第13話こんなものが無くったって離れない(前)
「はぁはぁ……待たせてごめん、柚那」
「良いよ、麻衣。毎度のことだし、慣れた。デートプランはかたまってる?」
ゼェゼェと呼吸を乱しながら駆けてきた恋人が謝ってきた。
初めの頃はむすぅっとした表情を彼女に見せていたが、罪悪感のないカラッとした澄んだ表情で返されるようになって開き直った。
待ち合わせ時刻を平然と破る遅刻魔の彼女に何を言っても、効果を得られない。
だから、彼女が遅刻したくらいで苛立たなくなった。
「うん。スーパーに寄ってから柚那ん
「えっとぅー、じゃあその中には……」
承諾を得ようと訊ねてはいるが、彼女の瞳には『逆らわないわよね、ね〜ぇ柚那〜ぁ』と圧をかける光が宿っていた。
彼女が腕に通すハンドバッグに視線を向けて、例の
「そうだよ、柚那。快楽に溺れようね、私と」
彼女が不敵な笑みに捉えられるほどの笑みを浮かべ発した
「は、はいぃ……」
スーパーで買い物を済ませ、自宅に帰宅した私……と麻衣。
冷蔵庫に突っ込む食品をあらかた入れ終え、食事の支度に取りかかる……とはいかず、彼女に寝室へと手を引かれ、連行される。
ここ、私ん家なんですけど……
「早速、なんですか?あのプレイ、を……」
「そう。焦らされるのは嫌。もうっ抑えらんないんだよ、私」
「いつもより乱暴にするのは——」
「分かってる、柚那っ!だから……身体を、委ねて……私に」
隙間があいた扉を開け放ち、どかどかと大股で寝室のベッドに歩み寄る彼女。
手首を掴み続ける手のもう片方の手で穿いているスカートのチャックを下ろしに掛かる彼女。
スカートのチャックが下され、スカートがラグの上に落ちる。
自然と膝を合わせ、内股になりショーツを自由のきく片腕で隠す私。
彼女みたいに大胆になれない私には、下着姿でも恥ずかしい。
好きな相手の前であろうとも……
「いつもの……柚那、お願い」
「わ、わかった、から……そろそろ離して、手首」
「ごめんっ……そう、だね」
私の手首を掴んでいた彼女の手が離れ、両腕が自由のきくようになる。
ベッドにのり、両膝をベッドについて僅かに上半身を彼女に向かって傾ける。
そして、両手を胸の高さに持っていき、犬の真似をする体勢で、「わ、ワン……」と犬の鳴き声を口にした私だった。
ほんと慣れない、このプレイ……
救いは、これが二人のときにだけねだられる要求だということだ。
大勢の前でやれと言われたら、もう……
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