放尿するS

@illthy

第1話

  放尿するS



 東の国のとあるネオン街をちょうど抜け出て荒野にやってまいりました。街の中では七色のエネルギー波が私の上をじりじり照らしましたが少々この禿頭が綾なしたかなの程で寂寥が染みてくることにさしたる変わりもありません。

「ついてるなあ」

 さて偶然見つけたバオバブの木の下でカンガルーよろしく抱きかかえられてついぞと願い歩み寄ったのですがしかし先からどうも変な男が居るようです。時刻はとっくに丑三つで人生一度きりの豪遊からそう離れない時間でした。はてこんな真夜中にあんなところにある奴は碌な者じゃあるまい。ちょっと脅かしてやろうか。

「ちっとも止まらないなあ」

その動きには迷いがありませんでした。妙な往復運動を続けながらしかも段々とこちらに向かっているようなのです。私は恐怖しました。

「ついてないなあ」

しかしもう沙汰無しとして受け入れることにしました。

 のちにその一部始終を目撃した自称大学教授の友人を名乗る初老男性がこんな話をしました。

「いやはや年明けのことだったんだが、公園のベンチで座っていると、一人のおっさんが杉の傍にやって来て放尿し出してね、しかもそのままキツツキよろしくその一物を突き立て始めた。そして間もなく入り口からこれまた下半身裸のおっさんが現れて、へったくそなモデル歩きで杉へと近づいた。二人は最初対峙して長らく見つめ合ったが、最後は抱き合って感涙に震え出したんだよ。とても気持ち悪かった」

それを聞いて、彼の唯一の友人はこう答えたそうです。

「そりゃ一物出してりゃ寒くて温め合いたくもなるだろう」

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