第三章

第21話 ミクリンのおもちゃ

 来週から二学期の中間試験が始まる。


アンナは偉く気合が入っている。


この間の拉致騒ぎで自身のお母さんと揉めているようなのだ。


どうもアンナママはウチやニッチとつるんでいることが気に入らない様で、それにアンナが反発している。


アンナはウチやニッチとテスト勉強をすることで学年順位が上がればアンナママも黙ると言って、ミクリンとカッチンを講師代わりにしてテスト勉強を進め、それにウチとニッチがつき合う事に成ってしまった。


モチロン、ノートは龍崎から調達したものをミクリンとカッチンのノートで補強する。


更にはアンナから大量の参考書が絨毯爆撃のように投下され演習問題には事欠かない。


ムハハハハ、龍崎!!


お前のノートで補完されたミクリンが上位に食い込み、更にカッチンのクラストップは揺るがないであろう。


策士策に溺れるとはこの事だ!!


更にアンナとニッチの成績も上がればウチが見下され続ける未来が待っている。


嗚呼、でも勉強やりたくね~。


でもウチも少しは成績上げてイケメンゲットしたいし。


クラスで色物集団と見られてるウチらには、男子も気軽に声はかけてくれてもそれ以上の進展がないんだよね~。


頭は良いけどクールで冷めてるミクリンは男子に対しても上から目線の塩対応で受けが悪い。


臆病で人見知りのカッチンは男子との会話なんて論外。


見かけがギャルっぽいくせに生真面目で親孝行なニッチに声を掛けるのはチャラい奴ばかりで、ニッチは一切相手にしない。


おまけに僕っ娘の厨二娘のアンナが加わった。




「本当にウチらって男っ気が無いよねえ。考えてみると色物集団の中でまともなのってウチだけじゃん。

(アンタが一番色物だよ!byニッチ)」


「今気づいたわ、こんなみんなを導いて行けるのはウチしかいないじゃん。

(アンドリンのこの根拠の無い自信って何だろうね。byミクリン)」


「どこかから変な念が送られてきたようだけど無視して続けよう。

(これは頭の中に直接響いているの?師匠!僕にもみんなの思念が!byアンナ)」


「彼女達はこの試験勉強でさらに成績を上がるだろうねえ。

(一番上げなくちゃイケないのはリオちゃんなんだよー(泣)。byカッチン)」


「これで彼女達が中間テストを乗り切った暁にはウチはその努力を讃えてハンバーグパーティーを開いてあげよう。もちろん龍崎のおごりで」


「あんたねぇー。考えてる事が全部口から出ちゃってるんだよね。そもそもなんで私があんた達におごらなきゃいけないわけ?」


「クラスメートがこんなに頑張ってるのに委員長としての労いの心は無いの? ああ心の狭い人間はイヤだねー。そんなんじゃあ青山君にも…、痛い、痛い、痛い、アイアンクローは止めて!!」


「あんたは偉そうなことを言って何もしてないじゃない!」


「そんな事は無いよ。リオはビグレ○ト仮面になって僕らを…」


「安奈、その話は止めようか」


「??? 何の話か知らないけれど、一番成績を上げなきゃいけないのは安藤なんだからね」


「ウチはみんなを温かく見守ってだねえ…」


「そんな事で許されると思うな! あんたがそんなこと言うならクラスで二十番以内に入ってみろ!! そうしたら奢ってあげるわよ!」


「その話乗った!! アンドリンを20位に!!」


「ムリ―、絶対ムリ―!! ミクリン、アンタ面白がってるでしょう」


「大丈夫だよアンドリン。テストの前日に男子全員に下剤入りの差し入れを配ろう」


「黒い、黒いよー。ミクリンが黒いよー」


「御厨さん。そんなことさせないからね。カンニングも無しだから。安藤に真っ当な勉強をさせて成績上げさせろ!!」


「それは難しいなあ~」


「まあ、安藤を折檻でも拷問でもして順位を上げさせる事ね」


「仕方ないねえ。今日から演習問題毎日千問で出来なければ折檻と言う事で。いやねーわたしも辛いんだよ。苦しいのはアンドリンだけじゃないんだ。でもわたしも心を鬼にして頑張るよ」


「頑張らなくていい! ミクリンはいつも鬼じゃない。龍崎!! おぼえてろ~。テスト終わったらガ〇トのチーズインハンバーグのメンチカツプレート食わせろよーーー」


「ハイ、ハーイ。二十位以内に入れたれねー!」


そう言って龍崎は去って行った。


そして新しい玩具を手に入れた様に不気味にほほ笑むミクリンが残った。

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