一人目 ようやく始められる復讐 その五
最初の復讐を終え、リビングでお茶をする。
鈴宮から回収した靄は魂だと説明を受けた。
「魂って靄なのか?」
「人間の目にはそう映るのだと思います。私たち悪魔から見れば、丸い球体で色がついているのですよ」
「色?」
「はい。その色の度合いや鮮やかさでその人間の味が変わるのです」
魂に味なんてものがあるのか。
悪魔にしか分からないことなのだろう。僕には、靄にしか見えないし味なんて想像もつかないが。
「あの部屋でやったことは誰にも知られることはないのか?」
「それも問題ありません。あの部屋、正確には異空間です。私の魔力で、異空間を創り部屋にしましたので誰にも知られる心配はありません。あそこへ行けるのは私たち悪魔と許可した人間だけです。出るにも、私の許可なしでは不可能。悪魔は別ですが」
「そうか」
あの空間で何をしても証拠が残らず、死体の処理も簡単で誰かにバレることもない。便利だな悪魔の能力は。
「鈴宮はどうなる? 魂を喰われたが」
「彼女は二度と生を受けることはありません」
「それはどういう意味だ?」
魂がないからか? でも、それは神が決めたりするものなんじゃ……? 悪魔がいるなら天使も神だっていると信じられそうだが。
「魂を喰われた人間は、輪廻転生の理から外れ地獄にも天国にも行くことはできません。そして、私たちの力の糧となり終えるのです」
「悪魔は、人間の魂が糧となるのか」
「はい。欲深く、罪深く、負の感情や絶望に染まれば染まるほどその魂は悪魔にとって極上となりますから」
嬉しそうに語るグレモリー。じゃあ、鈴宮の魂はグレモリーにとって美味しかったというわけか。まあ、グレモリーが満足したのならいい。
悪魔を喚び、契約を交わす時に復讐相手の魂も捧げると公言したからな。
僕一人の贄で三人の悪魔を召喚することも、契約することもできないと思った。ならどうせ殺すと決めた相手の魂も捧げればいい。
悪魔が関われば、人間の常識で裁けるはずがなく且つ誰にも邪魔されず、全ての復讐を完遂することも不可能ではない。
まずは一人目だ。これから、奴ら全員を悪魔に捧げてやる。
そう考える中ふと、思うことがあった。
グレモリーの行為を見ても何とも思わなかった。むしろ、殺せたことに喜び笑う自分が心の内にいる。
グレモリーが淹れてくれた紅茶に映る自分の笑みが、昔のように姉さんがいて両親がいて、幸せで楽しくて無邪気に笑っていた頃とは何一つ違う。
自分でも不気味と感じ、壊れ、狂った者、口の端を少し吊り上げ何もこもらない虚ろな瞳で笑みを浮かべている。
思考回路も、次はどうな苦痛と恐怖と絶望を与えてやろうか、悪魔が代行する復讐はどんなものなのだろうと楽しんでいる。
「ははっ……」
乾いた笑みがこぼれた。
思考も心も狂ったんだな僕は――。
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