第16話 誰かを殺す言葉



 棘刺して 心臓 

  君は

 血噴出して 真っ赤に染まっていく

  僕は

 簡単なそんな事さえわからなかった

  だって

 一度出した言葉は戻せない 言葉だって人を殺せる事に

 


「役立たず」「能無し」「お荷物」「何にもできないんだね」「生まなきゃよかった」「人の気持ちが分からないんだね」「怠け者」「反省してない」「死んじゃえば良いんだ」


 世界に溢れる豊富な言葉は

  とてもとても僕らを豊かにしてくれたけど

 だけど 気づいてる? その分だけ

  とてもとても僕達を傷つけやすくなったって事


 街角の広告に 画面の向こうのテロップに 携帯ゲーム機 パソコン 携帯

  この世界には 踊る文字で溢れてる


 一秒だって存在感ゼロで留まっていられない彼らは

  ひっきりなしに次から次へと 吐き出されて

 誰も彼もの口から飛び出して 指から紡がれていくんだ


 僕らは

  いつだって人を殺せる場所に立っている

 その手に

  持った言葉のナイフ 自覚して

 ただ振り払った

  それだけで 近くにいる誰かを傷つけてしまう事に

 みんな みんな

  気づけてない 気がつけてないんだ


 心ない言葉操って 何かを語るのも 騙るのもいいけど

  その刃先 誰かの心臓傷つけてない?


「血しぶき舞ってからじゃ もう遅いんだよ」


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