光りの音
ぱんちょ
第1話
~すべては光から始まりだった~
<プロローグ>
その少年は生まれた当時から[光]が見えなかった…。
- 時は昔、西暦1752年、ヨーロッパのとある町にその少年は生れ落ちた。
生まれた時、そこにいた誰もがその子の泣き声を聞かなかったという。
それはその少年は[光]という刺激がなく泣かなかったのだ。-
生れ落ちたその時、少年は音を聞いた。
不思議な音。
実はそこの家系は生まれついての音楽家の家系で、少年が生まれたその時、その生まれた部屋の隣ではピアノを弾いていた人がいた。
少年は無心で思った。
「なんだろう。これは。」
<序章>
少年の家は、その町の少し外れにあった
親は音楽で生計を立てており、それは主にピアノの勉強の授業料だった。
親の生活が裕福なわりには少年の生活は寂しかった。
食事は一日に二回、パンと牛乳のみ。
何か気に入らないことがあればすぐに監禁室に入れられた。
その少年は5人兄妹の末っ子だった。
その少年以外の4人には音楽の勉強を施し、その少年には一度もしなかった。
なぜならばそれは『目が見えないから音楽は無理だろう』とあきらめていたからだ。
少年はただひたすらに周りから聞こえてくる[音]だけを聞いて育った。
少年は親の言いつけをひたすらに守りながら成長した。
11歳の時、初めて親の言いつけを破り、いつも聞いてる音だけを頼りに入ることが許されてないピアノのある部屋に忍び込んだ。
そして初めて『ピアノ』の音を自から奏で始めたのである。
その弾いた時間は3分間ぐらい。
すぐに父親に見つかり、その父親は「不協和音だ!」と、その少年を監禁室に入れたのだった。
そしてその『ピアノ』に初めて触った夜。
少年は監禁室であの音色を思い出していた。
初めて自分で奏でる音。
親は不協和音と言ったが、少年は『自ら奏でる』ことの楽しさを知ったのだった。
それから一週間ぐらい経った。
相変わらず監禁室から出してもらえてなかった。
監禁室にいる間、毎日『ピアノ』の事だけを考えていた。
食事を運んでくるとき、その家の使用人に「親と話をさせてほしい。」と頼んだ。
その3日後、ようやく親と会うことが許された。
少年は親に「あれ。あの音の出るもの。あれが僕もほしい。」
と、初めて物を頼んだのだった。
だが親は許してくれなかった。
親は言った。
「何で目の見えない子にピアノなんて高いものを買い与えなければならないんだ?」
と。
その事があってから、また監禁室での生活が始まるのだった。
でも、決して『ピアノ』のことは忘れなかった。
なるべく小さな音で、口で一生懸命メロディーを思い出しながら過ごすのだった。
≪第一章≫
それから2日経っただろうか。
相変わらず監禁室で歌っていた。
すると突然異音がした。
<ガチャン!>
それは金属の音だった。
「なんだろう?」と、少年は思った。
実際は鉄格子にフックがかかった音だった。
<トタトタ>(壁を登る足音)
その後、突然誰かの声がした。
「おいーっす。」
その出会いは突然だった。
その人は言った。
「君の音をもっと聞かせてくれないか?」と。
僕は言った。
「そんなこと出来ないよ。」
「どうしてさ。」
「だって、監禁室にいるんだよ。」
「いつも歌ってたジャン。」
「それは親にばれないようにこっそり…。」
「ならその音でいいよ。俺に聴かせてくれ。」
「わかった。なるべく静かに歌うね。」
それから少年と不思議な男の人と鉄格子越しの交流が始まった。
少年はその人から外の話をいろいろと聞いた。
社会情勢、その人が持っている音楽の話、目に見える[色]の話。
少年は何もかも忘れて夢中で聞いていた。
時にその人が少年に歌を聴かせることもあった。
親にばれないように小声でひっそりと。
僕はそれに付随する音を出して遊んでいた。
それから4日経った。
あいかわらず交流は続いていた。
その人は言った。
「君は面白いセンリツを持っている。」
「え?僕が?」
男は言った。
「ここから出たくないかい?」
「出たいけど、無理だよ。親もいるし。」
「俺は君をここから出すことに決めた!」
「ええ?!」
「準備はしてある。」
その男は道具を使い、鉄格子を壊して本当に少年を外に連れ出したのだった。
外は部屋の中と違い木々の強い香りがした。
外に出るのは生まれて初めてだった。
少年が言った。
「このすがすがしい香りはなんだい?」
「うん?何のことを言っているんだい?」
「僕は外へ出るのは初めてなんだ。この暖かい日差しはわかるけどそれと反対のすがすがしい影の香りが僕には感じられるんだ。」
「あー。それは多分、植物の香りだよ。」
「植物?」
「そう。俺たちが呼ぶ色の中では『緑色』って呼ばれているんだよ。」
「へー。」
少年はしばらく木漏れ日の中にいた。
そして言った。
「これからどうするんですか?」
「ああ、実は連れて行きたい場所があるんだ。」
「え?それはどこですか?」
「それは行ってのお楽しみさ。」
そう言えばと、少年は言った。
「ところであなたの名前は?」
「トムだよ。君は…マイケルでいいんだよね?」
「そうだよ。知っていたの?」
「ああ。ちょっと調べさせてもらった。じゃあ行こうかい。」
それから2人は無言で、トムにマイケルは手を引かれながらしばらく歩いた。
どれくらい歩いただろうか。
初めて…いや、聞いたことがあるような『ピアノ』と違った音色の音が聞こえてきた。
「この音はなに?」
「パイプオルガンの音さ。君は教会も知らないのかい?」
「うん。初めて聞いた。でもこの音、聞いたことがあるようなないような…。」
教会からはパイプオルガンの音色と供に同じ音程の2つの合唱の声が聞こえてきた。
その当時のパイプオルガンは和音が出せず、一つの音しか出せなかった。
その音と同じ音程ので、男女の2つの声が聞こえてきたのである。
僕は不思議に思ってトムに言った。
「なんで3つの音が同じ音なの?」
「うん?それはどういう意味だい?」
「パイプオルガンといわれる音と声の音程が一緒なのが不思議なんだ。」
「君は変わったことを言うね。」
トムが続けていった。
「パイプオルガンはお手本の音で声はそれに習って歌ってるんだよ。」
「へー。そうなんだ。」
マイケルは感心しきりだった。
その時である。
マイケルはその3つの原音に合わせる形で、適当に上のメロディーを歌い始めたのである。
「♪~♪~♪」
その『ハモリ』は規則性がなかった。
音楽が終わったとき、トムは感動しながら言った。
「すごい!なんだい?そのメロディーは?」
「わからない。ただ思ったメロディーを口にしてみただけだよ。」
その時、トムは訳もわからず心が震えた。
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