第10話……火属性魔法

 プチファイアーボール。


 魔法学園をサボる前に習得した唯一でもないけど、俺の中では一、二を争う魔法スキルのひとつだ。(尚、レベルイーツは最強チートすぎるので除外とする!)


 その昔『炎の魔法使い』に憧れた。


 このパラディス帝国には、伝説の英雄にして最強の炎の魔法使いがいた。子供なら誰もが知っていて、ヘンなポーズを真似をする程にその存在は大きかった。


 今や魔法学園の学長だとか聞いたが、会った事はない。なんせ、サボりすぎたから――!



 Skill:[プチファイアーボール]

 効果:

  Lv.1:火属性魔法攻撃力……1

  Lv.2:火属性魔法攻撃力……2

  Lv.3:火属性魔法攻撃力……3

  Lv.4:火属性魔法攻撃力……4

  Lv.5:火属性魔法攻撃力……5



 とにかくこのスキルはプチ・・すぎて火力が上がらない! スキルレベルが最大値になっても、たったの『5』のダメージしかないのだ。

 つまり、俺の魔法攻撃力MATKが『10』あるとすれば、敵に『15』のダメージってワケだ。通常ならショボすぎる。しかも、これはあくまでスライムの場合だ。もっと強い敵……例えばゴーレムとかなら物理・魔法防御力が結構ある。よって『0』ダメージ判定の場合もある。


 それ程までに『攻撃力』は重視される要素。レベルを上げねば強くはなれない。


 今までの俺のレベルとスキルではショボすぎるが――現在『Lv.334』もある。レベルが上がれば、その分、ステータスが上昇する。『物理攻撃力ATK』、『魔法攻撃力MATK』、『防御力DEF』、『魔法防御力MDEF』、『クリティカルCRI』、『ちからSTR』、『すばやさAGI』、『たいきゅうりょくVIT』、『ちりょくINT』、『こううんLUK』などなど。




 これら総合的に見て――!!




 ヤツに対し、気持ち的に『3000』のダメージを与えただろう。




「ぶあかなあああああああああああ、うぎゃああああああああああああああああああ…………!!!」(※二回目)




 燃え盛る紅蓮の焔。

 まるで俺の魂の炎を具現化しているようだった。……まあ、プチファイアーボールなんですけどね。まさか最弱・・スキルが一点して、最強・・スキルになろうとは、あの魔王の遠い親戚ですら想定外だったろうな。



 だが、レベルさえ高ければ弱い装備だろうがスキルでも途端に強くなる。それがこの世界の理であり、変えようのない事実であった。



「……エド、魔法が使えたのか」

「プチファイアーボールだけど何か」


「驚いたよ。あの英雄、炎の魔法使い・イングリッドをリスペクトしたような力強い魂を感じた」



 感動に包まれているベリルさんは、大きな瞳を星のようにキラキラ輝かせていた。そう顔を近づけられると――ちょっとドキドキ……いや、かなりバクバクした。



 ともかく、これで俺の勝利かな。



 アルマンディンはどこかへ落下したらしい。姿が見えないし、戻って来る気配もなかった。ならば、これは俺の勝利判定で良いだろう。ていうか、俺は何の為に戦っていたんだろうか……ヤツに勝って何を得た?



「……エド」



 銀髪爆乳騎士団長・ベリルの世界最強の笑顔を得た。なんだこのエンジェルスマイル……これ以上のリザルトはあるまいて。俺は感動に打ち震えながら幸福を噛み締めた。


 ありがとう。神様、騎士団長様。


 眼福である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る