第5話思いもよらないお年玉

暖房を効かせたリビングにテレビで流れる年越し番組の司会者と芸人によるトークの声と同棲相手の笑い声が聞こえる。

バラエティー番組には目もくれず、スマホの画面に夢中な私はソファで毛布にくるまって一人でにやついていた。

押しのアーティストや声優のTwitterのツイートを眺めては画面をスクロールし、眺めては画面をスクロールして──を繰り返す私を、彼女は呆れたとばかりに冷ややかな目付きで見つめてくる。

「何なの、コウ?興味がないからって、冷ややかな目付きされると傷つくよぅ~」

「べっつぅにぃ~っ。今さら傷付きはしないでしょ、これくらいでさぁ~」

気だるげながら、楽しさも含ませたようないたずらに満足したような笑みを浮かべ、返してきた。

「傷つくってばぁっ!もうぅーっ......コウっていっつもいじめてくるよね。」

いじけて、唇を尖らしながら不機嫌さを含ませた声音で対抗する私。

「いじめてるつもりなんてないよ、ただ......からかってるだけだって。いじめなんて大袈裟に言うなって......」

不服そうな表情を浮かべ、テレビに顔を戻してテーブルに頬杖をつき、むうぅぅーっ、と彼女らしからぬ可愛い声で唸り始めた。

彼女の愛らしい唸り声に、思わず笑いがこみあげて吹き出してしまう私だった。

「......っ、ぷっ!うぷぅっ、ははっ、あははぁ~っ!なっなにぃっその可愛いっ、こっこ声......はぁはぁ~っ」

「わっ、笑うなってぇ~リン~っ!最悪ぅだぁ~リンのばかぁ~っ......ううぅぅっ」

笑われ、恥ずかしさと照れ臭さが混じりあった高く可愛い声で張り上げた直後にしゅんと項垂れ、両手で顔を覆い隠し、泣き出した彼女。

「ごめんっごめんってぇ!泣くことないじゃん、コウっ!可愛くて、その......面白さのあまり......いきなり今まで聞いたことのない可愛い声出すから。ごめんって、ねぇコウってば!泣き止んでよ、ねぇって!」

宥めるが、彼女は身体を震わしたまま泣き止まない。


***


高校生の頃からの付き合いの私達で、初めて可愛い声をあげるなんて笑わずにいられないじゃん、普通。

私に対して素っ気ない態度ばかりとって、好意を向けられるとすぐに目を背けようとするんだもん。

それでいて、仲の良い異性には好意を向けて交際しようとするし──短い期間ではあったけど、異性と交際してたよね、コウ。


でも──コウは、赤峯洸は──私にとって失くしたくないかけがえのない存在ひとだから、どんなコウでも愛せる。


──コウが大好き......愛してるよ。


***


新年を迎えるカウントダウンがテレビから流れ始め、テレビの画面に1が消え、HAPPYNEWYEARがでかでかと映ると同時に私の唇に柔らかい感触を感じた。

「あけおめ。今年もよろしくね、リンっ!」

「......っと、あけおめ。よろしくお願いします......コウ」


社会人になってお年玉を貰った感覚だった。

ず、ずるいよ......コウぅっ。

フイウチのキスはないって......

今年は素敵な一年になりそうだ、と三代凛は思った。






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