立花唯の願い
私がペーシェントになったのは10歳のころだった、遊んでたブロックを何個も操り大きな城を完成させたのが始まりだ。その時はわからなかったけど何個も念力で操るのは至難の業で、念力の才能があると言われとてもうれしかった。最初から強力な念力として剣聖の孫とも言うことで家族は周辺の人間は私のシックをとても喜んだ、特に父親は大したペーシェントになれなかったのでとても喜んでいたのを覚えている。次元流に入門したのも君は最強の人間になれると言われたからだ。でもそれは私の悪夢の始まりでもあった。
少しづつ大人になっていくにつれ、私はそのシックの強さで有名になり【天照】なんて異名がつくほどになった、でもそれが私にとってはとてつもないプレッシャーになっていたのは誰も気づいてはくれない。どんな時でもみんなの望む私でいなければいけなかった。美人で強くて賢い人間に特にシックだけは誰にも負けられない、そんな気持ちがいつも心の奥底にある。学園に入る時も武田を凌ぐ存在になれと父親が言ってきた。きっと父親は私に次元流の顔になってほしかったのだ、自分がなれなかったものに。
来る日も来る日もろくに友達も作れず、練習ばかり、女の子らしいことも何一つやれなかった。自分を隠し、仮面をかぶり生きていくような人生。私も大きな声でやめたいと言えばやめれたかも知れない、でもそれに気づいたときにはもうやめられないところまで来ていた。
その中で井上統也は唯一の友達でいてくれた。すぐに私を肯定してくれるし、相談にも本気で乗ってくれた。幼馴染で同じ次元流の彼が私の心を支えてくれていた。でも統也にはこの一番の悩みは打ち出せなかった。なぜなら彼も私に期待している一人なのだから。
学園にはいり、親から離れ少しは楽になったと思えば、結局見たことも聞いたこともない無名の男に負けてしまった。
一体負ける私に何の意味があるのだろう、シックでの勝負でこそなかったが、みんなの前で大敗北をさらしてしまった、私はみんなのあこがれで完璧な人間でいなければいけないのに。負けてしまったことは私の心を今も引き裂いている。結局統也ともあの後きまづくて互いに避けあったままだ。
布団の中にうずくまって負けたときの自分の判断を悔やむ。次もう一回やったら絶対勝てる、絶対に見切って一本取ってやる。
「なんなの、あいつ」
私を負かした真田の顔が脳裏に浮かぶ。
それもこれも全部あいつのせいだ。昔の自分に似てるなんて嘘に決まっている、年だって二歳しかかわらないはずなのに自分は君の二倍生きてますみたいな顔して経験則みたいなこと言って、あ~ムカつく~。そんなことを思いながら今日一日中真田のことを考えている気がする。
トントンとドアのノックが鳴る。
「お嬢、学校のお時間です」
統也の声だ、昨日のこと謝らなきゃいけないのに、変なプライドが邪魔してごめんの一言がのどに詰まる。
「生徒会の仕事があるので早めに行かせていただきます...」
数秒して何も返答をしないと去っていく音が聞こえる。私は何をやっているんだろう。
精神がいくら疲れ病んでいたとしても、試合に負けたとしても、まだ私はみんなの期待を背負って生きている以上は毎日しっかり学校にも通わなければいけない。
重い腰を上げ、ギターケースを背負い一人で遅刻時間ギリギリでつくように学校を目指す、今は誰にも会いたくない。
校門まで目の前の曲がりまできたところで、関西弁を使う変な男が立っている。
「遅いでぇ唯ちゃん、どんだけまたせんねん」
気持ち悪いほどになれなれしかったので無視して進んだ。
「ちょいちょいちょっと待ちや!ほんまになめてんなぁ」
こういうことは一度や二度のことではない異名が付くほど有名になってから変なやつが絡んでくることは日常茶飯事だ。
「何?ナンパならお断りだけど」
「ご名答ナンパや、武田家にはいってもらうっていうな」
何度もこういう馬鹿の相手をしてきた。毎回自信だけはある馬鹿、そして毎回一瞬痛めつけただけで許しを請い逃げていくものばかり。
「わしは四天の一人馬場っちゅうもんや、昨日はうちの真壁ボコってくれたらしいのぉ」
「御託はいいからさっさとしなよ」
ため息をつき、強く睨む。
「おおこわ、わしは真壁ほどやさしくないから歯向かうんなら覚悟しや」
ギターケースの中身の木刀を念力で取り出す。対する馬場は腰にぶら下げていた刀を抜く。
「正気・・・?」
思わずかたずを飲む。最初は模造刀のようなものに見えたが違う、あの鋭い光、重厚感、あれは真剣だ、この男本気で殺る気だ。
「あんたどうやら一撃目に弱いらしいなぁ」
馬場が発した言葉が脳裏に昨日の敗戦を浮かばせる、初太刀ですべてを終わらせられた忌々しい記憶、なぜあいつがそのことを知っているのだろうか。しかしそんなものは一瞬で片のつく戦いでは関係のないこ、落ち着くんだ私。
「少し眉間が動いた、バレバレやな」
いつの間にか顔に出してしまったようだ、この男いちいち言葉が癇に障る。私は深く息を吸い落ち着いた後ギターケースから出た木刀を宙に浮かせ後すぐ射出する。
「あんたこそ挑んだからには骨折くらいは覚悟しなよ」
手を振りだせる全力の速度で木刀を射出する。
「わしがこの学園でなんて言われてるか知っとるか?」
ジャキンッッ
刀が風邪を着る音と共に木刀が斬られ弾かれる。
「【不死身の馬場】や!!」
馬場が叫ぶと、唐突に手にもつ剣が燃える。馬場はそれを大振りに振るうと炎は木刀を飲み込み、ボゴォォォという音ともに一瞬で灰にした。
「木はよく燃えるのお!」
その炎は私までも灰にしようとする勢いで迫ってきた。
「ほらほら燃えちまうでえ!!」
バリアでその火炎に応戦する。
この炎対して強くない・・・?こいつはまだ奥の手を隠し持っている、不死身の馬場と言われる何かが、だけどそんなもの私の無数の刀の前では無駄、この炎が切れた瞬間に360度すべての方向から剣を食らわせてその思い上がりごとぶっ叩いてやる。
しかし私の安易な策は一瞬で崩れる。
ガバッ
「ッッ!?」
「油断大敵やでぇ」
後ろから急に体格のでかい男がすごい速度で襲ってきた、男は息を吸えなくするようにハンカチで私の口をふさぐ。何とか手をどかそうと暴れるが全く逃げることができない。
「ぐっ・・・」
しまった馬場に集中しすぎて背後から来るこの男に気が付かなかった。それにこの男すごい力だ、この力は近接系のシックをつかって身体を向上しているのがわかる。クソ、最悪だ。
意識が遠のいていくのがわかる。
「いやぁ、さすがの怪力やなぁ、これで武田家も安泰、安泰」
「楽勝って感じだったな」
聞こえてくる声に謎の既視感を感じる。
この声どこかで・・・
しかし結局何か分からずに意識はそのまま深い海に沈んで行ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます