第一章

一人目 ようやく始められる復讐 その一

 彼女ら三人を召喚して一週間。共に暮すようになって、分かったことがある。紺色の髪、黒色のタンクトップに下は黒のジャージとラフな格好のバアルはどうやら、家庭菜園にハマったようで庭にはキュウリやミニトマト、ナス、苺などなど育てるのが好きなようだ。

 毎朝、水をやりながら鼻歌を歌いご機嫌。


 腰まで届く長い黒髪のグレモリーは以前から世話焼きのようで、今ではどこからか用意したメイド服に身を包み僕の世話をあれやこれやとする。

 自分のことは自分でする、と言ってもやらせて下さいと引かない。


 最後に、金髪で毛先が少しウェーブがかったアスモデウスは言わずと知れた色欲の悪魔。毎晩、外出しては朝帰りを繰り返す。聞かずとも、外で男をたぶらかしやることをやっているのだろう。格好も黒ビキニから胸元を大胆に開けた白のワンピース。


 朝食も、僕の好みをわざわざ聞いて用意するグレモリー。


「……誰から始めるか」


 朝食のメニューは焼鮭、だし巻き卵、味噌汁と白米と至ってどこの家庭にも出てくるご飯。

 美味しく頂き、食後のお茶を飲みつつ考える。誰から復讐をするか。


「主。私から意見、いいでしょうか?」

「ん? ああ、どうした? グレモリー」


 グレモリーは契約を交わしても、丁寧な口調で僕のことを主と呼び見た目も中身もメイドのように振る舞う。


「まずは、日記にも最初に名前が上がっていた者にしてはいかがですか?」

「最初……。鈴宮奈緒美すずみやなおみか」

「はい」


 グレモリーが持つ能力。過去、現在、未来、そして隠された財宝について知り、それを語ると言う。


 僕の過去もむろん、知っており杖をつく理由も復讐したい目的も全て。僕から言わなくとも、グレモリーからバアルとアスモデウスにも話がいっている。

 姉さんを死に追いやった彼ら五人に、姉さんが味わった苦痛や絶望以上のものを与え殺すという目的。


 実際に、日記を目にしてはいないとしても僕の過去を知っているグレモリーなら、その内容も把握しているはず。


「そうだな。グレモリー、鈴宮奈緒美の情報を集めてくれ」

「承知致しました」


 その日の夜、グレモリーの仕事は早かった。


 鈴宮奈緒美、現在は大学二年生。依存性が強く、物事を一人で決められない質。山内真理子が決めた男と付き合い、その彼氏に何かと貢いでいるようだ。

 日記から分かったことは、この鈴宮とかいう女は山内の取り巻き。高校時代でも、彼女の言うことなら何でも聞き、それは今でも変わらないということ。


 明日、確かめに行くか。


 そう決め、翌日。身の回りの世話をするグレモリーと共に鈴宮奈緒美が通う大学へと向かう。グレモリーには、僕の護衛も兼ねて行動を共にする。

 誰にも怪しまれないよう、グレモリーの魔力を纏い大学の正門の近くで彼女が出てくるのを待つ。すると、男と共に出てくるのが確認できた。


「主、どうやら出てきたようです」

「そのようだな。尾行開始といくか」

「はい」


 二人が向かったのはスーパー。買いデートらしく、お酒やお菓子など惣菜、煙草などカゴに入れ会計は鈴宮持ち。彼氏の男は荷物持ちのよう。

 仲良く、恋人繋ぎで楽しそうに彼氏との会話を楽しむ鈴宮。時より、男の腕に擦り寄り甘える彼女を見て心がざわつく。

 その後、彼氏宅のマンションに入っていくのを見届ける。


「…………」


 ……あの楽しそうな顔を見ると無性に腹立たしくなるっ。笑顔のあの女を今すぐにでも、痛み、苦しみ、絶望のどん底に落としてやりたい!


 心の底から憎悪、恨み、憎しみが溢れ出す。


「主。今は、抑えてください。必ずその時がきます。今はまだその時ではありません」

「……ふぅー、はぁー。そうだな」


 グレモリーになだめられ感情を抑える。

 もう少し、動向を伺ってからどう復讐をするか考えよう。まだ知らない情報があるかもしれない。そう思いグレモリーに、


「あの女をしばらく監視して情報を集めろグレモリー」

「仰せのままに」


 そう命令し、数日使ってグレモリーが鈴宮の周囲を調べ尽くす。

 新たに得た情報は、陰で大学教授と援助交際をしその際に受け取ったお金を山内に渡していると。彼氏の男も、山内と肉体関係がある二股状態。

 他にも、パパ活を繰り返しそれなりのお金が手元に入る生活をしているようだった。


 真意は分からないが、自身で決められない質なら援助交際もパパ活も、山内が指示した可能性があるな。ここまで分かればいい、次の行動に移そう

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