第2話
しばらくして合唱も終わり、2人きりになった。
トムは言った。
「これからどうするんだい?自分の家に帰るかい?」
「自分家には…帰りたくない。僕はこれからどうすればいいのかな?」
「俺んちに来るかい?」
「え?いいの?」
それはマイケルにとって思ってもない言葉だった。
「ああ、いいぜ!俺の汚い家でよければね。」
「ありがとう。お邪魔させてもらうよ。」
「それじゃあ行くか!」
南に歩いて少しの所にトムの家はあった。
「くさいな。」
マイケルの最初の言葉はこれだった。
トムは言った。
「うちは養豚場なんだ。それぐらい我慢してくれ。」
家の中に入った。
家の中に入ると慣れのせいかそこまで匂いは気にならなくなってた。
マイケルは言った。
「トムさんの家はピアノはないのかい?」
「無いね。うちは裕福じゃないのさ。」
「そうか。寂しいな。」
「なに?音がほしいのかい?」
「うん。」
「なら俺が楽器になってやるよ。」
「え?良く解らない。何でトムさんが…。」
「面白そうだからだよ(笑)。」
「え?なにが?」
「俺が主センリツを歌って、君が副センリツ(ハモリ)を付ける。すごく面白そうじゃあないか。」
「そうかな?(笑)頑張るよ。」
それから2人の共同作業が始まった。
トムが元から知っている歌を歌ってマイケルが和音を付ける。
そしてそれをトムが木の板に楽譜として墨で書き込む。
そんな事をしながら2人の生活が始まったのだった。
そんな曲作り最中のとある夜の会話である。
マイケルが言った。
「何で僕を外に連れ出したの?」
「なにげなーく町の外れを散歩してたら、君の弱弱しい不思議なメロディーの声が聞こえてきてね。気になって何回か行ったんだよ。そうしたらまた違ったメロディーが聞こえてきて。君が家の中で閉じ込められている噂は聞いていたし。こりゃー『連れ出さないと!』と思ってね(笑)。」
「そうなんだ。」
そう言えばと、続けてマイケルが言った。
「トムさんは僕の中では緑色だね。」
「え?何の話?」
「昔監禁室でいろいろな色の話したでしょ?君は、人に一番近い、生きるための元気をくれるもの、それを緑といったよね。僕にとって君がそうだから。緑なんだよ。」
「そうか(笑)。 マイケルは目が見えないんだったね。忘れていたよ。」
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