エピローグ
スカーレットとアズマが、街から出たのと同じ頃。
それと入れ替わるように、神沢ロックホールにある集団が訪れた。
東京からやってきた、とある大学の研究チームである。
彼等は、魔力関連………モンスターやダンジョンに関する研究を行っていた。
テイカーは勿論、ダンジョンやモンスターに対しても忌諱感情のある日本において、彼等の研究は一種のタブーのような扱いを受けていた。
その為、研究費も中々降りず、日陰者のような日々を過ごしていた。
が、神沢ロックホールに現れた、本来の難易度的に存在しないハズの、スケルトンの大型種。
おまけに、同族意外のモンスターと、生体磁石による合体を行うというイレギュラーな個体。
その事件が、長らく日陰者だった彼等に、ようやくスポットライトを当てた。
………と言うよりは、現在の日本でモンスターの研究をやっているのが彼等しか居ない為、彼等を動かすしか無かったのだが。
「ほうほう、こいつが………」
「こんなデカイの初めて見たぜ………」
スケルトンを撃破したというテイカーが、魔力に換算せずに死体を残してくれたお陰で、サンプルは手に入った。
出来れば生け捕りにしたかったが、危険性を考えると、これも仕方ないだろう。
「おーい!こっちに来てくれ!」
スケルトンの死体を調査していた研究員が、奥の方に行った研究員から呼ばれる。
一体、何を見つけたと言うのだろうか。
………………
神沢ロックホールは、五階層で形成されたダンジョン。
当然ながら、下の階に行く程強力なモンスターがいて、大変危険。
その為研究チームは、あらかじめモンスター避けの魔法をかけており、
テイカー………は滅多に居ないので、代わりに民間の警備会社に護衛を任せ、奥へと向かう。
「なんだ………この穴は」
そして、ここ第五階層。
本来はこの先は行き止まりのハズなのだが、彼等の眼前にはさらに奥へと続く巨大な穴が現れたではないか。
無論、地図には記されていない。
「多分、少し前にあった地震で崩れたとか………」
「いや、だったら地質調査の時点で見つかっているハズだ、これは………」
警戒しつつ、研究チームは穴に入ってゆく。
未知の領域故に、護衛の警備も緊張している。
………パキリ
すると、研究チームの一人が、何かを踏みつけた。
何だろうと思い、それを拾いあげる。
「なんだ?これ………」
何かの粘膜のような物に包まれた、白い板状の物体。
手触りから、それが一体何なのかが解った。
これは。
「………タマゴ?」
タマゴの欠片だ。
爬虫類や鳥類の赤子が生まれてくるようなそれと、同じタイプだ。
ダンジョンにあるとすると、十中八九モンスターのタマゴだろう。
では、何のだろう?
サラマンダーやリザードマン等、タマゴを産むタイプのモンスターを想像する研究員。
「う、うわあっ?!」
その時、別の研究員が叫びを挙げる。
まるで、何か恐ろしい物を見たかのように。
今度は何だと、他の研究員や警備の視線が、その先に集中する。
そこには、驚くべき物が存在していた。
「こ………これは………?!」
ライトに照らされ明らかになったのは、頭蓋骨だ。
少なくとも、神沢ロックホールに生息するモンスターの物でもなければ、人間の物でも断じてない。
巨大な、巨大な、頭蓋骨だけでも民家一つ分はある、巨大な頭蓋骨だ。
シルエットは爬虫類………特に恐竜に酷似していたが、その形状は現存するどの生物………モンスターを含めても、初めて見るような形をしている。
「ここに………「なに」が居たんだ………?!」
地方都市の片隅。
ほとんど忘れ去られていたダンジョンに現れた、大いなる謎。
それは何も答えず、ただその巨大な躯を横たわらせるだけだった。
我等、はみだしテイカーズ!
第一部 完
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