第二章
二人目 色欲の悪魔は欲を満たして最後は喰らう その一
一人目の復讐を成し遂げた数日後、グレモリーを引き連れて僕は姉さんの墓参りへと。
花を添え、僕は語る。
「姉さん。あのね、姉さんを苦しめた一人の鈴宮はもういないよ。僕が喚んだグレモリーが、姉さんが受けたもの以上の苦痛と恐怖と絶望を与えてやったから。ああ、グレモリーは今、僕のそばにいるメイド服を着た悪魔だよ。身の回りの世話をしてくれて、すごく助かってるんだ」
グレモリーが僕たちの周りに魔法陣を展開してくれたことで、僕の独り言は誰にも聞かれる心配がない。その中で僕は、姉さんに今回の復讐と次の復讐について報告を済ませる。
言いたいことを言って、グレモリーと共に帰ろうとしたそこへある人物が僕に接触してくる。
「やあ、大磨くん」
「…………」
この男は。
姉さんを拷問した男の父親で無能な刑事……!
何故、この男がここにいる? 姉さんの墓に……!
僕の中で、怒りが湧いて出てくる。無能の奴に、大切な姉さんの墓の近くにいられるのは虫酸が走る。
「何か用ですか? こんな場所で、暇なんですか?」
「これも立派な仕事だよ」
はあ? 立派な仕事? どこが?
へらへら笑っている顔を見る度、癇に障るんだよ! 何が面白いのか、この場所でも笑って話しかけてくるな!
心内で毒を吐く。そんなことを知らない刑事は、僕のそばで控えるメイド服姿のグレモリーを見て指を顎に当てながら訊いてくる。
「ふむ。君には確か、祖父が亡くなり母親とは離婚して父親しかいないのではなかったかな? いつの間にメイドなんて雇ったのかな? それにしても綺麗な人だね」
何が言いたい? 僕が誰をそばに置き、雇うかどうかなんて関係ないだろ。
まさか、まだ僕のことを嗅ぎ回っているのか? あの事故の時もしつこいくらいに、あれやこれやと訊いてきたし。
「彼女は、おじいちゃんが生前に今後、何かと不便にならないようにと雇ってくれた家政婦ですが何か?」
「おっと、そうだったのか。これは失礼したよ」
刑事の男、確か名前は橋本だったか。その橋本とか言う刑事は、グレモリーを興味深そうに観察しつつある質問を僕にぶつける。
「そう言えば、君の事故の時に話したことを覚えているかな? 君のお姉さんの死について。自殺と虐めの因果関係はないと言ったこと」
「…………それが何か?」
「もし、お姉さんの自殺が虐めで起きたことが原因だとしたら。君はどうする?」
「…………」
橋本刑事に気づかれないよ杖を握る手に力が入る。
何を今更。鼻で笑ってしまいそうになる。あの時は否定しておいて、今になってそんなことを僕に訊くのか。
「もし、そうならそれを黙って見過ごした警察の無能さが分かる件になりますね」
動じれば怪しまれるか。
その質問に淡々と答える。ついでに思っていたことを包むことなく言い放つ。
「それもそうだね」
ははっ、と笑う橋本刑事。しかし、その向けられる目が僕を疑っていることに気づく。
あの女、鈴宮が失踪したことが分かったのか。そういうことに関しての行動は早いな。
「あっ、そうそう。彼女に見覚えはあるかい? 数日前から家に帰ってないらしく、家族が家出調査を出してね。家出をする理由とかないらしく、警察は捜索願いとして受理しているんだ。彼女も、君のお姉さんと同じ高校に通いクラスが一緒だったから、お姉さんから紹介とかされて顔見知りじゃないかなと。君も何か家出の原因など知っていないかと思ってね」
長々と説明され一枚の写真を見せられる。
やはり僕の予想通り鈴宮の写真だ。
家出の原因? 姉さんの紹介で僕が何か知っているかって? 馬鹿らしい。そんなこと知るわけないだろ。僕が知っているのは姉さんを苦しめ、何をしてきたか、そしてその最期それだけだ。
「いえ、知りません。姉さんからも紹介なんてされてませんし」
「……そうか。悪いね、墓参りの時にこんなことを訊いて。私はこれで」
そう言って立ち去る。
ああ、本当に。姉さんの墓の前で、姉さんを苦しめた奴のことなんか訊いてくるなよ。それも今更になって虐めが原因で自殺、なんてことを言い出してくるなんて。
無能な貴様らのせいで全てが無茶苦茶になったんだよ……!
僕は捕まるつもりはないし、邪魔なんてさせない。
これは僕だけの復讐だ。誰にも渡さない。
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