こえなくなった。

 強い・・・圧倒的だ、夜道で奇襲近接戦闘タイプにはこれとない環境だ、まず間違いなく近距離戦特化のペーシェントなんだろうが、いくら近接戦闘特化だとしても一撃で人が倒れるかよ普通・・・

 


「お前・・・ここまでの力があってなんでこんなことするんだ・・・」


「まだ、意識があるやつがいたのか、なんで・・・か、ただの気晴らしに丁度いいからかな、一般人を殴っても気持ち良くない、でもお前らクズならぶちのめしても何の罪悪感もわかないからな」


「クズ?俺はちがっ—————」


「違わない、お前こいつらのことを見下しているんだろうが所詮同じ穴の貉、どんぐりの背比べ、俺からしたら同じクズだ」


「この俺がこいつらと同じだと・・・?」


「そうさ、お前どうせ俺はこんな活動には興味ない、みたいな顔して結局嫌々ついてきてんじゃねえか、見下して偉くなったつもりなんだろうがそれじゃあ結局こいつらとなんも変わらないただのクズさ」


 そんなはずがない俺は・・・!

 男はゆっくりと近づいて手を振り上げる。


「お前は誰なんだ!お前は違うのか!」


 声を荒げその男の顔を凝視するとサングラスの中の瞳が透けて映る。


「俺も同じさ、クズ、お前らと同じな」


 こいつは・・・一体・・・


 ガンッッッ


 脳天に刺さった一撃は俺に考えさせる間もなく意識を奪っていった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る